2010年02月20日

ヴィクトリア女王 世紀の愛

  梅田ガーデンシネマで『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(ジャン=マルク・ヴァレ監督)を鑑賞しました。

エミリー・ブラント見たさで1月中旬の公開当初からマークしていた一作でしたが、続々公開される他作品に押されてスルー状態でした。このまま見送りかなと思っていたものの、梅ガデにいつまでも本作の名がかかっているので「これは観ておきなさいという神の思し召しかな」と思い(いちいち大げさな私です)、新梅田シティへ足を運んで参りました。


  敵対する人間をして「善人」と言わしめたアルバート公。 善き人であることって素晴らし〜い!

story
  七つの海を支配し、イギリスを「太陽の沈まない帝国」と呼ばれるまでに押し上げたヴィクトリア女王(エミリー・ブラント)。黄金期を夫婦で支え続けた女王とアルバート公(ルパード・フレンド)は、19世紀当時からいまも、史上最高の理想のカップルとして、語り継がれている。しかし、真の絆を結ぶまで、2人は数々の波乱と困難を乗り越えなければならなかった。母親との確執、王室の権力争い、政治家との駆け引き、2人を引き裂く疑惑、国民の暴動。そして、ヴィクトリアに向けて放たれた、一発の銃弾…。国と愛する人に人生を捧げた美しき女王の知られざる真実の物語を描く。製作を巨匠マーティン・スコセッシが手がける。 (※story、写真とも映画情報サイトより転載させて頂きました。)

                 ヴィクトリア.jpg


  流麗なカメラワーク、スクリーンに舞う鮮やかな色彩。
真紅のベルベットが空気に踊る冒頭シーンには思わずうっとり。

宮殿のきらびやかさと荘厳さ、豪華なドレスや贅沢な調度品など、王室の歴史ものを観る醍醐味も味わえる嬉しさもあるのですが、ヴィクトリア女王という偉大なる人物が意外にも“等身大”に、一人の人間、一人の女性として、若さゆえの勇み足や若さゆえの直情さも含めてとても魅力的に描かれていることに好感が持てました。

権力の抗争や様々な駆け引き、肉親との確執などが描かれていますが、総じて平和で、正統的に美しくまとめられた作品という印象を受けました。この時代が比較的国情の安定した時代であったからなのか、血なまぐさい事件や歴史の変革の波、貧しい民衆の生活どの描写が余り為されておらず、視点も王室内一点に据えられていたという描き方によってそういう印象を受けたのかもしれません。

時代も国情も大きく違いますが、エリザベス女王の「苦悩」に焦点を当てて半生を描いた映画『エリザベス・ゴールデンエイジ』に比せば“重厚感”は少ないといえるかもしれません。しかし本作はヴィクトリアとアルバート二人の「愛の物語」として作られた作品だと思うので、その出会いからやがて二人が執務デスクを並べるに至るまでの愛の育みが、深く静かに、時にキュートに描かれていて、観終わった後で好もしい気分で劇場を後にできました。

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ヴィクトリアは18歳で即位したのですから、若さゆえの「権力への自負」が芽生えるのは当然ともいえるかもしれません。
暗殺を恐れるあまり外の世界との交わりも絶たれ、階段の乗降ですら手を取る人間が不可欠とされた自由のない生活から、王位に就いたヴィクトリアは自立という名の自由を求めます。
この「自由への希求」と「統治への熱情」が溢れんばかりで、演じるエミリー・ブラントの情熱的で意志の強い眼差しが活かされていたように感じました。

アルバート公は、国を守る上でいかに側近となる人間が重要か、人生を歩む上でいかに伴侶となる人間が大切であるかということを改めて感じさせてくれます。
ヴィクトリアを女王として敬い、守り、時に間違いを正し、一人の女性としても永遠に愛し抜く。始まりは何らかの策略があったにせよ、二人は二人の努力と相手を信頼する心でそれを本物に変えたのですね。
紆余曲折はあったにせよ、互いに互いの意を受け入れることのできた二人は非常にバランスのとれたカップルだったと言え、アルバートを選んだヴィクトリアの選択眼にも間違いはなかったと言えるのでしょう。


20年にも及ぶ共同統治というのも凄いですが、アルバートの死後39年間もアルバートの衣服をソファに飾り日々を過ごしたヴィクトリアにも一人の女性としての想いを感じ、あらためて驚かさせるのです。

なかなか素敵な映画でしたよ。かわいい


              寸 1.jpg    寸 焼酎ロック.jpg
                 
  さて、善政は善き人々の努力と叡智によって成し遂げられるのですねー、と、しみじみ。
我が日本はどうなのでしょう、どうなっていくのでしょう。

そんなこんなを語りつつ(たまには政治の話もいたします)、一献、二献…。







posted by ぺろんぱ at 19:41| Comment(4) | TrackBack(2) | 日記
この記事へのコメント
19世紀という時代のせいか、中世を描いたものに比べると
現代にも通じるようなものがある気がして、なんとなく親しみを感じました。

