原題は『2:37』で、これは事件の起った時間なのですが、この邦タイトルは実に奥が深いです。
明日、君が、いない。
「キミ」が死んで、初めて「キミ」の存在を振り返る・・・でももうそこには「キミ」はいない、明日から永遠に「キミ」はいない。・・・・・そんな意味があるように感じました。

story
(2006年カンヌ国際映画祭をはじめ各地で絶賛された、オーストラリアの新鋭ムラーリ・K・タルリの初監督作。タルリ監督は友人の自殺や自身の自殺未遂経験を基に、映画製作の知識もないまま19歳で脚本を書き上げ、2年の歳月をかけて完成させた。)
成績優秀なマーカス(フランク・スウィート)と妹メロディ(テレサ・パルマー)など、一見悩みとは無縁そうに見える6人の高校生たち。
しかし、時間が経つにつれ、それぞれが誰にも言えない悩みや問題を抱え、今にも押し潰されそうになっている現実が明らかになってゆく。そして、午後2:37、1人の生徒が自殺を図り……。 (シネマトゥデイより)
※いつも以上にネタバレです。観に行かれる方はご注意ください。
人の心の闇は計り知れないものですね。ブラックホールみたいに。
其々に悩みを抱えて生きる若者達。学校という「自由の名のもとの閉鎖的な世界」で、彼らの悩みは次第に接点を見せ始めます。
全くの「個」であり得たなら悲劇は起きなかったかもしれないけれど、生きていく上で他者と関わっていくなら、それは不可能なことなのでしょうね。

人間にとっての不幸?悩み?には二通りあるように私は思います。
人に語ることで自分を慰めることのできる類のものと、語ること自体が地獄であり、自分一人で墓場まで持って行かねばならないようなものと。
作品の予備知識として誰か一人が自ら命を絶つということだけが分かっていたから、誰の悩みが本当に命と引き換えにすべきほどのものなのか、知らず知らずのうちに見定めようとしている自分がどこかにいました。
でも「私」という人間の視点で他者の苦しみの度合いを判断するなんてことは決してできないのですね。
そしてその通りの、私のその不遜さに天啓を下すかのような、ある一人の生徒の死。
何となく物語が終盤にさしかかる中、ざわざわと心に波打つものを感じ始めていたのはこれだったのか、と思いました。

語られることのなかった死。“語られなかった”ことこそが彼女の死。良くも悪くも、誰にも関われなかった、誰とも上手くコミットできなかった彼女の孤独。
そんな彼女の孤独は、周りのクラスメートがすくい取れるどころか、多分彼女自身すらもはっきり自覚できていなかった不確かなものだったのでしょう。殆ど衝動的とも撮れるその行為に、最も多感且つ最も危うい年代の怖さを感じました。
「語られることのなかった彼女」と書きましたが、エンディング直前になって、笑いながら家族のことを話す彼女がアップになります。
この時初めて彼女の名前がスクリーンに映し出されます。死して初めて、我々観客も彼女の名を知ったのです。
この監督の、この作り方の巧さ。その巧さが同時にもの凄く悲しく、辛く、心に痛いラストを作り上げています。
幸せそうに笑う彼女と、床の上で血に染まった彼女と・・・その映像の対比に、エンドロールが涙で滲むラストでした。
タイミングがちょっと違ったら、その中の誰もが死者となっても不思議はなかった彼ら。
個人的感覚では、救われゆく今後であって欲しいと願わずにはいられないスティーヴンとメロディー。

彼らの其々の言葉が印象に残っているのでここに記します。
スティーヴン>「家族を愛している。愛しているからイジメのことは言えない。」
その彼が「友達だった」と言った彼女の死が、尚一層、悼まれます。
メロディー>「彼女(自殺した女の子)はラッキーだった。」
メロディーは死ぬ機会すらつかめなかったということでしょうか。だとしたら、こんな絶望的な言葉はありません。
死ぬまで消えない大きな傷だと思うけれど、どうか救われゆく今後の人生であって欲しいです。
テアトル梅田を出ると初夏の陽射しが・・・。
でも何だか温かい飲み物が欲しくなりました。
帰り道のカフェテリアで熱いコーヒーを飲みながら、それでも尚、映画の幾つかの痛々しいシーンは消えることはなかったです。
別(もう一方)のシアターで某邦画を観てました。
ソフィア・コーポラ監督の描いた某姉妹系作品を連想しちゃいますね。
私的には、
「学生時代に死んでしまった同級生」の方が
「学生時代に“こいつはスゴい”と、その将来を羨んでいた・・がその後さっぱり消息を聞かない同級生」
よりよほど「記憶の中で輝いて」思えたりしますね。
「記録ではなく記憶に残る生き方」ってなんなのでしょうね。ふーむ・・
誰かの記憶の中で輝き続けるって素敵なことですね。また、そういう記憶を持てるその人自身も。
記憶を失うことは往々にしてありますが・・・。って、これは今回のブログのことです(苦笑)。
今年もよろしくお願いします☆
去年見た映画でこの映画が一番衝撃的でした。
大学のときに、この映画のような形で大切な友人を亡くしたことがあります。俺が作った映画を初めて褒めてくれた友人でした。
見ているうちに居た堪れない気持ちになって出て行こうっておもったけど我慢しました。
でも、見た後はみて本当に良かったと心から思いました。DVDも買おうと思っています。
俺にとっては一人でも多くの人に見て欲しい映画です。
今年もどうぞ宜しくお願い致します。
そのご友人はdkさんの心に今も深く残っているという点で、生前の様々な事に対して満たされなかった思いが少しは癒されていると信じたいです。
“その時の、その人にとっての”大切なかけがえのない作品というものが存在するのですね。
dkさんの初めて制作されたと仰るその映画、
観てみたいものです。
作品名の検索で飛んで来ました。
よろしくお願いします。
痛みのように後を引く作品でしたね。
到底他人事ではありませんが、かと言って何ができるか…という難しさも同時にあって、
現実の厳しさが身に染みました。
監督の年齢も衝撃でした。
TBさせて頂きました。
現実の厳しさ・・・、そうですよね、生きるというのは「闘うこと」だと・・・そういうの、理解云々以前になんだか辛いですね。
TBもありがとうございました。早速お伺いいたします。