2011年06月10日

ハート・ロッカー(DVD鑑賞)


今週の某夜、DVDで『ハート・ロッカー(The Hurt Locker)』(キャスリン・ビグロー監督)を鑑賞。

イラク・バグダッド郊外に赴いた米軍・爆発物処理班の落命と背中合わせの壮絶な闘いを描いたもので、昨年度のアカデミー賞で作品賞や監督賞など6部門の賞に輝いたという作品。
     
                  ハ^ト.jpg ハート2.jpg
                      ※画像は映画情報サイトよりの転載です。

  先ず、この映画が作られる発端となったともいえる(勿論それ以前から火種はあったのでしょうけれど)あの「9.11」の事件を当時の衝撃と共に思い返しました。
本作はあくまで米兵の視点から描かれたものですが、ありがちなアメリカ万歳的な作品では全くなく、米側でもイラク側でもない全く別次元に立って戦争の悲劇性を描いたものだと感じました。
軍隊同士の戦闘は終わっても、これから先も様々な形での悲劇は続くのでしょう。米兵たちの心と体を蝕む病と傷、同じくイラクの民に巣食う憎悪という名の黒い感情全てが、おそらくは彼らが生きている限り続くのだから。

冒頭の「戦争は麻薬のようなもの」とのテロップが、観終わった後で苦く、実にやるせない、心がザラザラした感じの印象を残しました。
まるでハンディカメラで撮影されたという本作の画面のように。

瞬時にして命を落とす危険に常に晒されながら、ある意味淡々と、まるで自ら挑むかのように任に当たるジェームズ軍曹(ジェレミー・レナー)。
実際に爆発物処理に当たる彼と、彼を擁護し周囲に潜むテロ犯を捕獲する狙撃手たちと、同じチームでありながら完全な精神の溶融はみることはなかったです。双方、というよりもジェームズ自身(軍人としての彼)が、まるで「そこ(不確かな安寧)に埋没してはいけない」とでも生得してしまっているかのようでした。

だから、中盤の砂漠での狙撃戦で見せた彼の行動と、少年ベッカムを巡って彼が本能的にとった行動が、それぞれ違う形で他と差別化された「人間・ジェームズ」の顔を見せて、終始ドキュメント風でドライな描写であった本作に於いて際立って“映画的な”描かれ方だったように感じました。
その狙撃シーンは心身が極限まで乾き切るほどに長い時間を経過する死闘であり、それまでの爆発物処理の場とは異なった緊張感が漲り、一つしかなかったジュース(本当はもう一つあったんだけど…それはさておき)を、自身も極限の渇きにありながら狙撃手であるサンボーンに与えてやるジェームズの姿には、チームを率いるプロの戦闘家としての行為を超えた熱いものを感じました。

「家族、子ども、男の子が欲しいんだ」と吐いたサンボーン軍曹。
でもサンボーン自身も、長い闘いで心の中の「何か」が既に損なわれてしまったことを分かっていたのではないかと思いました。
それは、ジェームズが幼い男の子を持つ己の家庭にも埋没できないその生き方と共に何とも暗澹たる思いを残したのでした。
「戦争は麻薬のようなもの」。 
選び放題に陳列された豊富なシリアルのあるアメリカでの日常よりも、一つのジュースに命をつなぐ戦地での非日常を、彼らは選ぶしかないのでしょうか。

                         堂島サンボア ジン.jpg

  久々に仕事帰りに独りで訪れた堂島サンボアBARでは静かな時を感じました。
ハイボールのあとに私的定番になってしまったジントニックならぬジンソニックです。

主演のジェレミー・レナー、いいですね。
ガイ・ピアースが冒頭早々にいなくなってしまったのにはちょっと驚きました。
そういえば近年観た『ザ・ロード』では最後の方にやっとご登場でしたが。


posted by ぺろんぱ at 20:52| Comment(8) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
サンボーン軍曹って某作品でもクールな登場してましたが、
肝心なところで居眠りポカしてたりして^^
アンソニー・マッキ―だったのですね。
可也のイケメンくんです^^
ジェームズ軍曹の少年ベッカムと例の狙撃シーンで
こいつはなんていい奴なんだ!と思いましたよ。
キャスリン監督はジェレミー演じるジェームズ軍曹に完全に惚れてしまったんではないでしょうか^^
そういや『ザ・タウン』のジェレミーさんも可也いいですよ(笑)
Posted by ituka at 2011年06月10日 22:51
どもです。

