この作品、その存在を知ってから公開を楽しみにしていました。
23日(土)、『ジェイムズ聖地(エルサレム)へ行く』(ラアナン・アレクサンドロヴィッチ監督)、シネ・ヌーヴォXにて。
シネヌXはシネ・ヌーヴォ内、更に奥地の“秘境”にあります。秘境に集っていたのは私を含めた老若男女数人でした。
story
次期牧師に任命されエルサレムへと巡礼の旅に出た青年ジェイムズ(シアボンガ・シブ)。
入国審査で不法労働者と間違わ留置場に拘束、無事釈放されるも保釈金の借金を背負う始末。過酷な労働をこなすうち金儲けのルールを知った青年は、キレイな心で聖地にたどり着けるのか?(Lマガジン・映画欄より)
重たく普遍的な大きなテーマながら、題名から窺えるように、ユーモアたっぷりに一人の青年の青春記みたいな感じで綴られていきます。
「搾取する者」と「搾取される者」(いずれも現地の言葉で「フライヤー」と呼ぶ)という言葉が何度も何度も出てきます。
資本主義の構図ですよね。
いきなりそんな世界に放り込まれた敬虔なクリスチャンが放つ言葉の幾つかが(笑いを取るシーンであろうと思われるけれど)観る側の我々が“資本主義どっぷり”のこの世界に生きていることに気付かされて、ギョッとしてしまうこともありました。
それは例えば・・・勝手に誤解されて捉えられ、勝手に労働者ブローカーの手によって保釈金という借金を背負わされ、劣悪な状況下で就労させられるジェイムズが爽やかな笑顔でそれを「神様の試練です」と言ってのけたり、初めて労働の報酬を手渡された時に「お金は要りません。ラクダが針の穴を通り抜けるより、金持ちが天国に行く方が難しいのです。」と慈悲深い笑みでお金を押し戻したり、とかね。
そんなジェイムズの目が本当にキラキラ輝いていて美しく(本当に輝いている!)、労働して報酬を得て、少しでもランクの高い生活を目指すという当たり前のことが何だかとても汚れたことのように感じてしまうのが可笑しくも哀しかったですね。
でもそんな、謂わば対極の世界両方に、一人の人間が居続けられるわけがないのですよね。
真摯な人間はどの世界に於いてもその真摯さによって頭角を現していくものだと私は思うのですが、そこ近代資本主義国家イスラエルの労働の場に於いても彼は頭角を現し、やがては当初意図すらしなかった「賢いお金儲け」の仕方を体得していってしまうのですが、その辺りから段々ジェイムズの目にキラキラとした輝きが無くなり、どす黒い闇に覆われるように感じたのは私だけではないはずです。
搾取する側とされる側の間に、およそ真の友情や愛情など、芽生えることはないと私は思うのです。
だって互いの利害の着地点が全く違うのですから。
ジェイムズも友を失い、妻を愛し続け、自分を導こうとしてくれた老人の心をやがて見失っていく・・・。仕方ないけれど、生きるために資本主義に染まっていく彼がそこに居るのです。
それはそれで“それなりの”幸せな生き方とも言えますが、でもやっぱり本来彼が望んだ道じゃない。
そして、宗教。
宗教も「組織」という形を得て、組織内に「上に立って組織を運営して行く者」と「それに従う者」の二者が出来た時点で、その宗教は本来の存在意義を無くしてしまうような気がしました。これは劇中のある牧師の言動を通じて痛感したことですけれど。
じゃあ純粋な宗教の形って一体どういうものなんでしょう?! そもそも利害と無関係に純粋に生きるっことって出来るのでしょうか?!(自問・・・)
ジェイムズの最初の登場が余りにも清らかだったので、やはり最後まで彼が聖地に辿り着くことを祈らずにはいられません。
そして結局彼は辿り着くのですが、それは余りに意外な形で、ね。
それでもジェイムズの目の輝きはキラキラとしていて、爽やかな感動と苦い味とが混ざり合ったちょっと複雑なラストでした。
ああいう状況で聖地に行って、彼は何を得るのでしょうか。
その後のジェイムズがとてもとても気がかりです。
さて、昨日は好天で暑かったです。
映画の後、一人でふらりと神戸のお店でジンのソーダ割を2杯飲み、久々に連絡のあった友人と逢って今度は芦屋の某オープンカフェにて“お茶代わり”にまたしてもジンのソーダ割をいただきました。
友人はカシスのジュースをオーダーしていましたが、私は空腹状態で更にジン・・・・すっかり酔いモードになってしましました、反省。
が、お酒に関しては学習能力のない私は、今日もブログをアップしながらこうしてまた自宅でウィスキーのソーダ割をいただいております(まだ日も高いのに・・・あっ、今日は曇天か^^;)。
こんな私には神様もきっと愛想を尽かし、聖地には行けないでしょうね。
でもせめてスピリチュアルな聖地への旅を、ジェイムズに導かれて・・・。
2007年06月24日
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ジェイムズ聖地(エルサレム)へ行く
Excerpt: シネ・ヌーヴォX にて鑑賞。(2003年/イスラエル) 【物語】 アフリカの村で次期牧師に任命された、敬虔なキリスト教徒の青年 ジェイムズ(シアボンガ・シブ)は、“聖地”エルサレムへ巡礼の旅..
Weblog: ゆるり鑑賞
Tracked: 2007-07-08 21:39
『ジェイムズ聖地へ行く』
Excerpt: 社会見学。お金を巡る冒険。 アフリカの村で次期牧師に任命された若者ジェイムズは聖地エルサレムへ巡礼の旅へ出かけるが、不法労働者と間違えられ留置場へ放り込まれてしまう。そして、保釈金の借金を負わさ..
Weblog: かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
Tracked: 2007-07-17 12:47
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『ジェイムズ聖地へ行く』
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なんともいえない雰囲気ですよね。
目が輝いたり、曇ったり、やっぱり役者さんはすごいですね。
あの「X」は、“こっそり”と向かう、まさに秘地でした。
何だか、同じ映画を観るために集ったというだけで同士みたいな感情が湧くような・・・。
この映画の主演男優の目の輝きは本当に“キラキラ”です。少女漫画の「瞳に星」の世界でしたよ。
何か禁断のかほりがしてドキドキしますね。
入館に際して、厳格な裸体検査があったりして(こらこら)。
あの時“秘境”に集っていた私含む数人は、とても「厳格な裸体検査」を通過した人々には思えませんでした。^_^;
でも確かに、脈拍が上昇しそうな劇場ですよ。
腹筋割れ数=1ヶ でもOKなんですね(=^_^=)
腹筋割れ1個でもOKです!
というか、逆に腹筋割れ割れのマッチョ氏は椅子に入りきらないかもしれないからNGです^_^;
いえいえ、本当は誰でも大丈夫!のシアターです。
west32さんのブログから、こちらにたどり着きました。
この映画、周りに「観た」人がいなくて誰とも語り合えないので、
こちらに伺ってちょっと嬉しくなりましたよ。
主演のシアボンガ・シブの目がほっんとにキラッキラッでしたね。
物語が進むにつれて「ジェイムズ、君は変わらないで!」と思ってしまいました。
ようこそ、です。
あのあとジェイムズはどうなるのでしょうね、ちゃんと故郷に帰れるのでしょうか・・・神が現われて彼を救ってくれることを切に願いたいですね。
ゆるりさん、またいらしてください、これからも宜しくお願い致します。