2010年06月12日

パーマネント野ばら

 今週は2本の劇場鑑賞。
邦画 『パーマネント野ばら』 (吉田大八監督)と洋画 『クレイジー・ハート』(スコット・クーパー監督)です。

先ずはシネリーブル梅田で鑑賞の『パーマネント野ばら』(吉田大八監督)から感想を述べます。

 「パーマネント」という言葉を聞くと、今は亡き高校時代の生物のA先生を思い出します。
ご高齢で(嘱託の先生だったかな)優しく、真面目を絵に描いたような先生でしたが、ある日の授業のあとでこの「パーマネント」という詞をもじったジョークを(何故か唐突に)発せられたのです。そのジョークは正直言ってお世辞にも笑いの取れる内容のものではなく100%ダジャレの世界だったのですが、我々生徒は何よりも何がA先生にそんなジョークを(しかもいきなり何の脈絡も無く)言わせたのか解せないまま、複雑な笑いを漏らすのみでした。
そのA先生にとっては一世一代とも言えたジョークの場を昨今に至って思い出す時はいつも、懐かしさと共に幾許かの哀しさが伴います。 A先生の遺伝学の授業、とても面白かったです。


・・・さて、映画。

story
  人気漫画家・西原理恵子の同名漫画を映画化した物語。
娘を連れて出戻ったなおこ(菅野美穂)と、その母まさこ(夏木マリ)が営む町に一つの美容室「パーマネント野ばら」。
町の女性たちは日々店に集ってはおしゃべりに興じ、恋にまつわるさまざまな悩みや人には言えない小さなうそを告白していた。一方、なおこは高校時代の恩師カシマ(江口洋介)と恋をしていたが、その恋にもある秘密が隠されていた……。  (※story、写真とも映画情報サイトより転載させて頂きました。)

                野ばら.jpg

 ど〜んと切なさが押し寄せ、そのあとでじんわりと優しさに包まれる。ラストの十数分で、この映画に捕まえられました、私。

ひなびた漁師町、時折遠くに町内放送も聞こえる、そんなのんびりとした生活の匂いの中、パーマネント野ばらに集うおばちゃんたちの日常は喜怒哀楽が入り乱れ色あせることがない。
野ばらで繰り返される「際どい」を通り越したストレート過ぎるドギツイ会話や、なおこの幼なじみ・みっちゃん(小池栄子)やともちゃん(池脇千鶴)のこれでもかというほどの不運な男性遍歴、絵に描いたような男女の諍い事など、これって一体どう収拾を付けるんだろう・・・って思っていたら、あっちこっちに思うがままに放り出されたような感情の全てが、最後の最後でまぁるく“一つ”になったという感じでした。


全く知らなかったよ、分からなかったよ、カシマ先生の秘密。
本当は不安定で、ひっそりと心のある部分を病んでいたなおこ。本当の傷には触れないで見守ってくれていた人たち。
「この町も嫌い。時代に取り残されてて。」なおこのこの言葉、本当は自分自身に向けたものだったのね。それが分かった時、ぎゅーっと胸をつかまれる感じでした。

                野ばら1.jpg

母・まさことなおこ、なおことなおこの娘・もも、二世代に渡る母娘の“向き合い”もきちんと描かれていて、これって男女の恋愛の物語というより、女同士の、そして母娘の情愛の物語だったのじゃないかと感じるのでした。

エンドロールに入る瞬間、ぐっと胸に熱い塊がこみ上げてきました。
哀しいような温かいような、泣きたいような、微笑んで「大丈夫だよ」って言いたいような、映画を観てのこんな感情は久しぶりだったかもしれません。

透明感を感じさせる海辺の映像と、菅野美穂さんの儚げな“薄い笑み”の表情も心に残ります。
そして、みっちゃん役の小池栄子さんはいいですねぇ。確かな存在感と演技力を感じます。そういえば彼女主演の映画『接吻』は未見のままでした。観たいと思っていた作品なのだからこの夏の宿題に加えないと。


                 赤兎馬.JPG

劇中、パーマネント野ばらにみっちゃんが「いいのが手に入ったから」って手に提げて来たのは焼酎の一升瓶でした。
野ばらのママ・まさこやパンチパーマの常連さんたちと興じる恋と人生談議に、焼酎をまさかのストレート呑みで!(氷無かったんかなぁ。グラスじゃなくて湯呑みでの乾杯は流石です。)

