前売りを買って楽しみにしていた『Dr.パルナサスの鏡』(テリー・ギリアム監督)を109シネマズHAT神戸で鑑賞しました。
テリー・ギリアム監督の最新作。
そしてヒース・レジャーの遺作となった本作は、撮影途中のヒースの急死により、ヒースと親交の深かったジョニー・デップ、コリン・ファレル、ジュード・ロウが彼の役柄のパートを受け継いで演じ撮影が完成したという一作です。
ギリアム監督が好きなのは勿論のこと、鑑賞前はジョニデ見たさもあったのですが、何ということでしょう、ジョニデ以上に、もうこの世にはいないヒース・レジャーその人の魅力を改めて強く感じる結果となりました。
彼はもうこの世にはいないのですね。エンドロールが終わった後のあの“音”・・・ヒースの魂がシアターのあちこちに浮遊していて、観ている私たちに手を振ってくれている気がしました。
story
人々の隠れた欲望を形にする魔法の鏡「イマジナリウム」を出し物に一座を率いて旅するパルナサス博士(クリストファー・プラマー)は、かつて一人娘ヴァレンティナ(リリー・コール)を16歳の誕生日に悪魔(トム・ウェイツ)に差し出すことを条件に永遠の命を手に入れていた。娘の16歳の誕生日が3日後に迫る中、博士は新たに一座に加わった青年トニー(ヒース・レジャー)とともに最後の賭けに出る。 (story、写真とも映画情報サイトより転載させて頂きました。)
摩訶不思議さはギリアム監督の過去作『バロン』を彷彿とさせました。
現実世界のダーク且つゴシックな映像に比して、鏡の世界で展開する映像はまさに夢見る“想像力”の世界でした!
「想像力は人生を変える」とはパルナサス博士の言葉。
深奥な言葉ですが、しかし博士は、「世界を秩序正しく動かしたい」と、ある意味傲慢ともいえる部分を併せ持っている人物。
そして自らの未来永劫の命と愛娘をバーターにかけるという悔いるべき愚かさをも背負った哀しき人間でもあるのです。
そういう“負”の部分に悪魔は巣食う、のですね。
謎の青年トニー・シェパード(ヒース)も、哀しいかな、悪魔に巣食われた一人だったと言えるのではないでしょうか。
欲望を映す鏡の中でトニーが描くものは、結局は「富」(鏡の世界のトニー/ジョニー・デップ)、「成功」(鏡の世界のトニー/ジュード・ロウ)、「名声」(鏡の世界のトニー/コリン・ファレル)への欲望がどろどろと渦巻く世界だったのですもの。
三者三様のトニーっぷりがとてもユニークで面白かったのですが、それでも、現実世界のトニー(ヒース)の抱え持つ“陰”の部分は、やはりヒース・レジャーが演じてこそのものだったと思えたのでした。
それだけに、「本当なら」の映像で、全パーツのトニーをヒース・レジャーが演じ分けてくれるのを観たかった気がしました、とても。
しかしとにかく、悪魔に翻弄される傲慢で欲張りな哀しき人間たちの姿が、滑稽であり切なくもあるのですよね。
そう、ギリアム監督らしい“毒”をはらんだ諧謔がそこかしこに散りばめられているのですが、やっぱり何となく悲哀を感じさせる世界なのでした。
だからこそ、最後に博士が見た愛娘のあの姿は純粋に美しくあたたかい世界でした。
最後の最後で、タロットカードの<吊るされた男>はトニーではなく、博士自身だったのかと気付いてグッとくるのです。
毒の無いあんな世界を最後にちゃんと差し出してくれるなんて、意外ではあったのですが嬉しくて涙が出るほどでした。
それにしても、摩訶不思議さとそこはかとなく漂う胡散臭さときたら。
悪魔ニック(トム・ウェイツ!)なんて、もうこの上もなく胡散臭い。
タキシードを着込んだ悪魔なんてシュールですが、俗っぽさを漂わせてる姿に「こういうヤツには負けはしない」とヘンな安心感をも抱かせてくれるのです。演じているトム・ウェイツは、あのシブい歌声とはかけ離れてコミカルで最高!でした。
サプライズだったのは、一座の道化役の一人アントンを演じたアンドリュー・ガーフィールド。
彼は『BOY A』の主役を演じていた青年で、本作の出演を知らなかった私はスクリーンでの再会に嬉しい驚きの声(心の中で)でした。
