赤をメインカラーにサイケな色彩がまるで女たちの息遣いのようにスクリーンを彩り、登場する女たちや我々観る側の女たちをも、時に笑わせ、時に悩み悲しませ、喜びに泣かせ、そしてジンワリと温もりで包んでくれる・・・そんな作品でした。
女たち、流した血から、花咲かす(映画キャッチコピーより)

story
スペインの太陽のように情熱的な女性ライムンダ(ペネロペ・クルス)に、突然二つの死が降りかかる。
娘のパウラが父を刺し殺してしまったのだ。娘を守るため、夫の死体を自分が働くレストランの冷蔵庫に隠すライムンダ。しかし何故か急にレストランは大繁盛。片隅に置かれた冷蔵庫を気にしつつも、忙しい日々が続く。
そんな中、彼女の耳に故郷ラ・マンチャで死んだはずの母イレネ(カルメン・マウラ)の姿を見たという噂が飛び込んでくる。
生き返ったのか、幽霊なのか、今、もう一度母と語り合いたい・・・。しかし、ついに彼女の前に現われた母にはもっと衝撃的な秘密があった。(映画チラシより)
これはライムンダの物語であると同時に母親イレネの物語だと感じました。
ラストシーンのイレネの後姿を見ながら、彼女の“これから”の残りの人生にエールを送りたい気持ちで一杯になりました。
ごく普通の小さな田舎町で生きてきた彼女にとって、ある出来事をきっかけにしたその後の、何と壮絶な人生であったことか・・・。
そしてさらに娘ライムンダがひた隠しにしてきたある事実を知るに至っては、どれほど自分を責め続けたことか・・・。
この一連の謎が解ける辺りは、本当に衝撃です。ここまでの重苦しい内容をよくあそこまで陰湿にならずに描き切ったものだと、本当に伝えたかったテーマをブレさせることのなかった監督の手腕に改めて感服です。

母、娘達、孫娘、叔母、同郷の友人、みな其々に思い悩むことがあって、それでも歯を食いしばって前を向いて歩いている・・・女って凄い生き物なのですね。残酷で、バッサリと何かを切り捨てる非情さもありながら、絆ある者はとことん守ろうとする強さ(優しさ)があって・・・。
笑顔の下に女の“業(ゴウ)”を隠し、涙を流した分だけ綺麗に、しなやかになる・・・。
凄い女たち。強さ、優しさ、美しさ、それらは皆、表裏一体のものなのですね。

母と娘の確執とそれが裏返っての絆の深さには、まさに「帰郷する」が如く、母の胎内への回帰願望に似た甘美な感覚を覚えます。
いろんな「帰郷」がこの作品には描かれていました。
母への、娘への、生まれ故郷への、自らが愛した場所への、何も知らなかった幸せな昔への、そして生きていくこれからの現実への、
いろいろな「帰郷」。
どこにより強く感じるかは見る人次第だと思います。
私は最後の一連のシーンに、「“許す”という強さ」を感じて深く静かに感動しました。
それは女同士、いえ、孤独に生きてきた人間同士の情への帰郷と言えないこともないですね。
この監督の作品は観るのが(多分)三作品目ですが、一番好き、かな。

試写会の翌日、暫くお伺いできていなかったJazz Bar Wishy−Washyへ足を運びました。
ここのママさんもしなやかに生きていらっしゃる女性です。
私的定番のダイナマイトカクテル<ウィッシーウォッシー>をいただいた後、ママさん手作りの<アイリッシュ・サワーブレッド>と
ギネスビールを。
アイリッシュな組み合わせの妙?? いえ、恥ずかしながら実は偶然の産物でした。


