1985年に群馬県御巣鷹山で起きた日航機墜落事故をめぐる地元の新聞記者たちの姿を描くドラマで、実際に記者として事故の取材に当たった作家の横山秀夫氏原作の同名小説が映画化されたものです。
story
1985年8月12日、乗員乗客524名を乗せた日航機123便が、群馬と長野の県境に墜落、その一報が北関東新聞社に入る。編集部では一匹狼の遊軍記者・悠木和雅(堤真一)が全権デスクに任命され、未曽有の大事故を報道する紙面作り―闘いの日々が幕を開けた。さっそく悠木は県警キャップの佐山(堺雅人)らを事故現場へ向かわせる。そんな時、販売部の同僚で無二の親友・安西(高嶋政宏)がクモ膜下出血で倒れたとの知らせが届く…。 (※story、写真とも映画情報サイトより転載させて頂きました。)

未曾有の「大事故」を、記事として対峙する“新聞社サイドの視点”で描いたものと感じました。
新聞社という組織が内包する問題、一平卒としての記者やカメラマンの意地とプライド、事件や事故をあくまで「記事にする者」の立場で見ようとする姿勢とそれによって起こる様々な葛藤、この大事故の記事をめぐり自己・他者との闘いが其々の私生活のドラマをも巻き込んで様々に渦巻き、食い入るように観てしまった145分でした。
事故の惨状は(敢えてと思われますが)映像としてはさほど描かれておらず、経年後とある「山」の頂を目指すことになる悠木の登攀姿も、クライミングそのものへの苦闘は緊迫感はあるものの鬼気を孕んだような死闘として前面に出して描かれてはおらず、やはり本作の中心は“新聞社内に生きる人間たちのドラマ”に置かれていたのだなぁと思ったのです。
しかし、映画としての感想は横に置いておいて(興味深く鑑賞しましたよ、勿論)、観終わった後で一番心に留まったことを此処に書きとめておきたいと思います。
それは、事故でも事件でも、思いもよらなかった人々の運命まで狂わせてしまうことがあるのだということです。
当事者(被害者、事件の場合は加害者も含め)以外に、何らかの形でその出来事に少なからず関わらざるを得なかった人、事後の報道で名前さえ挙げられることのなかった、表面的にはその出来事と接点を見つけることさえ困難であると思われた人々も、その出来事をきっかけとして自らの運命を大きく狂わされることになってしまうことが時としてあったのだ、と。
阪神淡路大震災では間近にそういった人々を見ることがありましたし、地下鉄サリン事件では『アンダーグラウンド』『いつか約束された場所で』等の書を通じ、事件のもたらす目に見えない陰のようなものが徐々に人々の身体を侵食していく怖さのようなものを感じたのでした。もっと押し並べて言えば過去における全ての戦争、全ての天災、全ての事件事故のもたらしたものも然り、なのですよね。

本作で表立って描かれていたのは某カメラマンの男性でした。
事故に(間接的に)関わり、運命の歯車を狂わせた彼。もっともっと直接的なところで関わりながら辛うじて自己の足下を見据え踏み留まることの出来た人間とそうでない人間とが存在したことを考えた時、ふと「生かされること」に付いて考えさせられてしまったのでした。
さて、映画の話に戻りますと、この日航機墜落事故はいまだ原因の再究明を求める声が高いそうです。
“一応の”原因究明は完了したという形を取っているものの、不可解な思いは当事者や遺族の方々の心に今なお残り続けているのですね。
一見華やかにスクープをすっぱ抜いて「事故原因」を書き立てる姿勢と、“確実で揺るぎない”事実を伝えることに(最終的に)徹した姿勢と、どちらもジャーナリストとしての一分があるのだとは思うのですが、悠木の下した決断を私個人は是と感じました。
主演の堤真一さんや堺雅人もさることながら、私は本作での遠藤憲一さんがとてもよかったです。
Mriちゃん、DVDをありがとうね。