娘ヴァレンティナを演じたリリー・コールのちょっとコケティッシュな感じの美しい姿態と真っ直ぐな眼差しにも魅せられます。
博士役のクリストファー・プラマー。
『サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ大佐は、本作では年老いてヨレヨレさの中、確たる威厳を放ってくれていましたよ。
やはり素敵です。
そしてヒース・レジャー。『ダーク・ナイト』での凄味ある演技はとても印象深かったのですが、こんなに魅力的な人だったのだと今更にして初めてしみじみと感じた私でした。合掌。
さて

Barサンド・バンクでのジン二景と、Jazz Bar Wishy-Washyでのジン一景です。
サンド・バンクでのマティーニは一年前にも挙げていた華麗なるドライ・マティーニ。そしてWishy-Washyでいただいたこのジンは<ブラック・ウッズ リミテッド・エディション60>という名で、アルコール度数60度のキョーレツだがクセになる刺激の味わいのものです。
ママさん、この日も美味しい手料理をありがとうございました。

イイですねー。鑑賞されたんですねー。
こちらでも観ることは出来るんですが、、劇場がちと遠くて、行けずにいます。
正直、ヒース君が出てなければ、余り食指も動かないんですが・・やっぱり観ときたいものですね。
ジョニデやジュードを観れたのは嬉しかったけれど(その他、かなり豪華なキャストですし)、それでもやっぱりヒースで完結してたらどんな仕上がりになってたんやろう・・・って思う今です。
テリー・ギリアム監督作品はやっぱり観ておきたかった私なのでどういう出来栄えであれ満足ですが、今は亡きヒースの存在にじんわりと悲しみが込みあげてくる鑑賞後でした。
もし機会がございましたら(帰阪された際にでも??)、どうぞご覧になってくださいね。(^^)
あ、、、もしご覧になるなら、エンドロールが完全に終わるまで席を立たないで下さいね〜。
>摩訶不思議さとそこはかとなく漂う胡散臭さときたら。
そうそう,ギリアム作品の特徴ですよね,これ!
実はその,摩訶不思議さはいいんですが
胡散臭さが苦手だったりする私ですが。
この作品では悪魔のキャラが立っていましたね。
アントンを演じたアンドリュー君
私も一目でわかりましたよ。
こんな娯楽作でも上手だなぁ,って感心。
おデブさんの女装や仮装大賞みたいな金色顔には笑いましたが。
ヒースが逝って2年もたっての公開。
嬉しくはあるけれど
ようやく慣れてきていた彼の不在への哀しみが
またあらたにこみ上げてきた作品でもありました。
お久しぶりです。ずっと読ませてもらっていますが、映画の方は渋めの選択なので、なかなか追い切れてませんでした。見たかった「3時10分決断のとき」をようやく新開地で見ることができました。待った甲斐がありましたね。
音楽の方も渋めですね。トムウェイツですか。少し前の甲斐バンド、中島みゆきという名前も懐しかったです。
悪魔(トム・ウェイツ)、キャラ立ちしてましたね〜。
仰る通り、胡散臭い族の登場が多いですよね、この監督作品。
私は何となくこの監督の“モノマニア??”的な雰囲気が好きだったりするのですが。(^^)
そうそう、アンドリュー君、仮装大賞なみ!(笑)
でもナイーブな感じは漂ってましたね。いいですね、彼。
>ヒースが逝って2年・・・不在への哀しみが
そうですね。ななさんの深く静かな悲しみが、貴ブログにお邪魔して感じられました。
私はどちらかといえば、逝きし後からヒースの良さがじんわり分かってきた人間(それまではあまりちゃんと観ていなかったのかも知れません(>_<))なので、今になって哀しみが新たに込みあげてきている感じです。
・・・亡くなって本当に残念ですね。
忘れずに読んで下さっているなんて嬉しいです。ありがとうございます。
『3時10分、決断のとき』は如何でしたか。待った甲斐があったと仰っているってことは、お楽しみになられたのだと拝察いたします。(*^_^*)
