この週末封切りの「観に行きたい作品」は2本。
1本は来週のお楽しみにとっておいて、先ずはこちらから。『ぼくのエリ 200歳の少女』(トーマス・アルフレッドソン監督)をテアトル梅田で鑑賞しました。
オスカー liebe ヴァンパイア。
story
スウェーデンのスティーヴン・キングこと、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストのベストセラー小説を映画化。
ストックホルム郊外で母親と暮らす12歳のオスカー(カーレ・ヘーデブラント)は、学校で同級生にいじめられていた。ある晩、彼はアパートの隣の部屋に引っ越して来たエリ(リーナ・レアンデション)という少女と出会う。同じころ、近くの街では青年が逆さづりにされてノドを切り裂かれ、血を抜き取られるという残忍な殺人事件が起きる。(※story、写真とも映画情報サイトより転載させて頂きました。)

エリを巡る二人の男性。エリと共に引っ越してきた初老の男性と、まだ12歳の少年オスカー。
初老のその男性が辿ってきたであろう人生と、オスカーがこれから辿ろうとするであろう人生、その二つが重なり言い様のない寂寥が胸を覆う。
彼らにとってはそれが愛する幸せ(愛する対象がいることの幸せ)? でも、それは永遠に“後戻りすることは叶わない”運命。
その寂寥感や孤独感、哀切感といったものの中に、この映画は美しく甘美な匂いを密やかに漂わせていた。
冷ややかな感触を伴う美しく澄んだ映像。
時折生々しい凄惨なショットが挿入されるたびエリがヴァンパイアであるという避けられない現実を思い知るのだけど、ささやくようなオスカーとエリの会話には、北欧の静謐な空気感の中で交わされる夢見心地のような淡い恋模様を感じるのだった。
エリとオスカー。共に孤独であった二人。
負の要因が結びつける絆は深いのだろう。
終盤、プールでの衝撃のシーンのあとで見せたオスカーの表情が、「守り守られるのは彼女ただ一人」と知る瞬間を感じさせてくれた。
少年オスカーの選択。「ある意味(オスカーさえも)陽の光を存分に浴びることのできない」これからの二人の運命にずしりと重いものをを感じながらも、溢れ出る二人の、二人だけの安寧感に至高の愛の形を見た気がした。

・・・・・鑑賞後に知ったこと、これも大きな衝撃だった。
ぼかしの入っていたワンショット、(原作では)あそこに大きな秘密が隠されていたということ。そこには無残な傷跡が映されていたのだということ。
何故エリは「女の子じゃなくても好きになってくれるの?」と何度も何度も尋ねていたのか。(200歳ということを超えて、「女の子」という表現に何故かこだわりを感じていた。)
オスカーの父親とその友人、事件で犠牲者となった男性とその親友の男性、ハッキリとではないがそこはかとなく男性同士の愛の存在が匂わされていたのは何らかの意図があったのではないか?
映画を観ていた時に感じたそれらの疑問がすうっと溶けていった瞬間だった。と同時にオスカーの愛がより一層深いものに感じられ、エリの運命にもより一層多くの謎を残したのだった。
是非原作を読んでみたいと思う今です。
エンディングの背景の色調がすっと変わる瞬間があり、それはふっと、彼ら二人の運命に思いを馳せた瞬間でもあった。


さてさて、200年もの歴史ではないでしょうけれど古い歴史を持つと言われている、日本酒好きの人は皆さんよく御存知の中崎町の稲田酒店さんでのワンショットです。
ずらっと並べられた日本酒の瓶(勿論既に空いたものです)にも「長きに渡る来し方」を感じますね。
写真のお酒は<琵琶のさざ波・純米吟醸無濾過>です。
・・・オスカー役のカーレ・ヘーデブラント、透き通るような美しさでした。