ウィキにはアルバート公の写真も掲載されていて、なかなかの好男子っぷりがうかがえるし、
確かではないでしょうが「ヴィクトリアはハンサムなアルバートに一目ぼれした」等と
書かれていました。
王室という特殊な世界で好ましいと思える相手と結婚できるなんていいなぁ〜と単純に思いますね。
結果的に、輝かしいヴィクトリア朝はアルバートなしではありえなかったんでしょうし、きっと。

映画やから間違いなく美化されてるんやろなぁと思いつつ、(^-^;A
尊大な態度が見え隠れするヴィクトリア役のエミリーも、
繊細で堅実な様子に信頼がおけるアルバート役のルパートも、
実際の二人はこんな感じかもと思わせる説得力がありました。
エンドロールの曲“Only you”にもしみじみしました。
Posted by ゆるり at 2010年02月21日 22:17
ゆるりさん、こんばんは。

そうですね、私が等身大と感じたのはやはり「時代」というのが大きかったのですね。
ゆるりさんの仰る「現代にも通じるような」というのがそういうことだったのですね。(*^_^*)

アルバート公のウィキは手落ちでした!あとで早速見てみます。「ハンサムなアルバート公」ですか、ふむふむ(*^_^*)。

>王室という特殊な世界で好ましいと思える相手と結婚できるなんて

そうですね〜。
しかしつい先日、(皇室でなく)特殊な世界でないものの、とっても好ましい友人カップルのその後と再会し、こういう最強カップルというのは確かに存在するのだと実感した私です。
でも彼女たち二人も「努力と真っ直ぐな思いやり」の賜物でした。いつの世も真実は同じなのでしょうか・・・。

>実際の二人はこんな感じかもと思わせる説得力が

エミリーもルパートも、何となく“近い”感じがするのがよかったのでしょうかね。
お互いが婚意を打ち明けるシーンが、こちらも思わずはにかんでしまいそうで素敵でした。

>エンドロールの曲“Only you”にもしみじみ

もう一回聴いてみたいです。(*^_^*)

Posted by ぺろんぱ at 2010年02月22日 21:25
いろいろお忙しいでしょうが、お身体くれぐれも気ィつけてください。

で、これ、ちょっと前BSでやってたんをこの間特に期待もせずに観たところ・・・はまってまいましたぁ(キッパリ)。
エミリーブラントはージェーンオースティンの読書会ーでしか知らなかった人ですが、(遅れてます・・・)今回結構好きになりました。あらすじ的には、(世界史疎い、ていうかあほなんで)ヴィクトリアとその叔父らとの関係性など、しばし、じっくりと考えなあかんかった自分ですが、結局はぺろんぱさん仰るとおりーヴィクトリアとアルバートの愛の物語ーそのもので、いやほんまよかったですわ。
「命令です!立ち去るのは許しません!」みたいなこと言われた次の日も一緒に行動しようとしたアルバートに、自の全くぶれない心情がよく表れていました。ええ人ですね。

俳優的には、ポール・ベタニーに興味を覚え、ちょっと調べてみたところ、
ジェニファー・コネリーの旦那さんやったていうのわかりましたが、そのことより自分の子の名前に親交のあるステラン・スカルスガルドのステランてつけたっちゅうんがへぇーってな感じでした。

ほな、またです。
Posted by ビイルネン at 2014年04月06日 21:58

ビイルネンさん、お越し下さり嬉しいです。
優しいお気遣いもありがとうございます。身体には気をつけつつ、踏ん張ります。

エミリーブラント、私は『サンシャイン・クリーニング』でグググッと好きになった女優さんです。
ジェーンオースティンの読書会は未見です。要チェックですね。

>愛の物語ーそのもので

エミリーブラントに比して、アルバートを演じたルパートフレンドさんはちょっと地味な感じがしましたが(結構深い憂いを湛えた瞳の持ち主さんでもあるのですけれど)役柄的にその地味さが、実直さ誠実さ善き人加減を醸し出していた気がします。
「ええ人」というのはやっぱりええもんですね。

>ポール・ベタニー・・・・ジェニファー・コネリーの旦那さんやった

そうなのですか。
ポールベタニーさん、また女性の好みがシブイですね。

>自分の子の名前に親交のあるステラン・スカルスガルドの

私もへえーっていう感じです。
よほどステラン・スカルスガルドさんのこと人間として慕っておられるのでしょうね。
そういう関係性、いいですね。

ビイルネンさんの「ほな、またです」には癒されます。

Posted by ぺろんぱ at 2014年04月08日 06:02
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