トム・ウェイツは、かなり昔に年下の友人女性がたっぷりとテープ起こしをしてくれてプレゼントしてくれたのが出会いでした。初めて聴いた時は衝撃でした。
甲斐バンド、中島みゆきは私の青春の1ページでもあります。渋いと仰って下さるより、私のは単なる懐古趣味なのかもしれません。(^^ゞ
でも、好いものはやはり好いですよね。
あの着信音(?)が欲しくなりましたね☆
結構な方々がアレを耳にすることもなく、席を立っていかれました、、
まぁでも、私的にはイマイチでしたかね、、(きっぱり)
鏡の中の三人三様のトニーって面白い趣向ですね。
> 「想像力は人生を変える」とはパルナサス博士の言葉。
この言葉いいなぁと思います。ぺろんぱさんの言葉によると決していい意味で使っている訳でないですが、やっぱり想像力で人生は変えたいなぁ、だから信じたい。
映画を観ていないのでちょっとトンチンカンな感じ方かもしれませんが。
PS この映画ってTOHO、109、マイカルってメジャー系での上映ですね。上映の映画館はシネコンだからかなりの上映回数ありそうですね。つまり観る機会は沢山。
そうですか、、、余韻の残る中、アレを聴いて欲しかったですね、皆さんにも。
ってか、皆さん、TiM3さんと同様「余韻」を感じて無かったんですかね。^_^;
イマイチでしたか、、、また後刻貴ブログを訪問させて頂きますね。
「想像力は人生を変える」の言葉自体はいい意味で使われていましたよ。
私も、想像力で人生は変わると思います。
同じ人生でも感じ方自体が違ってくるのですものね。
三者三様っていうのは、結果的に○だったと思うのですが、でもやはりヒースでの三様を観たかった気がしました。
はい(*^_^*)
メジャー館上映なのでまだ十分期間はあると思います。もしも機会がございましたら。(^^)
いやー、濃厚にして自由。現代人に対するに皮肉と、生きる目的というか何故に自分が存在しているのか、みたいなある意味根源的な部分を、カッコよくコミカルに描いてましたね。
まさにおっしゃるような”毒”が廻った世界、ブラックジョークも鋭く、見事な作品だと感じました。こういう粋な作品は大好物ですw
ヒース・レジャーの遺作に相応しい作品のような気がするけど、本当に寂しいです。彼はこの作品の中で、本当に躍動していたし、確実に映画の中で”生きて”いました。本当に惜しいです。
リンクの件、差し替えありがとうございます!確認させていただきました!うちからもリンクさせていただきました☆
ところで、突然ですが今月結婚しまして、今から関空からヒースの母国、オーストラリアに新婚旅行で旅立ちますw本格的な海外旅行は初めてでどきどきしていますw
そして先ずは!ご結婚おめでとうございます!!
今頃はもうエアーの中でいらっしゃるでしょうね〜(*^_^*)。
素敵なご旅行を!そしてどうぞ末永くお幸せに!!
さて本作。
現代人に対する皮肉、なるほど、です。
次回作は更なる「毒」と更なる「(独自の)カッコよさ」を我々に届けて欲しいです。(*^_^*)
ヒース・レジャー。
私は今の今になって本当に残念なことだったとつくづく思うのです。初めて彼をスクリーンで観た時には、多分その良さに気付かなかった愚鈍な私でした。これからは映画の中で「生き」続けるヒースを観ていきたいです。
リンクの件、ありがとうございました。(^^)
旅行については、ぼちぼちブログなんかで書いていこうかと思ってますので、またよかったら覗いてってください☆
この映画のヒースについては、妙なお面でマダムを誘い込むシーンの優雅さや引力がとにかく良かったと思いましたね〜。
彼の作品では、個人的に印象深いのはロックユーとブロークバックマウンテンです。本当に”いい俳優”でした…。未見の作品も見ていこうと思ってます。
貴旅行記も勿論!楽しみにさせて頂きますね!(*^_^*)
猫事情でここ何年かスーツケースを持つ旅に出れていないので一層楽しみです!
>優雅さや引力が
そう! そうです!
「優雅」なんですね、彼は!
『ブロークバック・マウンテン』、課題作とします。