私も先日、いただいた芋焼酎<赤兎馬>を。 私はヤワなのでオン・ザ・ロックでいただきました。
まぁるい味わいの美味しい芋焼酎でしたよ。


最後に、本作品の鑑賞のきっかけとなった素敵なレヴューを書いておられた「ゆるりさん」に感謝ぴかぴか(新しい)です。

『クレイジー・ハート』の感想は来週にでもアップメモしたいと思っています。

posted by ぺろんぱ at 20:28| Comment(12) | TrackBack(2) | 日記
この記事へのコメント
こんばんは〜。
今週はお早いレビューUP、しかも2本ご覧になったんですね。なんかノッてますね、ぺろんぱさん!
「クレイジー・ハート」は私も見る予定にしてます。

ぺろんぱさんのレビューを拝見しながら、映画の余韻をまた楽しむ事ができました。
ラストにガツンとくるだけに、これ絶対ネタバレ禁止!の作品やなぁと思いました。
そこだけは死守するべきかな、と意識しながら感想を書いたのは久しぶりです。

土佐人とゆうたら酒豪の印象があるき、みっちゃんが一升瓶を持つ姿は、
なんとも板についとるがよ。←気に入ったので、むりやり土佐弁もどき(^-^;A

ところで、A先生のジョークにとまどうエピソードからは、
ぺろんぱさんのお人柄が垣間見えるようでした。(=^_^=)
Posted by ゆるり at 2010年06月12日 21:56
ばんはです。

ワタシは、と言えば・・
衛星に捕まえられっぱなしな今週でした(=^_^=)

本作、如何にも「女性の作品」って印象がありますが、
男性客としてのみどころってあるのでしょうか?

何だかレビューを拝読するに『うなぎ』みたいな
「時間の流れのゆるやか系」テイストを感じたりもするんですが・・(・ω・)?

高松上陸はあるんかなぁ? うーん。
Posted by TiM3 at 2010年06月13日 01:06
ゆるりさん、コメントとTBをありがとうございます。
もうすぐ土佐弁もお楽しみの一つの『龍馬伝』が始まりますぅ。(*^_^*)
この映画では舞台となってる地域を知らないままだったので、いきなり土佐弁が聞かれたのも嬉しかったです。私もハマっているもので。(*^_^*)

>酒豪の印象があるき、・・・

私も参加!
みっちゃん風に言えば、「土佐の女ちぃ、酒を水で割るなんちゃぁ、できんがよ!」ってとこでしょうか。(*^_^*)

私もこのレヴューは抑えたものの、でもでも、読み返してみれば削除しないといけない2〜3行があるかも!^_^;
でもご覧になった方達と語り合いたくなる作品でしたよね〜。

A先生の思い出は本当に鮮烈に残っているものです。A先生の突然の言動にも驚きましたし、「パーマ」という表現はしても「パーマネント」っていう詞は使う事がなかったですし。「時代」を感じさせる詞ですね。(^^)

『クレイジー・ハート』、ジェフさんがとにかく燻し銀的な魅力を放ってましたよ!


Posted by ぺろんぱ at 2010年06月13日 19:51
TiM3さん、こんばんは。

BS2、熱い日々ですか!?(*^_^*)
私も観ねば!録らねば!と思いつつ、相変わらず「後の祭り」が多いです。

>男性客としてのみどころって

はい。確かに女性が「観たい」と感じるものかもしれませんが、なかなかどうして!主たる男性キャラが4人登場しますが、曲者?揃いで興味深いと言えるかもしれませんよ。それに、野ばらのママの夫役の宇崎さんが劇中で放つ名台詞(迷台詞?)も、是非男性側からの御意見を拝聴してみたいものです。(^^)

>高松上陸はあるんかなぁ

なので、是非「ソレイユ」さんにお願いしてみて下さいませ〜!

『うなぎ』は実は未見なままですが、時間の流れの緩やかさは本作にもありますよ。(*^_^*)
機会がございましたら是非に。
Posted by ぺろんぱ at 2010年06月13日 20:00
ぺろんぱさんも、ゆるりさんも、気に入った映画なんですね。益々観たくなりました。

でもこれも母と子の物語なんでしょうかね、「告白」とは違った意味で。男としては母性というのには憬れのような、得体の知れないような.....つかめません。

そんなことより、この映画は西原さん原作だから、楽しめばいいって感じもしますので、そろそろ観に行きたいなぁ〜♪
(シネリーブル梅田は今週は早朝か夜間しか上映ないし、19日以降は未定ということで、どうしようかと迷っています)
Posted by west32 at 2010年06月13日 22:11
west32さん、こんばんは。