久し振りのギネス。ほろ苦さとビターなコクが他のビールとは一線を画しますね。時々、無性に飲みたくなります。
お手製のアイリッシュ・サワーブレッドは添えられたクリームチーズを塗って。これ、絶品の美味しさでした。
こんがり焼き上げられた香につい手を伸ばしていたら写真を撮っていなかったことに気付き、途中でカシャリ。(手を付けた後の絵ですみません。)
悲しみがあって強くなれる・・・強いから人に優しくできる。
私には悲しみはあっても強さはないような気がするなぁ・・・・・・・・・・深い溜息。
お酒だけにはあった積もりの強さも今は・・・・・・・・・・二日酔いの溜息。
いつもぺろんぱ様のブログを拝見させてもらって、すっかり映画を観た気持ちにさせてもらっていますよー
ペドロ・アルモドバル監督の作品は重いけどワリと好きですねー。
充分オトナになってるはずなんだけど、誰でも自分が思っているほど強い人間にはなっていないみたいですよーそして、なんだかお酒も同じく弱くなります。まぁ、味は昔よりわかるようになったって事でよろしいんじゃないかと思いますが…
>誰でも自分が思っているほど強い人間にはなっていないみたいですよ
そうですね、そうかもしれませんね。皆同じなんですね。
前をむいて生きて、前をむいて飲み続けていきます!
ところで(この場を借りて)例の神々しいバター、見つけました!ありがとうございました(^_^)。
>残酷で、バッサリと何かを切り捨てる非情さもありながら、
まさに。それが強さですね。
>いろんな「帰郷」がこの作品には描かれていました。
ほんとにそうですね。心の帰郷。なんか秋口にはほどいいテーマでした☆
いやー、感動しちゃいました。ちょっと迷ったけどみて良かったです┌|∵|┘
男性がご覧になって感動されるというのが、この映画の魅力なのですね・・・そう感じました。
コメントをありがとうごいます。
今から貴ブログにお邪魔してきます!
私も同じくこれは、ライムンダと母イレネ、其々の物語であると感じました。
ラストシーンの後姿が印象的でしたね。
あれ程までに重たい題材を、共感し
静かに感動出来る作品に仕上げている辺りが凄いなぁ〜と...
鑑賞後は、改めて1つ1つのシーンの意味が浮かんできました。
そして、ぺろんぱさんのレビューには名言が一杯で更にまた感動です!
TBさせて頂きました。
これは観る側の女性の年齢によって感じ方が変わってくるでしょうね。どの辺りにより強く感じるか・・・で。
いずれにせよ、女性が元気な映画はいいですね。
明言なんて何にもないですよ、人生の年数に比して感性も高まればいいのにちっともも・・・と思ってばかりです(-_-)。
凄い、女性賛歌の作品でしたね〜。
ペネロペ親子の罪の意識を描くでなく、樹の幹に刻んだ墓石代わりの文字をみつけて
目と目を見合わせるだけ・・・、
母親も残りの人生を、また新たな看護を必要としている、嘗て自分が奪い取った人の代わりに生きることで、
なんだか上手くこの監督とキャストにしてやられた感じです。
"色彩"と生活の中の"匂い"の使い方も上手かったですね〜♪
今作、ご覧になられたのですね。
女って強くて凄い生き物なんだなぁと感じましたね。
>"色彩"と生活の中の"匂い"の使い方
なるほど、ですね。色彩は感じましたが「匂い」については遡って再度感じてみたい思いです。後ほど貴ブログにお邪魔致します〜!
良かったですね。
> 女って凄い生き物なのですね。
これって言えてます。強い、男なんか要らへん!
> 残酷で、バッサリと何かを切り捨てる非情さもありながら、絆ある者はとことん守ろうとする強さ(優しさ)があって・・・。
要らん男は切り捨てるという残酷さと、併せ持つのはやはり「母」という強さでしょうか。
ラストで母親イレネが次は...というのも弱きものを守る愛情でしょう。
「ペネロペ三昧」というサイドネームに、連休中のwest32さんの小確幸(春樹語)を感じます。(*^_^*)
強い!確かに、強い女はとことん強いです。
でもそれほどでもない女もいます、かく言う私も強き女に憧れるあかんたれの女です。
でも己の弱さを知った上での、捨て身の強さはあるのかもしれませんね、女という者にも。
私が母イレネに感じたのは、そんな「許す」という“ある意味捨て身の”強さでした。
>男なんか要らへん!
あ、そんなこと仰らずにwest32さんの存在をこれから益々、貴ブログでババーン!と見せつけて下さい!(*^_^*)