でもこの映画の情報をキャッチした時、同郷ポーランドの故クシシュトフ・キェシロフシキー監督の『愛に関する短いフィルム』『デカローグ第六話〜ある愛に関する物語』を思い起こし、これは是非観ておきたいと公開を待っていたのでした。
第七藝術劇場にて『アンナと過ごした4日間』(イエジー・スコリモフスキー監督)を鑑賞。

story
ポーランドのとある田舎町で、病院の火葬場で働きながら、年老いた祖母と二人で暮らすレオン(アルトゥール・ステランコ)の楽しみは、近くの看護師寮に住むアンナ(キンガ・プレイス)の部屋を毎晩のぞき見ることだった。 数年前のある日、レオンとアンナはある事件に遭遇していたのだった…。(写真、storyとも、映画情報サイトより転載)
暗鬱な空気感の中で、まるで絵画のように美しい映像が浮かぶ。
木々も全ての葉を落とした寒々とした街並み、川を流されていく一体の死せる牛、寒さに凍えながらレオンがかじる紅い林檎。
暗澹たる思いを伴うシーンなのに、何故か深く吸い寄せられるかの如く、それらは鮮やかな印象を残すほどに美しい。
極端なまでに排除された台詞であったが、時折つぶやくように語られるポーランド語の響きが哀切な世界へといざなう。

笑っていいのかどうかも分からないほどに微かに存在を示すユーモアと、それを凌駕するほどに圧倒的に迫り来る狂おしいまでの熱情。
ただ見つめ、触れるか触れないかのギリギリの肉欲。いいえ、それは肉欲と言うには余りにも幼く、子が母なる存在を崇め慕うかのような接し方にも似ていた。
報われることはないと思うだけに、あの行為は余りに孤独で哀し過ぎるものとして映った。
汚名さえ甘んじて受け、多くの犠牲を払いながら、それでも何故アンナを見つめ続けるのか。
「それは愛、愛ゆえに。」
余りに「言葉」というものが排除された物語の中で、こんな直球的な台詞を真正面から投げつけられるとは思わなかった。
レオンが放ったこの言葉に、一瞬、心臓をぐっとつかまれたかのようになった。
こんなにも、人はただひたすら「愛する」ことだけに忠実になれるのか。愛だけが全てである世界を、人はこんなにも信じて生きることができるものなのか、と。
心の震えは、しかしながらやがて現実と向き合う。
「無情」とも「残酷」ともいえるラストだったけれど、自堕落な生活をしているかのようなアンナが、決して愚かな女ではなかったことがせめてもの救いだった。
だからこそ、レオンはアンナを見つめ続けてきたのかもしれない。アンナの過去の痛手を自らの痛みとして。
あのラストシーンの後、彼の心はどこをどう彷徨っていくのか、考えるほどに辛く切ない物語だ。

映画のあとは、遠来の友・Mとお昼酒。
サンドウィッチをつまみながら、ヒルトンB1FのサンボアBARでのハイボールです。
レオンに、いつかまっすぐな愛が注がれる日々との邂逅を・・・。
ナナゲイですか・・1度しか行ったことないけど、印象深い劇場だったなぁ・・(←ロシア版『12怒男』でした)
佳きお休みを過ごされてるようですね。
良かった。
幾多の映画の中から、これを選んでいただき嬉しいです。
スコリモフスキ監督は去年も来日してくれたのですが、今年もまた東京国際映画祭の審査員としてやってきてくれました。
旧作上映も大人気でチケットが取りづらかったのですが、私も1作だけ観ることができました。
長い間、監督の活動をしていなかったのがとてももったいないと思えた才能ある映画作家ですよね。
ポーランドの田舎の寂しい風景と相まってレオンの一途さがただただ切なく胸をうつばかりでしたね。
一年ぶりに再見したくなりました。
七藝は相変わらず「我が道を行く」という孤高な?姿勢で存在。
そう言えば「12努男」で七藝デヴューを飾られたTiM3さんでいらしたのですよね〜。どうぞまた大阪に御戻りの折にはお出かけ下さい。
映画は土曜だったのですが、日曜はまた結構慌ただしくしておりました。その慌しさも含め、やはり佳き週末でした。
因みに、土曜のお酒はハ●ス食品<ウコンの力>で解消しました。(^^ゞ
>良かった
ありがとうございます。(*^_^*)
この作品、そしてスコリモフスキー監督に出会えて良かったです。
かえるさんのブログで、返して下さっていたコメントを拝見して自分の勘違いに気付きました。
やっぱりかえるさんは以前からこの監督さんの作品に触れていらしたのですね!「そうだよな〜、やっぱりそうだよ〜」って納得しました。さすがはかえるさんです。(*^_^*)
で、これって17年ぶりに取ったメガホンなんですってね。
そして私は、初めて触れる美しくも力強い画にすっかり引き込まれてしまいました。写真でちらと見た監督のお顔、とてもいいお顔をしてらっしゃいました。人間の深みが顔に出るのですね。
レオンの一途さは現実の“いま”では報われなかったけれど、きっと何らかの影響と余韻めいたものをアンナの心に残しているはずだと思いたいですね。
> 暗鬱な空気感の中で、まるで絵画のように美しい映像が浮かぶ。
このブログに張ってある絵のような感じで、暗いところに鮮やかな赤と白って感じでしょうかね。
うーん....でも今日はちょっとダークになりたくないなぁ。
> 時折つぶやくように語られるポーランド語の響きが哀切な世界へといざなう。
暗い世界でも、その画面とマッチしたレオンのポーランド語って聞いてみたいですね。
昨日はよいお天気でしたね、寒かったけれど。
ダークになるよりはお陽さんの光を浴びる方が良かったかも、ですよ。(*^_^*)
たしかに本作、ポーランドの気候風土もあるでしょうが全体的に暗さが覆っていることは否めません。
でもお察しの通り、時折ぽっと浮き出る色や鮮やかなまでの空気感、そんなのがハッとするくらいの美しさでした。(・・・でも、確かに「暗い」です。^_^;)
哀しいけれど、何も語らぬ中で真っ向から「愛」という言葉を口にしたレオンに心打たれました。
west32さんにはポーランド語はどう響くでしょうか・・・?(^^)
私もおそらくこの監督さん初見だと思います。
映像として圧倒的に力があるというか、
最初から引き込まれました。
わびしくて、哀しくて、陰鬱で、でもちょっと可笑しくて美しい。
こちら側に伝わってくるものが確実にある映像。
物語よりもそちらの印象が強烈でした。
このエピソード(女性の部屋に忍び込んで云々)は
日本で実際にあった話をソースにしていると監督が言ってはりましたけど、
アジア男子だとなんかありえるかなぁとちょっと納得したりして。(=^_^=)
映像の魔的なほどの「力」を感じましたね。
こんなに観る者を圧倒する力を放つ映像を撮れる監督氏なのに、日本ではあまり作品が公開されなかったみたいですね。
過去作にも触れてみたいです。
>日本で実際にあった
そうなのですか!?知らなかった〜!
アジア男子はやっぱり総じて自己表現、自己アピールが下手なんでしょうかねぇ・・・。(^^)