2010年02月07日

インビクタス/負けざる者たち

   梅田ブルク7で『インビクタス/負けざる者たち』(クリント・イーストウッド監督)を鑑賞しました。
前売りチケットを長らくあたためておりました。

stosy
   ジョン・カーリン原作のノンフィクション小説クリント・イーストウッド監督が映画化。反アパルトヘイト運動に尽力し、南アフリカ共和国大統領となったネルソン・マンデラと、同国のラグビー代表チームのキャプテンと人種を越えた友情を描く。
1994年、マンデラ(モーガン・フリーマン)はついに南アフリカ共和国初の黒人大統領となる。いまだにアパルトヘイトによる人種差別や経済格差の残る国をまとめるため、彼はラグビーチームの再建を図る。1995年に自国で開催するラグビー・ワールド・カップに向け、マンデラとチームキャプテンのピナール(マット・デイモン)は、一致団結して前進する。 (※story、写真ともシネマトゥデイより転載させて頂きました。)

                 インビクタス.jpg


  やっぱり凄い、クリント・イーストウッド監督。

静かに、敢えて激しい見せ場を作ることなく穏やかなトーンで描かれていき、終盤で一気にクライマックスへと導かれます。ラストカットからエンドロールに切り替わった途端に思わず喝采の拍手をしたくなってしまいました。

監督御大を前に若輩の私ごときが生意気ですが、この人はつくづく“人生の機微”というか人間の“魂の震えどころ”というものをきっちり分かっている人なのだなぁと思うのです。

27年にも渡って投獄され、解放の後に大統領になったネルソン・マンデラと、アパルトヘイトの象徴と言われた白人至上のラグビーチームの主将ピナール。
かつての南アでは到底重なるとは思えなかった二つの人生が重なってゆきます。
それはマンデラが差し出す手によって始まるのですが、終始暗殺の危機に晒されながら国を変えるという使命を背負ったマンデラと、成績不振と行く末の不安に苦悩しながらも退路を絶たれ、チームの立て直しを図るしか道のないピナールとはどこかで通じるものがあったのかも知れません。

                 インビクタス1.jpg

               
マンデラとピナールが初めて一緒にお茶を飲んだ時の会話が心に残ります。
足を痛めたピナールを気遣うマンデラに「完璧な状態で闘えることなどありません。」と答えるピナール。
マンデラが言います、「人生もスポーツも同じだな」と。
真の意味で「偉人」と言われる人には微塵の奢りもないのだと思うと同時に、そういうマンデラの“人としての”素晴らしさに素直に感じ入ることのできたピナールもまた質の高い人間だったのだと感じました。

「30年(近い)間も狭い監獄に閉じ込められて、それでも人を赦せる心とは何なのだ…」とはピナールの独白。それがマンデラという人だったのですね。
マンデラの思想と理念を、過大にではなく等身大に真直ぐに描き、そこにスポーツの爽快な世界をリンクさせ、やがて両者の持つ“想像を超える力”を一つに結集させる怒涛のラストへと・・・その「導き」に私は丸ごと身を委ねる感じでした。


                 インビクタス2.jpg
               
マンデラの警護として配属された白人チームと黒人チーム、白人の家庭で働く黒人のメイド、路上生活の少年と彼等を排除する側にいた街の警官たち、それらがやがて「一つ」になる瞬間には熱いものが胸にこみ上げ、「スポーツの持つ偉大な力」と共に「映画のもたらす偉大な力」を思い知らされたのでした。


一昨年に観た映画『マンデラの名もなき看守』の幾つかのシーンも甦りました。
あの時の名もなき看守たちの全員を、きっとマンデラ自身は全てはっきりと記憶にとどめていたはず。だって「相手を先ずよく知ること。それが勝利につながる」とはマンデラの人生哲学なのですから。


  さてさて、惨めな負け試合のあと、ピナールたちチームの全員が差し入れの缶ビールを「くそマズいビール!」と言って壁にぶつけるのですが…やっぱりお酒って飲むシチュエーションも味のうちなのですね〜。


       十四代 雄町.jpg クリームチーズ梅.jpg 初搾り宗玄.jpg 瑞冠 雫取り.jpg
        
ここで、先日の酒宴から四景を。
大好きな<日本酒立ち呑みBar刀屋さん>にて。こちらで饗されるお酒とおつまみはどれも美味しくてサイコーです。

posted by ぺろんぱ at 22:02| Comment(18) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
やっぱり良かったのですね。次の楽しみにさせて頂きます。

> ラストカットからエンドロールに切り替わった途端に思わず喝采の拍手をしたくなってしまいました。
ええええ!、拍手は無かったですか?良かったら是非、是非拍手を。
先日市川雷蔵さんの「弁天小僧」で一人拍手して浮いた私ですが、良い映画には拍手をしたいですよね。小さくパチパチでも。

イーストウッドという人は役に恵まれ、その役者としての成功、そそて次は映画を自分のものとして次へと伝える役に、素晴らしい方です。
益々楽しみな作品です。
Posted by west32 at 2010年02月07日 23:39
イイですね!
ワタシも早く観たいです。

