いろいろと所用があり、劇場に走りこんだのは開映5分前。でも大丈夫、そこは109シネマズHAT神戸でしたから(^_^)。(←ご興味があれば06年10月1日付ブログをご参照ください。)
story
ベストセラー作家トマス・ハリスの生み出した“世界で最もインテリジェントなシリアルキラー”ハンニバル・レクターの過去に迫るシリーズ最新作。
1944年のリトアニア。名門貴族の家系に生まれたハンニバルは戦争の悲劇により両親を失う。幼い妹ミーシャを連れて山小屋で生活を始めたハンニバルだったが、逃亡兵たちがやって来て2人を監禁。そこでのある出来事を経て孤児院に送られ、成長したハンニバル(ギャスパー・ウリエル)は、やがて逃亡兵たちへの復讐を誓う。 (シネマトゥデイより)

映画としては悪くないと思いました。
主演のギャスパー・ウリエルはゾクゾクするほどの妖気と狂気を込めた鋭い眼差しでスクリーン一杯に華々しく登場しているし、悲しく惨い過去からの復讐劇は納得のいく流れにはなっています。
ただ、レクター博士の物語として前三作からの流れを受けてみると、どうもすんなりと着地できない居心地の悪さが残ります。
今作の彼が、あのハンニバル・レクターには重ならないのです。
アンソニー・ホプキンスの演じたレクター博士の、あの「天才にして異常なる猟奇的殺人者」が後天的なものによってのみ作られたとは私には到底思えないのです。加えて食人肉という行為(カニバリズム)が、全く何の素地もなかった人間から生まれ出るものでしょうか。
レクター博士の眼差しには何処か“乾いた”狂気と魔性があったけれど、ハンニバル青年のそれは悲しみに縁取られた“生身の”憎しみによる狂気だったように感じました。ハンニバル青年の行為は(惨く許されることではないが)理解しようとすることは出来るけれど、レクター博士のそれには理解を遥かに超えたブラックホールのような怖さを感じるのです。
だから、私の中で二人は重なるようで重ならないのです。

劇中の台詞はこう語っています。
「少年ハンニバルは雪原で死んだ。妹と共に心が死んだ。今の彼はモンスターだ。」
確かにそうかもしれません・・・・それでも彼は未だほんの少し、人を生身の身体で愛する心を持っていたように思います。
義理の叔母であるレディ・ムラサキ(コン・リー)を愛そうとした彼が、まだそこには居ましたから。
でもやがてムラサキは彼にこう語って去って行きます。
「貴方に、愛に値するものがあるのかしら・・・。(無い、ときっぱり言っているのです。)」
この時に、彼は二度、死んだのかもしれません。この時にこそ本物のモンスターになったと言えるのかも知れませんね。そう考えるとレクター博士への変貌も納得できるかな・・・。

もう一つ疑問が。
何故「日本」なのか。
レクター博士の持つ殺人美学のようなもののルーツを日本に求めたのかもしれませんが、欧米では日本の持つオリエンタルでアルカイックな雰囲気によってそれが功を奏するのかもしれませんが、日本人からみると凄く“安易な逃げ”のように感じます。
多分、欧米人からは理解不可能な“東洋の神秘”なるものに漬け込んでストーリーをシャッフルすれば、レクター博士の謎も神秘性を帯びるものになると考えてのことなのでしょうか。
それとも、今作で舞台となったフランスで昔起った日本人による食人肉事件を絡めての事だったのでしょうか・・・。
そもそもコン・リーは日本人じゃないじゃん!
コン・リーは好きですけれど(今作でも素敵でしたよ)、レディ・ムラサキの降って湧いたような登場と、突然ハンニバルが日本の武士道に目覚めるという設定が良く分かりませんでした。
でもとにかく!ギャスパー・ウリエルが光っていて、2時間1分、決して睡魔が襲うことはなかった映画です。
ギャスパーは先ほど見逃してしまった『パリ・ジュテーム』にも出ている由・・・・益々見逃したのが悔やまれます。
先述の「日本がルーツ云々」という見解は別として、レディ・ムラサキとの絡み(同類の二人に芽生えた愛、芽生えながらもハンニバル青年の心の闇を救いきれなかった愛)というのも中々良かったです。やはりコン・リーは大女優の貫禄たっぷりですね。
それでもやっぱり、今後まだシリーズ化が続いたとして、レクター博士を見る度に「悲しく惨い過去が彼をこんなにしたのね」とは決して思いたくないので、本作は「ライジング」とは言い難い「別物」の作品でした、私にとっては。
血肉の映像でちょっと暫く赤いものは食べられないかしらと思ったのも束の間・・・帰宅後は「週末に台所に立って手の込んだものを作る事がストレス解消法だ」と豪語する友人の男性が「久々のヒット作なので味見にどうぞ」とお昼前に届けてくれていた手作りのラザニアを赤ワインで戴いてみました。
(ハンニバル映画の後の赤い食べ物と赤い飲みもの・・・意外と私はタフみたいです。)
学生の頃にアメリカに留学していた彼、当時のホームママがよく作ってくれたと言う“アメリカスタイル”のラザニアだそう。
イタリアスタイルのラザニアはパスタシートにミートソースとベシャメルソースを挟むそうですが、アメリカのはミートソースとカッテージチーズ
だそうです・・・・意外にもちょっぴりヘルシーです。ミートソースも一日かけて煮込んだ手作りだそうです。感心感心。