母と娘の物語、に加えて、やはりそれだけではない“誰かを想い慕う心”もきちんと描かれています。なので男性も、自身の思うところは本作に投影できるものかと思います。(^^)

「母性」は、女性が子どもの気持ちに帰って欲する父性を思い描くように、west32さんも自然に母性なるものを思い描かれるとよいのではないかと・・・。

>西原さん原作だから、楽しめばいいって感じも

はい!そうです、お楽しみ下さい!(*^_^*)

リーブル梅田では確かに、タイムスケジュールがタイトになってしまってますね。
もしもお時間があえば、ということで是非に。(*^_^*)

Posted by ぺろんぱ at 2010年06月14日 21:38
ぺろんぱさん、こんにちは。
この意外性、よかったですよねー。
邦画には小説や漫画原作のものがあふれすぎなのは寂しくもありますが、こういうアレンジはエクセレントだなぁと。
小池さんは『接吻』の演技も絶賛されてましたが、わたしはこっちの感じの方が好きかな。

私の地元では、パーマはかけるものだったんですが、関西の友達が、パーマをあてると言ってたことを思い出したり。
Posted by かえる at 2010年06月15日 08:57
かえるさん、こんばんは。

西原さんの漫画は実は殆ど内容を知らなくて、あのビジュアルからしてこういう作品が紡がれるのがある意味「意外」でした。映画の後で、「一度手に取ってみなくては」と思ったものです。

オリジナル脚本での映画作りにはもっともっと向き合いたいところですよねー。
原作モノはどうしたって、作り手も観る側も原作のイメージに誘導されがちですものね。

『接吻』をご覧になっているのですね、私も早く観てみたいです。
映画での小池さんで記憶に新しいのは、「犬に服を着せたいんだわさ〜!!」と叫んでた『パコと・・・』の小池さんです。(*^_^*)あれも凄いキャラでしたね!

そうそう!関西では確かに「パーマをあてる」ってよく言いますね! 方言?観たいなものなのでしょうか??(^^)
Posted by ぺろんぱ at 2010年06月15日 20:02
はろはろ、しげぞうでございます。

高知県でのロケ。
いい雰囲気なところでしたね。
菅野さん、池脇さんの幼な可愛さが満載された
役柄でしたね。
Posted by しげぞう at 2010年07月11日 17:42
しげぞうさん、再びこんばんは、こちらにもようこそです。

ひなびた漁村のまぁるいのんびりした(ちょっと寂しいような)雰囲気がイイ感じで漂っていました。
カンノは儚げな感じがいいですね。
池脇さんも完璧に脇役に徹していらして、小池さん同様、名脇役っぷりなのでした。(*^_^*)





Posted by ぺろんぱ at 2010年07月12日 21:32
夜分にお邪魔します。

“ソレイユ”で観て参りました。
ぺろんぱさんの予言(?)どおり(の劇場)でしたね(=^_^=)

オチはともかく、江口さんのキャラが良かったですね。

幸いにも(=^_^=)四国エリア在住ですし、機会あらば
『野ばら』ツアーに繰り出してみたいモノです。

追記:しっかしパンチおばさま衆の「※※※」の連発にはぶっとびましたわ(⌒〜⌒ι)
Posted by TiM3 at 2010年09月23日 02:08
TiM3さん、こんばんは。
先ほど貴ブログにお邪魔して来ました。

ソレイユさん、素敵です!(*^_^*)

江口さんは「この役は江口さんでないといけない」と思わせてしまうようなところがありますね。

『野ばら』ツアーですか、よいですね!
もしも叶った際には記事にしてくださいね。(*^_^*)
私は「灯台」ツアーに出かけたいなぁと思った今夕です。

>追記:しっかしパンチおばさま衆の

映画館とかで隣に居合わせると迫力に圧倒されそうな感じです。
Posted by ぺろんぱ at 2010年09月23日 22:01
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Excerpt: 監督: 吉田大八 原作: 西原理恵子 (2010年 日本) 公式サイト(音が出ます!) 【ストーリー】 娘を連れて出戻ったなおこ(菅野美穂...
Weblog: ゆるり鑑賞 Yururi kansho
Tracked: 2010-06-12 21:57

映画「パーマネント野ばら」を観た感想
Excerpt: ★★★女たちのスッタモンダが延々と描かれて、肝心の、なおこのストーリーが横に行っちゃった。だから、それで? 状態。ウルウルは来た。その気持ちもわかる。女の子だもん。でもだからって納得はしないよ。
Weblog: 映画初日鑑賞妻
Tracked: 2010-06-19 02:32