とにもかくにも、モーガンおじさんが元気そうで
良かったです。

どうにもワタシの中で「死亡説」が渦巻いてたもので、、(⌒〜⌒ι)
Posted by TiM3 at 2010年02月08日 01:03
west32さん、こんばんは。

拍手ねぇ、、、思わず上げかけた手を下ろしてしまったんです。
でも、そうですよね、周囲を気にせず小さくてもパチパチとすればよかったです。
今度からはそうします。(*^_^*)

>役者としての成功

そうですね、先ずはそれがあっての今ですよね。
でもそこで終わらず、まだまだ“とことん”(そしてあくまで他流に流されることなく)信じるものを追及していく監督の姿勢に、これまた拍手!ですよね。

私はかねがねイーストウッド監督には日本人のアイデンティティーが僅かにでも入っているのではないかと思っているのですが(感情のツボが日本人のそれを思わせて)、今回もその感を強めるに至っています。
Posted by ぺろんぱ at 2010年02月08日 19:43
TiM3さん、こんばんは。

モーガンおじさん、お元気でしたよ〜(*^_^*)。
喋り方も多分マンデラご本人のそれを研究されたのでしょうか、他作品でのモーガンさんの通常の喋り方とイントネーションの微妙な違い?みたいなものを感じたのですが・・・(違うかもしれませんが)どうなんでしょう。

>死亡説

いえいえ、まだまだ!(であって欲しいですぅ!)

マット・デイモン君が私はとてもよかったです。
今まで何作か主演作も観ていますが、実は初めて「この人好き!」って思えた本作なのです。
Posted by ぺろんぱ at 2010年02月08日 19:50
「インビクタス」観てきました。イーストウッドに外れ無しですね。すでに次回作も撮影を始めているとか。すごい創作意欲です。
無い物ねだりですけど、もう少しマンデラの人間臭い部分とか、離婚した元夫人との関係などがもう少し描かれていたら、ふくらみが出たようにも思います。ストレート過ぎるというのは贅沢な悩みですね。
決勝戦のボックスVSオールブラックスの試合経過は知ってましたが、肉弾戦での骨のきしみが聞こえてきそうなラグビー映画でもありました。
ブラックスの11番ウィング「ロムー」が、そっくりなので思わず笑えました。
Posted by 稲田 at 2010年02月13日 00:02
どもです☆俺も見てきました。

>敢えて激しい見せ場を作ることなく
この映画の良さはそこじゃないかなと思います。

過度の演出がほとんどなく、声とか視線一つとか”間”とか、そういう人間の些細な部分から伝わってくる二人の魂が、やがて国民の人々を収束していく様が、本当に見事でした。

>マンデラとピナールが初めて一緒にお茶を飲んだ時の会話が心に残ります。

この会話のシーンとその後のピナールが恋人に話した言葉は、ここ数年見てきた映画で最も濃厚なシーンだと感じました。一瞬で人と心を交わすマンデラの人間性がこのシーンで見事に出てますよねw

『マンデラの名もなき看守』は実はまだ未見なので早くみたいです。主演のデニス・ヘイスバードはドラマ24で一気に惚れこんだんですが、最近俺が一番好きな映画、マイケル・マン監督の「ヒート」に少しだけ出ていたのを発見したんですw
デニス・ヘイスバード、どんどん活躍して欲しいです☆
Posted by dk at 2010年02月14日 09:27
稲田さま、こんばんは。
イーストウッド監督の次回作、どんな作品なのでしょう、楽しみです。

>人間臭い部分とか、離婚した元夫人との関係などがもう少し

そうですね。「家族」という言葉にとても敏感なマンデラだったから、余程彼のその後の人生に影響を与えた出来事だったのでしょうからね。

私はラグビーはあまり知らないのですが、南アも割りと強豪国らしいですね。
あの最終戦は臨場感ありましたよね。

ロムー選手、そんなに似てるのですか!
と書きつつ、さっきネットで検索してロムー選手の顔写真を見ちゃいました!(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2010年02月14日 17:37
dkさん、こんばんは。

そうですね、二人の「魂」の触れ合いが描かれていましたね。滋味ある作品でした。

>一瞬で人と心を交わすマンデラの人間性

上に立つ人というのは「人心掌握」が出来る人なのでしょうね。マンデラの場合、策略によってではなく深い人間性によって自ずと為されることなのでしたね。でもそこに素直に呼応することのできたピナールもまた素晴らしい人だったのではないかと感じました。

>デニス・ヘイスバード

『マンデラの・・・』でマンデラ役だった俳優さんですよね。穏やかな顔立ちの御方でピッタリでした。
『ヒート』は未見です。インプットしておきますね。(*^_^*)

dkさんのブログ、以前にリンクさせていただいていた「mountain77…」に替えて現在のブログをお気に入りリンクに入れさせて頂きました。
名前は「映画に浸れ。」でよかったですか?間違いがあればご指摘下さいね。
これからも宜しくお願い致します。
Posted by ぺろんぱ at 2010年02月14日 18:03
はろはろ、しげぞうでございます。