ミートソースの程よい濃厚さがカッテージチーズのフレッシュさと相まって美味しい!
本日の赤ワインはイタリアの<テッラ・ダリジ>、普段飲みのお安いものですがコクもあってちょっぴりスパイシーです。
冒頭の写真はハンニバル青年が赤ワインのグラスを掲げていますね。
美しくも不敵な笑みのあと、惨劇が・・・。
私はラザニアに舌鼓をうちつつ、猫を相手に平和に飲み続けましたけれど。
このシリーズの精神世界はかなり好みで、この作品はきになってるんです。
>日本人からみると凄く“安易な逃げ”のように感じます。
なるほど。CMでおもむろに鎧が映ったときに妙な違和感を感じました。バットマンズビギンズで、主人公が東洋的な精神世界の影響でバットマンになるきっかけとなったことを思い出します。バットマンのは、しっくりきてました┌|∵|┘
>でもとにかく!ギャスパー・ウリエルが光っていて
かなり見たいっすよ☆新星ですねぇ。
そうなのです、バットマンといいハンニバルといい、サムライはブームなんでしょうか・・・。
かなり前に「新作の舞台は日本らしい」という噂は耳にしていましたが、まさかこんな形とは思いませんでした。
私もこのシリーズは追っかけしてしまいます。次が出れば勿論。あるとすれば舞台は何処でしょうね。(^^)
今回は見た後で、赤ワインは飲めそう
です。(ハンニバルはとてもとても
食事をする気は・・・)
フランスの事件・・・はなるほどです
ね。あの鎧は偶然?
そうですか、やっぱしニポーンでしたか(⌒〜⌒ι)
私的には「そんなときゃ、チベットで撮っとけ!」
とアドヴァイスしたげたいですね。
ギャスパーと言えば『ロング・エンゲージメント』で主人公演じてたんですね。何か印象が薄かったような・・まぁヒロインがオドレィ・トトゥさんでしたからね。。
私的に『ハンニバル』のラストで、博士は飛行機で日本に向かう・・みたいな設定だったんじゃなかったかな? とか勝手に記憶してますが、時間軸的にそう言う造りじゃなかったんやね。
それにしても、本来は捜査官クラリスの成長物語として展開するんじゃなかったんか? とか勝手に解釈してる本シリーズ(?)
レクター博士がのさばっちゃうトコが、何か『ドクタースランプ』みたいで面白いですね。
(あのマンガも元々は(ロボットじゃなく)博士が主人公だったらしい)
そうですね・・・二作目『ハンニバル』ではレイ・リオッタファンは涙と共に嘔吐したかも知れないですね。
あの鎧は一作目にレクターが被せられたマスクを意識してのモノでしょうね。
これから貴ブログに飛んできます。今後とも宜しくお願いいたします。
>それにしても、本来は捜査官クラリス の成長物語として展開するんじゃなか ったんか?
そっかぁ・・・成る程、そうだったんですね、目から鱗です。
確かに、そう言うことならレクター博士が前面に出過ぎてしまうことで今後のシリーズ化(←あるならば)に何らかの変化はあるのかもしれませんね。
レクター博士の「猟奇的殺人記」みたいにはなって欲しくないですが。
>今後のシリーズ化(←あるならば)に
>何らかの変化はあるのかもしれませんね。
エピソード0みたいなのんに走ってしまってる時点で「ダース・ベイダー路線かよっ!」とその分かり易い戦略にちょっと嫌気のさしてるワタシもおるのですが・・
この映画、観に行こうかどうか、悩んでいるのところです。
私が聞いていた「日本が舞台」というのはたぶん次回作でしょうね。
ってまだ続くんかい!という感じもありますが・・・
今回作で日本(レディ・ムラサキ)との関連を出してきたのは次回作の舞台が日本であることの前振りなのでしょうね。
覚えていますか、前作の最後を?
ハンニバル・レクターがクラリスのかけた手錠から自分の手首を切って脱出したのを。その後の飛行機でのシーンで、東洋人がたくさん乗っていたのを。最後に会話していた子どももたぶん日本人の設定なんでしょうね。
レクター博士は日本に向かっているんでしょうね。そして、今作で出てきたレディ・ムラサキとの再会とか、日本を舞台にした新たな事件とかを絡めて・・・
日本で起こった事件の解決に力を貸し、解決の際に人生を終える・・・
こんな感じ?と勝手に想像しています。
いずれにしても自作で日本をどのように描くかも注目ですね。
>今回作で日本(レディ・ムラサキ)との関連を出してきたのは次回 作の舞台が日本であることの前振りなのでしょうね。
あっ、そうなのですね。迂闊でした、「成る程」ですね、そうかもしれませんね。
でも「解決の際に人生を終える」・・・って、終えて欲しくはないですけれど。
ちろりさんの予想が当たっているなら次回の日本は楽しみです。
それから、ラザニアご馳走様でした。大変美味しゅうございました(^_^)。
ちょっと、本筋から離れるコメントで申し訳ないのですが・・。
ブログコメントありがとうございました!
この手の映画は苦手中の苦手なのですが、
パリジュテームにも出演されているのですね!
惜しくも、私も見逃しました。
前売り券買ってたのにーーーっ!!
『パリ・ジュテーム』、前売りまで買ってらしたんですかっ!?それは残念!!
『オーバーライフ』のちょこっと勘違い、ごめんなさい。でも発売待ってます!(^_^)