不定期に駅ビルで催される古本市で見つけた『遠い海から来たCOO』(景山民夫著 角川文庫)。新刊で一気に読んだ昔日を思い出して思わず手に取り、買って帰った夜から時間を見つけて読んでいました。
初めてこの小説を読んだ時の爽快感、はじけるような清涼感、そして一抹の哀惜感は、感覚として記憶に残っていました。
当時はバラエティー番組などで奇怪な言動を発する著者を見ていたので、彼がこんなにも瑞々しい小説を書く人だなんて信じられなくて、もしかして景山民夫という人は別の人格を抱え持つ人なのではないかと真剣に考えてたくらいです。
こんなstory…
六千万年以上も昔に絶滅したはずのプレシオザウルスの子を発見した洋助。奇跡の恐竜クーと少年とのきらめく至福の日々が始まったが……。直木賞にかがやく、感動の冒険ファンタジー。

再読した今も、だいたいに於いて当時と同じようなことを感じました。
文体はまるで外国文学を邦訳したかのような感じを受けるもので、それで先ず日常とは違う世界にすうっと引きこまれていく感じでした。
何人かの評者さんが指摘されていることですが後半にはトーンががらりと変わり、戦闘的な場面の描写が続くところがあって、その政治的決着にも納得しかねる部分は確かにあったのですが、そこを超えて、洋助とCOO(クー)の精神的感応、絆、100%純粋な情愛、そんなのを追い求めてひたすらページを繰る自分がいました。
精神感応は、洋助とCOOだけじゃなくて、犬のクストー、バンドウイルカのブルーとホワイトチップのそれぞれの間にも。
「生物」として、おそよそ全ての生けるもの達の間には交信可能な何らかのテレパシーがあるのかもしれません。そして人間だけが、その力を失ってしまったのかもしれません、別の交信手段を身に付けたことで。
物語の終盤近く、洋助の危機を悟ったイルカ・ブルーが自らの身を犠牲にして洋助を救ったくだり、朝の混み合う通勤電車の中で読んでいたにも関わらず目からじわりと涙がにじみ出てしまいました。
洋助とCOOの奇跡の出会いから(そもそもプレシオザウルスですよ!その存在だけで奇跡です!)、二人の、そして仲間の動物たちとのはぐくみ合い、闘いと来るべき別れ、未来への夢想、そんなのがたっぷりの“きらきら感”を込めて書きあげられた一冊でした。
本篇も勿論楽しめるのですが、深く静かに余韻を残す「プロローグ」と「エピローグ」の筆致は感動ものです。
実は知らなかったのですが、本作はアニメーション映画になっているようですね。
観たい反面、原作の作品世界が果たして損なわれていないだろうかと不安で、今のところレンタルして観ようという思いに至っていません。
どなたかご覧になられた方がいらっしゃったらご意見いただきたく思います。

熱燗の恋しい季節ですね。
でもこちらは冷酒でいただきましたよ。先日の某店での<手取川・吉田蔵 大吟醸>です。
景山民夫氏はこの『Coo』と『ボルネオホテル』しか読んだことないですが、2冊は毛色が全く異なっており、当惑してしまった覚えがあります。。
本作って「グリーンピース」の描かれ方はどうでしたっけ?
何だか過激なドンパチが展開されてたように、薄ら記憶しております。
グリーンピースはこの主人公・洋助親子に深く関わってくる女性が所属している団体でした。そしてご記憶の通り、派手な“ドンパチ”を繰り広げていました。
著者の見解としては概ね好意的でしたが、やはり「平和を意図しながらもその手段はかなり好戦的過ぎるきらいがある」との意見は記されていました。
景山さんのはこれしか読んだことがありません。
「ボルネオホテル」もそのうち読んでみることにしますね。
違いを知るためにも。(^^)