いい映画でした。
国民一体化、リーダーシップなど
イーストウッド監督は、どの作品もいいですね。
Posted by しげぞう at 2010年02月15日 21:01
ぺろんぱさん、こんばんは♪
私も思わず喝采の拍手をしたくなりました〜
穏やかなトーンから、クライマックスの決勝戦へ!
その流れの中、何度グッときたことかっ。(T_T)
『グラン・トリノ』公開から未だ1年も経たないというのに・・・
本当にこの監督は“魂の震えどころ”を解ってらっしゃるというか、
私のツボと相性が良いというか・・・

マンデラさんの言葉もとても印象的で心に響きました。
主要人物以外の小さなエピも良かったですね^^
スタジアム外の少年が、最後には抱き上げられ
おまけにジュースまで貰って(笑)
このシーンでも胸が熱くなりました〜
Posted by Any at 2010年02月16日 19:03
こんばんは ご無沙汰です。

とりあえずこの作品だけは観ておきたいと思ってます。
約、6週間も新作映画を観てないと禁断症状が出まくりです^^

では、またよろしくお願いします。
Posted by ituka at 2010年02月16日 21:58
しげぞうさん、はろです。

ご覧になられたのですね。
直球で、バシッと心に響く感じでした。
こうなったら今後の作品全て、見逃せないでね。
Posted by ぺろんぱ at 2010年02月17日 19:21
Anyさん、こんばんは。

そうなのですよ〜、日本人のツボと相性いいですよね〜。
なので、私は勝手に「日本人のアイデンティティが入ってる」説につなげちゃうのですが。(^^ゞ

>『グラン・トリノ』公開から未だ1年も経たない

本当ですね。凄く意欲的ですよね。
もう少し休んで頂いて「長く」撮り続けて頂きたくもあります。

マンデラさんの言葉、彼が語るからこそ重みのある言葉でした。
そしてイーストウッド監督がそれを描くからこその重みも感じるのです。(*^_^*)

ラストのシーンの幾つか、予測はできていてもやっぱりぐぐっときて泣かされちゃいますね。
ハリー・キャラハンの台詞「泣けるぜ」ですよね、まさしく。(^^)
Posted by ぺろんぱ at 2010年02月17日 19:57
itukaさん、こんばんは。

ご復活を嬉しく思います。
そして、お越し下さりありがとうございます。
私も先ほどitukaさんのブログにお邪魔してきましたよ。
禁断症状を抑えるべく、是非ご覧になってきて下さいね。
itukaさんにとって本作がよい作品となりますように。

こちらこそ、これからもどうぞ宜しくお願い致しますね。


Posted by ぺろんぱ at 2010年02月17日 20:21
とりあえず復帰第一作は安定度抜群の作品を撮り続けているイーストウッド映画を。
にしても、ラグビーチームの飛躍は凄かったですね。
1年でそんなに変われるものなのかがワタシ的に興味の行ったところでしたが
残念ながら、試合まで“1週間”という台詞を聞いたときはシートからずり落ちそうになりました^^;

でも、全体的に見て、やはり上手い演出をしてるな〜と思いましたよ。
ここのところ年2作品を撮っているイーストウッドなので
もう1本、年内に観られるかも知れませんね^^
Posted by ituka at 2010年02月20日 19:41
itukaさん、こんばんは。

コメントいただいて、先に早速貴ブログにお邪魔して参りましたぁ!(*^_^*)

>1年でそんなに変われるものなのかが

やはりそこに疑問を抱かれましたか。
しかしもともと「素地」はあったチームだと感じたのですが・・・否、それにしても、ですね、確かに。^_^;

>でも、全体的に見て、やはり上手い演出を

終盤の盛り上げは「(分かってて、分かってるのに、)やられた!」っていう感じでした。
それが前半の細かい疑問点を帳消しに出来るか否かってところでしょうか。

あ、、、もう一本!?
それなら期待大ですぅ〜。
でもちょっと休んでいただいて次期作にどど〜んと注力!願いたい気もしますね。(^^)
Posted by ぺろんぱ at 2010年02月20日 20:11
観て来ました〜。

全体的に警備が手薄過ぎて、違う意味でドキドキしっぱなしでした(=^_^=)

ちょっと肩の力の抜けてる感じで、良かったです。

(本作は)気負いなく監督された印象でした、御大。
Posted by TiM3 at 2010年03月04日 01:14
TiM3さん、こんばんは。

早速貴ブログにお邪魔して参りました。

>ちょっと肩の力の抜けてる感じで、良かった

はい。そしてTiM3さんのレヴューは“熱かった”ですね〜(*^_^*)。楽しく拝読しましたよ。

>全体的に警備が手薄過ぎて、違う意味でドキドキ

あのSPの黒人チームの人、ラヴストーリーに向いてそうな甘いマスクでしたし・・・。
でもその「手薄感」も、とにかくあのゲームの勝利への高揚感に繋げるものとしては・・・それもまた良し・・・でしょうか。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2010年03月04日 20:00
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