2011年05月06日

キッズ・オールライト


 人間同士なら言葉で慰めあったり励ましあったりできるけど、動物とは言葉が通じないから人間に対する以上の「思い」が要る気がします。
その「思い」を(例えばウチ猫に対して)本当に大切に日々違わず送り続けているかと、最近は自分に問いかけることも多くなりました。 持病管理で通院に加えてストリクトな食餌療法を長年続けてるウチ猫ですが、ご飯くらいはもうええやんな、と、生き方の(ちょっとした)方向転換を図りました。

 シネリーブル梅田で『キッズ・オールライト』(リサ・チョロデンコ監督)を観てきました。

それぞれ同じ男性からの精子提供で子どもを持つ同性愛の女性夫婦。仲良く暮らしていた家族が、その提供者の男性が現われたことから次第に軋みはじめる姿を描いた物語です。

                        キッズ.jpg
                            ※写真は映画情報サイトよりの転載です。 
 
 カリフォルニアの渇いた空気と伸びやかな暮らしが何とも心地よくて、コミカルなテイストに“all right” なポジティブさが感じられて、途中までは楽しめました。
ストーリー展開を知らなかったので中盤のあの出来事には驚き、(家族でなくても)ショックでした。
しかし問題はコトの是非じゃなくて、決着の付け方とでもいうか、あの家族「本当にあれでいいの?」っていう思いが消せなかったのですよね。
ポール(精子提供者 演じるはマーク・ラファロ)を巻き込んだのは彼女たち家族。
巻き込んだのならポールを含めた再生があってこその“本当の”家族の再生と言えるんじゃないのかな、と思って。あの突き放し方はまるで“臭いものに蓋”的なものに思えて、「本当の家族が欲しい」と苦悶していたポールが私は不憫でならなかったです。
何より、あれじゃ子供たちの中で“all right”なんかじゃなくずっと燻ぶり続けるような気がします。だから(映画は中途半端に終わったけれど)できることならいつの日にか、彼女たち家族の全員がポールとちゃんと敵愾心を取り払って話せる時が来るといいなぁって思いました。

久々にスクリーンで見たマーク・ラファロは素敵でした。
この人の声と喋り方は、心の繊細なところを撫ぜられるような趣があると感じます。
ジュリアン・ムーア(ジュールズ役)も好きな女優さんです。ジュールズの「認められたい」という思いは凄く分かりました。だからこそ庭師の感情的解雇はよくなかったんじゃないかなぁ。
あ、ジュリアンのお相手ニック(演じるはアネット・ベニング)のワインの飲み方がワイルドでとても良かったですね。86年の<プティ・シラー>、私も飲んでみたいです。

 
          豚玉 白.jpg     豚玉 赤.jpg
                     
いろいろあって前年には行けなかった友人夫妻のお店<Le Butatama 豚玉>。先月末にやっとお伺いできました。
好みを言ってソムリエさんに選んでいただいた、どっしりと飲み応えありの白と小悪魔的な味わいの赤の二本でした。ありがとう。


posted by ぺろんぱ at 19:43| Comment(6) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
こんばんは。
自分らがポールを巻き込んだ割には、そのときの突き離し方が尋常じゃないですよね。
自分らのテリトリーがしっかりあって、それを脅かされると手のひら変えたように、、、
あれがアメリカに於ける家族付き合いってやつなんでしょうかね。
まあ、分らんでもないですけど^^;

その後の、ポールと庭師の生活ぶりが気になって仕方ないです。
Posted by ituka at 2011年05月06日 23:00
itukaさん、こんばんは。

多分みんなの中でそれぞれの形で燻ぶり続けるんじゃないかって心配するのは私がウェットな日本人だからなのでしょうか・・・。(T_T)

>ポールと庭師の生活ぶりが気になって

ポールはまだしも、庭師のおじさんは「生活」できてるんかなぁ・・・。
いえいえ、ポールも「オレにはもう何も残ってないのさ」とかでアルコールに溺れてないことを祈ります。・・・あ、それは私か。^_^;
Posted by ぺろんぱ at 2011年05月07日 20:45
期待値が高かっただけに、ちょっとがっかりな作品でした。
好きな俳優さんばかり出演されてたのでよけいに残念というか。

結構おゲレツな下ネタも全然OKな私なんですが、今回全然笑えなくて。
女性同士のゲイカップルという設定から笑いを引き出すのは、
なかなかハイレベルな挑戦という気も個人的にはします。

問題に対しての対処の仕方が納得できないんですよね。
人間関係を終わらせる事は簡単にできるかもしれませんが、
どういう経緯でそうなったか、今後どうしたいか等をとことん話し合う事が大事な気がするので。
子供達、特に堅物でまだまだ人を見る目のない風に思えるジョニには、
そういう事を学ぶいいきっかけだったかもしれないし。

それはそうと、邦題の“キッズ・オールライト”には、良いの?と疑問を感じます。
その略し方は強引な気がして。
Posted by ゆるり at 2011年05月19日 21:51
ゆるりさん、再びこんばんは。
こちらにもお越し下さりありがとうございます。

一つでも見過ごせないような疑問点や矛盾点を一旦抱えてしまうと結構最後まで尾を引くような気がします。
本作では、私の場合は途中までは結構楽しめていたのですが。

>なかなかハイレベルな挑戦

なるほど。
そういえば劇中、女性同士のカップルのV.は嘘っぽくて観ないのっていう台詞がありましたが、それに通じるところもあるのかもしれませんね。
このニックとジュールのカップルこそが、やはり何処か偽物的に映ってしまっていたのかもなぁと
今思い返しています。
それと、からりとした笑いに転化するには、やはり未だ日本では女性同士のカップルは男性同士のそれに比して秘事的な位置にあるような感じもします。個人的には応援したい思いがありますが。

私はポールを外に締め出したまま、こっちの家族の中だけで「無かったことにしよう」的な解決の仕方をしたことに何となく納得がいかなかったです。

それと邦題タイトル、本当ですね。
響きはいいけれど意味はオリジナルタイトルを読まないと解せませんよね。
Posted by ぺろんぱ at 2011年05月20日 21:41
初めから終わりまで、何処か落ち着きませんでした。
妙に居心地が悪いんです。
この4人の家族がふらふら、結局、ポールの感情を受け止めることができず、自己防衛しただけでした。
ふむふむというこで。

猫ちゃん、大変なんですね。
ナデナデが一番ですよ。
Posted by cochi at 2011年05月20日 22:29
cochiさん、こんばんは。
TBもありがとうございます。

妙に居心地が悪いと仰るのは何となく分かる気がしました。ジュールズとニックの「家庭」、精神的な絆みたいなものが今一つ確かなものとして伝わってこなかったのも一因かなぁ、って思っています。あの4人プラス1人、これからどうなるんでしょう。

猫にナデナデしました。
ありがとうございます。
猫にナデナデしてると、自分の心もナデナデされてるように和らいでいくから不思議です。(^^)
Posted by ぺろんぱ at 2011年05月22日 21:04
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Excerpt: キッズ・オールライト リサ・チョロデンコ 見ていて居心地がどうも不安定でした。 原因は二つです。 一つは、登場人物たちが、それぞれに心が揺れ動き、一体どっちの方向を向くのかはっきりしな..
Weblog: Art-Millー2
Tracked: 2011-05-20 22:36