「全作品日本初公開」とされる本展です。

館内に何点か掲げられていた晩年のユトリロのポートレート。
ちょっとシャイにはにかんだその表情が柔和で、幸せの匂いさえ感じ取れたのにはちょっと意外でした。というのも、彼の生い立ちは決して安寧なものではなく、10代のころからアルコール依存症に陥っていたということは広く知られていることだったからです。(彼はその為に精神病院への入院を余儀なくされ、退院後にその対症療法として主治医から絵を描くことを勧められたといいます。画家になったのは、勿論彼の母親が画家であったことも素地としてあったとは思いますけれど。)
ポートレートから受けた柔らかな印象。
ユトリロの人生は、大好きな絵を描き続けられたということで(そしてかなり早い時期から世間にその才を認められていた、ということで)、凡人の私の浅薄な想像を遥かに超えて芸術家として至高のものだったのかもしれないなと、ふとそんなことを感じたのでした。
とはいえ、彼の「孤独」を支えたものが「絵」と「アルコール」と、晩年は「祈り」であった(館内掲出の解説より)ということを思うと、壮絶な日々がその穏やかな表情の裏に刻まれていたことは否めないでしょうね。

とりわけその孤独の陰を色濃く感じる「白の時代」の作品群は、一見寒々しくも静謐な祈りのようなものも感じ取れて不思議な余韻を残しました。
「色彩の時代」と称される頃に描かれた作品も、ハッとするほど明るく温かみを帯びた感じのものがあって眺めるには心地よいものばかりでしたが、ユトリロというとやっぱり私は先述の「白」を基調とした作品を思い描いてしまいます。
その「白」も、館内掲出の解説によれば白の絵の具に漆喰を混ぜ合わせて彼が独自の「ユトリロの白」を作りだしていたそうです。微かに、ほんの少しだけ、灰色見を帯びたような深い感じの白色に見える?のはそのせいなのでしょうか??
意外と空いていて、短いながら独りでゆっくりと過ごせた佳き時間でした。
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館内に披露されていた幾つかのエピソードから。
彼の絵が世間に認められ始めたころでも、“名誉より一杯の安酒”に自身の拠りどころを求めていたユトリロは、手っ取り早く作品を二束三文で売り飛ばし、一杯の赤ワインを手にしていたらしいです。
それから、有名になっても再三お酒に溺れて問題を起こし警察に収監されていたらしいのですが、そのたびに看守が彼に絵を描かせ、それをストックして結果的に結構なコレクターになった看守もいたそうです。
案外ユトリロって誰からも親しみを持たれる“天然のひと”であったのかもしれませんね。

私は偉大な芸術家じゃなくてただの凡人ですが、一杯のお酒を拠りどころとすることもしばしば。
ゆったりした気分で絵画鑑賞良いですね、久々に絵もみに行きたいです。
> 案外ユトリロって誰からも親しみを持たれる“天然のひと”であったのかもしれませんね。
へぇ、そうなんですか!!
自分にも誰にも素直な人だったんですね。
うん、うん、是非とも行って見たいです。
PS 絵画といえばインドでちょっとした個展
絵画を見ました。デリーの地図を下敷きにして牛の絵や車の絵をもじった絵でした。モダンで♪
今更のようにブログに書けるようにもう少し良く調べてたらよかったと残念です。
京都の美術館「えき」は、JRから直ぐなので結構ロケーション便利です。
どこかへの移動の際にも立ち寄れる程度の広すぎないキャパなので、いい作品が展覧される時には行こうかなって思っています。
「天然の人」っていうのは勝手な私の想像です。やはり壮絶な人生があって、その上での「(何ものにも)期さない」的な諦観が穏やかな表情を作っていたのかも。
本展は10月17日まで開催されていますよ。
インドでの個展、どんな絵か興味があります。
地図を下敷きにして??
面白そうですね。(*^_^*)