生かされているからこその、この一杯。
生きていての、美酒美肴、この日の美味しい和酒に感謝です。
日航123便の事故に関しては、まだまだ解明が必要なことありますね。私は今「沈まぬ太陽」を読んでいますが、ここでも疑問の数々、痛ましい状況と共に描かれています。この事故で運命を狂わされた人、いったい何人いただろうか、そして今もと考えると、心が痛むものがあります。
緊迫したすごい作品でしたね!^^
この映画で堺くんを知り、堤さんを絵になる男と認めた一作でした。
トボけた演技から、こういうシリアスなものまでほんとうに上手いです。
west32さんと同じく『孤高のメス』では堤さんにググッと来たものです^^;
遠藤さんと堤さんの対峙はなかなかよかったです。
ふたりとも長身なので画面が映えます^^
できれば報道ドキュメンタリー部分だけで良かったのにと思ったワタシです^^;
堤さん、西宮ご出身だったのですか!
関西人とは知っていたのですが西宮だったとは。
神戸から近し!(里帰りされないんでしょうか・・・)
NHKの番組で「お母さんがめちゃ“オモロイ”人」だとご本人が仰っていましたよ。(*^_^*)
私は初め堤さんを、「軽い」イメージが先行してどちらかといえばあまり好きではなかったのですが、最近は観る度に高感度が“徐々アップ↑”状態です。
「沈まぬ太陽」。
そうですね、これもこの日航機事故を題材にしたものでしたよね、映画も未見なのですが。
事故や事件の後遺症って多分本人にしか分からないところはあると思うのですよね。その症状も千差万別だと思われますし。
「沈まぬ太陽」、この先いつか読んでみたいです。
リメンバー、御巣鷹山。(これも違いますね、^_^;)
いえいえ、でもこの御巣鷹山の事故は忘れてはならないことなのですものね。
そして本作では本当に「御巣鷹山ノボレ」の電文が発せられたかのような世界でしたもの。
>報道ドキュメンタリー部分だけで
私も親友・安西との関係や離れて暮らす息子との関係など、其処にぐぐっと迫りくるものが若干もの足りなく難じたのでした。
それにしても『孤高のメス』、各ブログで高評価ですね〜。
堤さんには、私、『容疑者Xの献身』で引力を感じましたよ。
遠藤さんも清濁・善悪を演じ分けられる上手い役者さんと拝察いたしておりまする〜。(*^_^*)
本作はTV放送で中盤からか、観た覚えがあります。
デスクの人々がアツくぶつかっていた(激論を交していた)シーンが
おぼろげによみがえります。
ワタシの中では、この事故はまだまだ生々しく思い出される
記憶ではあります。
逆に「生存者のドラマ」も観てみたいのですが、
これまでに製作されているのでしょうかね・・(・ω・)
確かTV放送もされていたのでしたっけね、私は見逃していましたが。
>アツくぶつかっていた
はい、北関の社内はアツかったです〜。(^^)
この事故は「御巣鷹山」という名とともに忘れることはないでしょうね、ずっと。
「生存者のドラマ」は映画やドラマとしては無いみたいですね。何らかの特集番組みたいなものの中で生存者の方々の姿を追ったものはあったのかも知れませんが。
生存された方々にも我々の想像を超えた数々の苦悩があったのでしょうね、きっと。
この映画、俺は大好きでDVD持ってます(笑)
>やはり本作の中心は“新聞社内に
確かにそうですね。会社内の軋轢や力関係は、自分の周りの世界にも通じる部分があるし、すごくダイナミックでドラマティックに描いているので、ぐいぐい引き込まれていましたが、悲劇の真相を正視しているとはいえないですね。そういう点だと「沈まぬ太陽」とは違って見えます。
>悠木の下した決断
”チェック。ダブルチェック。”ですねw
読者にジャーナリストとして真っ当な有意義な情報を伝えるという気概が、あの決断には漲っていますね。ビジネスマンではなくジャーナリストの悠木でした。
>遠藤憲一さんがとてもよかったです
良かったですねw特に悠木などと画策するところは最高でした☆
おお!DVDをお持ちの本作なのですね〜。(*^_^*)
『沈まぬ太陽』も御鑑賞のようですね。
機会があれば観てみたいと思います。
>真っ当な有意義な情報を
そうですよね。
正しい情報を伝えてこそ、の報道なのではないかと。
その“(動物的)勘”を率直に伝えた佐山(堺さん)も真のプロやと思いました。
遠藤憲一さん、声もシブいですよね。
名脇役だと拝察しております。(*^_^*)
「クライマーズハイ」
横山秀夫の原作、映画、ドラマ(佐藤浩市主演)と読み、観しました。
原作>DVD>映画
というのが私の感想です。
題名を聞いた時、みんな登山の話だと思いましたよね。
その後、日航機事故の取材小説なのか?とも
ぺろんぱさんのおっしゃる通りこれは、
"「大事故」を、記事として対峙する“新聞社サイドの視点”で描いたもの"
です。
もしかすると、日航機事故でなくても良かったのかもしれないという気さえします。
大スクープを前にした時、ジャーナリストはいかに高揚を押さえ、冷静に、裏付けに基づいた事実を客観的に発信出来るか。
登山頂上寸前の"クライマーズハイ"と、この高揚が同じ感覚だというのが題名の由来なんですよね。
「やめる勇気」
時に、それは前に進むよりずっと辛く苦しい決断なんだ。
その決断が、誤報となるかスクープとなるかは紙一重?結果論?
他社に抜かれて腰抜け呼ばわりされても、主人公は正しい決断をした!
そう思います。
この作品で、身内のことを素直に労いたいなと・・・(^^;
そうですか、比するに「原作」が一番なのですね。「山」は初心者の段階で(膝の具合で)中座してしまってる私ですが、原作、読んでみたくなりました。
>もしかすると、日航機事故でなくても良かったのかもしれないと
実は私も、まさしくソレと同じことを感じたのでした。
>登山頂上寸前の"クライマーズハイ"と、この高揚が同じ感覚
そうなのですよね。
だからこそ、親友・安西との絡みも含め、もっと「山」に挑むシーンを力感込めて描いて欲しかったのですよね。
主人公の決断、彼の生い立ちや様々な思い出が結集してのソレだったと思います。私も「是」としたいです。
karcyさんのお身内の日々体験しておられる苦悩、その結果として我々が得る日々の幾多の情報があるのだと思います。感謝の意と共に益々の御活躍を念じております。(*^_^*)