そうなんですよね〜、離婚した父親に貼りつくような男性の存在に、
やはり何かを感じてますます孤独を深めたオスカー。。。
彼はあのエリに自らの命を捧げた男になるのか、
それとも、、、自ら我が身を焼いてヒトであることを選んだ女性のように?エリのように?
エリのヒミツは、最後に聞きただした時に、おそらく、、という気がしました。
生々しい孤独のあとの不思議に安堵した(脱力した?)余韻の残る作品でしたね。
原作を先に読もうか?それとも映画を観てから?と悩んでいます。原作は文庫本二冊でかなりボリュームがありますし、映画がどれだけの期間上映してくれているかなんか不安もありますし....
永遠の命のバンパイヤと限られた命の人間、その間の愛?恋?ってやっぱり、時間軸が違うので続かないですね。人間は滅びていくけど、バンパイヤはどう思っているのかな?それが描かれているのでしょうか?知りたいけど、知ったらネタばれになって、折角の映画も、本ももったいないし、困りました。
ハイ♪是非とも早く映画をみて本を読むことにします。
遠い空の下で、指をくわえて待つこととします・・200年・・
(ミイラになってるかも(⌒〜⌒ι))
確かkiraさんもご覧になってたんですよね!
早速後ほど伺います。TBもありがとうございましたぁ!(*^_^*)
オスカー君は学校以外でも結構辛い思いをしてきたんですよね。
父親の友人という男性の登場時、彼の表情が凄く痛々しく歪んでいましたね。
私はあの初老の男性のように献身的に尽くし守ろうとするオスカーになるのだろうと感じました。でもそうだとしたら、遠い将来、オスカーを失ったエリは今度はどうするのかなぁ・・・なんて考え込んだりしてしまいます。
そうそう。kiraさんの仰る通り、不思議と観ている私も安堵感を感じたのです。余韻が残りますね、優しいモールス信号の響きとともに。
はい、これは封切り初日に観に行こうと決めていました。(^^)
(もう一つのんが来週までお預けになっちゃいましたけど)
原作は2冊にわたるのですね!知らなかった。
鑑賞の余韻が残存しているうちに読みたいところですが・・・読めるんだろうか(自問)。
>時間軸が違うので
やがて決定的な違いを思い知ることになるかもしれませんね。
二人がその時の到来を感じていても、今はそれを超えての絆が芽生えているのかなぁと思えるのです。
ハイ♪ west32さんも是非映画をご覧になってみてください。
レヴューを楽しみにしています。
200年後は私もミイラになってます。^_^;
ソレイユさん系の作品だと思うので、上映して頂けると私も何だか嬉しいです。
本作、猫がヴァンパイアの血を感知する能力があるようでしたが、猫と暮せている私は一応今はヴァンパイアじゃないんだなぁと安心しました。(他の自覚症状もございません、念の為。)^_^;
できれば、この猛暑の時に涼を取る意味で
秋までに観られたら最高なんですけどね^^;
なにやら終盤で意味深な展開がありそうですね。
ちょっと、期待しちゃいます^^
名古屋でのこういうアート系の映画は、公開が関西より先だったり後だったりするのですね。そちらでは秋頃の公開でしょうか?(^^)
この作品は真っ白な感じで臨んで頂くのがよいかと思います・・・・って、既にいろいろとレヴューに書いちゃいましたけど^_^; 。
でも具体的なところはスクリーンで感じて頂けたらなぁって思います。
取り敢えず期待は極小に留めておいて頂いて、リアリティを超えた別ステージでの感覚を味わってくださいませね。
もしもご覧になられましたらレヴューを楽しみにしています。(*^_^*)
性別を超えた美しさやなぁと感じたのは「ベニスに死す」の少年役
ビョルン・アンドレセン以来かもしれません。
彼の弱弱しい雰囲気と態度に、だからいじめられるんやん!と
ちょっとヤキモキしてしまいました。
対照的やったんが、エリ役の少女です。北欧の人にしては浅黒い肌と真っ黒な髪。
少女のようでもあり、時に老練な様子も感じられる不思議な容姿やなぁと感じていました。
それでも、性別を超えた存在という点ではオスカーと共通してますね。
「フローズン・リバー」の時も思いましたが、映像から伝わってくるこの寒さ、
欠かせないですね。
>「ベニスに死す」の少年役
そうそう、そうですね!彼と同じ匂いがしました!
“ザ・北欧”と仰るのもその通りだと思います。(*^_^*)
エリはエイキゾチックですよね、風貌も雰囲気も。今原作を読んでるのですが、今のところエリの描写はそのままですがオスカーには映画以上の痛々しさを伴ってる感じを受けます。
この先を読むのが、楽しみでもあり怖くもあります。
映像が醸す空気の「冷気」は、やはり北欧ならではのものを感じました。
この冷気は、仰る通り欠かせないものですよね。
ホラー的な要素は含みつつ、「美しい」という言葉を抜きには語れない作品でした。
バンパイヤモノとして素晴らしい映画ですね。ハリウッドとは違ったもの悲しい初恋物語でした。
> エリを巡る二人の男性。・・・二つが重なり言い様のない寂寥が胸を覆う。
最後のシーンは確かにオスカーの続くような生活の始まりでしたね。でも箱の中と外との最後のあのモールス印象的でした。
> エンディングの背景の色調がすっと変わる瞬間
これってエンジっぽい色のことでしょうか?雪の舞い散るバックから黒っぽいエンジの色が鈍く光っていましたが。違う??
このぺろんぱさんの言葉とゆるりさんの言葉で、思わず今日観てきましたが、感謝しています。ありがとうございました。
ぺろんぱさんは、いま原作を読んでおられるんですね。私も読みたいなぁと思いつつ....まずはぺろんぱさんの書評をお待ちしています。
>ハリウッドとは違った
ハリウッドでのリメイクについては、上に向かって強烈に放出される感じと、下に深く掘り下げられる感じと、そういう違いは生じるかもしれませんね。後者が本作のイメージで。勿論、一概には言えないのでしょうけれど。
ラストは「今後の二人」に思いを馳せさせますね。
背景の色のことは、そうです、黒っぽいエンジ色に変わった瞬間のことです。
まさしく、エリの命の糧の色そのものでもあり、二人の心に生命の色・温かい感情なるものが芽生えたと感じられた瞬間を思わせたからです。
ありがとうだなんて書いて下さって恐縮です。
こちらこそありがとうございます。(*^_^*)
原作は、通勤電車の中だけで読んでいますので未だ上巻の後半です。^_^;
west32さんの方が読了が早いかも。
なかなか綺麗な画と静かに進行する物語が好みでした。
プールでの秒殺シーンは凄かったですね。
あんなふうに見せない演出も想像をかき立てられて良かったです。
例のラストのエリの問題(ぼかし)シーンは気になりますね〜^^;
ヨーロッパの映画っていう空気が感じられましたよね。
プールでのシーンは、何となく何が起こってるか分かっているつもりでも、あの“どぼんっ”て感じで水中に姿を見せたものには衝撃で椅子からちょびっと浮いたかも!です。^^;
>エリの問題(ぼかし)シーン
あれは映画と、映画の後で知ったネット上からの知識と、原作とで三者とも違いがありました。
しかし映画でのソレは根本的に原作とは違う意味のボカシと感じられて、もう少し何とか(ボカシの入れ方の手法自体もね)ならなかったのかと思いました。