2007年02月11日

連休その1 「あなたになら言える秘密のこと」

 連休初日の昨日、OSミント神戸で公開した『あなたになら言える秘密のこと』(イサベル・コイシェ監督)を観に行きました。
同監督が撮り(今作主演の)サラ・ポーリーが前作でも主演した『死ぬまでにしたい10のこと』も、ヒロインに共感できる素晴らしい作品だったので、今作の公開を楽しみに待っていました。
それにティム・ロビンスって好きな俳優さんの一人だし。(『ショーシャンクの空に』は何度観ても名作ですねぇ・・・。)

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story
 心に深い傷を負い、誰にも言えない秘密を抱えて生きる孤独な女性の再生のドラマ。

心に秘密を抱えて工場で働くハンナ(サラ・ポーリー)は、ある日、働き過ぎを理由に工場長から強引に1か月の休暇を言い渡される。
小旅行に出かけた彼女は看護師を探していた男(エディー・マーサン)に声をかけ、2週間の油田掘削所での仕事を引き受ける。
彼女の仕事は事故で火傷を負い、重傷の男ジョゼフ(ティム・ロビンス)の世話をすることだった。 (シネマトゥデイより)
 

 今年は私にとって「映画の当たり年」になるかも。
今年に入ってずっといい映画に出会っています。この映画も深かったです。

何事にも(生きることの原点である“食べる”ことにさえ)ストイックで、ただただ寡黙に働き続けるハンナ。・・・いえ、“ストイック”という言葉は何処かポジティブな志向が伺えて適切な表現じゃないですね・・・ハンナの場合はまるで“全てを拒否”するかのような生き方をそこに感じました。

「心に抱えた誰にも言えない秘密」って一体なんだろう・・・ってこの映画を待つ間ずっと思っていました。
それがハンナの口から語られた時に彼女の生き方の意味が分かるのですが、その内容は衝撃的です。今この日本で(曲がりなりにも)平和に暮らす我々にとってそれは余りに衝撃的過ぎて、その辛苦を共有することはできません
どんなに苦しく、辛く、悲しいことであったろうと、懸命にその“痛み”を探ろうと努力する思いが、一体どれほど彼女の痛みに近づけるか、それすらも分からない。
分からないけれど「思いは届いて欲しい」、そんな別の意味の“痛み”が私の心に残りました。

過去の出来事が彼女に与えた精神のダメージ・・・映画のオープニングからの「語り手」と、新しい石鹸を持ち歩き執拗に手を洗う行為、それらの意味も、全て後半で明らかになります。
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これを言うと「ネタバレ」になってしまいますが(スミマセン!)、この映画の背景には強く「反戦」の意志を感じます。
戦争と言う状況がどれほど人間を狂気に走らせてしまうか・・・実際に戦場に立つ兵士のみならず、女子ども問わず戦地の全ての人間の人生をどれほど変えさせてしまうか・・・そういう犠牲の上に成り立つ平和を、結果的に人々は歴史の中でどれほど忘れ去ってしまうか・・・。

この映画で描かれているのはボスニア・ヘルツェゴビナ紛争と思われるけれど、それに限ったことではないのですね。


ハンナはしかし、ティム・ロビンス演じるジョゼフを看病し、身体のみならずJの心の傷にも触れりことによって徐々に彼に心を開いていきます。
本当はずっとずっと「誰かに打ち明けたい」という思いがあったはず。
本当の本当に全てを“拒否”していたわけじゃないから・・・このことは、ハンナがJの食べ残した肉料理やニョッキの煮込みやチーズアイスやらを、突然スイッチが入ったかのように貪り食べるシーンからも窺えます。
彼女の心は本当の本当には“死んで”いなかったのです、きっと。
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              ブランコのシーン
 
その心を救ってくれたジョゼフ・・・ティム・ロビンスは不器用ながら温もりと大きな愛を感じさせてくれて適役だったと思います。
この人は本当に「爽やかな笑顔の似合わない人」ですね。←これは私的には「褒め言葉」です。
それから『トーク・トゥ・ハー』にも出ていた独特の風貌のハビエル・カマラも、コック役として「燻し銀的な存在」として密かに鈍く光っていました。
彼とハンナの、油田掘削船上のブランコのシーン・・・カメラワーク、二人で交わされる台詞とも、必見のシーンです。              
海洋学者マーティン(ダニエル・メイズ)も、ハンナの再生に(実は強く)関わってくれた人。
そして最後にその役割が明らかになったインゲ役のジュリー・クリスティー。彼女は好きな女優さんの一人で、年を得てもなおクールで美しいその姿にぴかぴか(新しい)、嬉しくなりました。

ラストシーンの映像と「語り手」の“語り”に、ハンナの幸せを願わずにはいられませんでした。
女性監督の優しさが随所で感じられた、時を経てもう一度観て見たい佳作品です。

 
 先週末はこの時期恒例の独りイヴェントで京都も八坂→知恩院参りと円山公園散策。わけ合って始め(宗教的背景はありません)、もう十数年続けているイヴェントです。

冬枯れの京都もいいですね。
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さてさて、今から先週に続いて今度は白雪の蔵開きに行って参ります。
これに付いては、仕事帰りの「乾杯話」とあわせて「連休その2」として書きたいと思ってます。・・・時間があれば・・・ー(長音記号1)






posted by ぺろんぱ at 10:37| Comment(2) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
"冬枯れの京都"良いお言葉です。でも最近は観光客は冬も枯れないようですね。今年は暖冬で残念です。なぜかといいますと凍てつく気温の中で「すぐき」が熟成されると少々透明感のある光を当てるとわずかに真珠貝の内側の様な光りを発するものができるのですが、今年は期待薄です。たぶん熟成する前に漬かり過ぎるでしょう。
肴は季節を先取りし、早春メニューの「のれそれ」を先日いただいてしまいました。
白雪のお話楽しみにしています。
Posted by kbow at 2007年02月11日 15:36
 私も先日、某鮨店で突き出しに<のれそれ>をいただきました。ほんのりとした甘みと独特のあの歯応え・・・美味しゅうございました。

<すぐき>にまで暖冬の影響が・・・。でもkbowさんの食への感性は素晴らしいですね。「丁寧に」食すことは大切なのですね。

白雪のお話、今晩にでも書きたいと思います。
Posted by ぺろんぱ at 2007年02月12日 10:37
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ミント神戸の施設紹介 情報など
Excerpt: ミント神戸ってご存知ですか?2006年10月4日、神戸のJR三ノ宮駅前に「ミント神戸」は完成しました。ミント神戸内には、映画館(シネマ)、レストラン、オフィス等があります。
Weblog: ミント神戸 情報館
Tracked: 2007-02-13 15:27