昨夜もグゥグゥとだらしなく寝てしまいました(⌒〜⌒ι)

何だか既に、懐かしい感じな本作・・

私的にはガイ・ピアースもそうですが、レイフ・ファインズの
アレにも驚かされました(×_×)

狙撃戦の辺りも含め、全体的に『フルメタル・ジャケット』の
雰囲気を感じたりしました。
あと、新兵の訓練エピソートを劇中に挿入したら、
「まんま」だったでしょうね(=^_^=)

itukaさんも仰るように『ザ・タウン』でのジェム君の
「問題児ぶり」もなかなかのモノでした(=^_^=)

また、ご覧下さいまし〜
Posted by TiM3 at 2011年06月11日 06:50
itukaさん、こんばんは。

はい、サンボーン演じたアンソニーくん、本当にかなりのイケメン君ですよね。

ジェームズ軍曹には私も惚れました。しかし、本来の彼の生きる場である家庭ではどうも精彩を欠いてしまうようで、なんとも辛いですね。

『ザ・タウン』
itukaさんのみならずTiM3さんも御推奨のこの作品、是非観てみたいと思っています。
ありがとうございます。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2011年06月12日 18:39
TiM3さん、こんばんは。
眠りに浸っていられるのも幸せなことだから、許されるうちはどっぷり浸かって下さいませ〜。(*^_^*)

レイフ・ファインズ、仰る通り「最期」にもうちょっと“何か”があってもバチは当たらなかったでしょうね。
『フルメタル・ジャケット』ですか。
キューブリック監督作品なのですが、今一つ記憶が曖昧です。復習します!

『ザ・タウン』のジェレミーさんは問題児なのですね。楽しみに?臨みたいと思います。
Posted by ぺろんぱ at 2011年06月12日 18:52
こんばんは☆

>ガイ・ピアースが冒頭早々にいなくなってしまった

まさにwしかし、早々に辞する雰囲気満載でしたよね最初からw

ジェームズ軍曹の多面性、、、確かにそういう観点から作られている感じします。
しかも、この映画はその極限状態すらも覆っている臨戦態勢があるというのが果てしない恐ろしさを感じます。

無数のシリアルの前で呆然とするジェームズ軍曹。
彼がまた戦地に赴いた根拠は一体何なんだろうと深く考えてしまいます。
深いですよね、この映画。
Posted by dk at 2011年09月19日 21:52
dkさん、こんばんは。

>早々に辞する雰囲気満載でしたよね

そうでしたね。^^;
真っ先に“連れて行かれ”そうな「はしゃぎ振り(やんちゃ振り?)」でしたものね。

>彼がまた戦地に赴いた根拠は一体何

価値観といいましょうか、あらゆる感覚が麻痺してしまった感があります。
dkさんが仰る通り「極限状態すらも覆っている臨戦態勢」の結果として、ね。

本作、観る者をも不毛な精神状態にさせる凄さがありました。
Posted by ぺろんぱ at 2011年09月21日 19:30
「ほなまたお越しください、是非に」というぺろんぱさんのお言葉に甘えて、3年前のこれも来てしまいます。が、自分観たのは、BS録画で観た3か月位前なんですが・・。

いつもながらハードディスクぱんぱんな為(トホホ)すぐに消してしまったものの、自分的に苦手なタイプの映画の割に心に残ったもんで、今更ながら来ました。

心に残ったポイントとして、ジェレミー・レナーの存在です。この役が、よくありがちなーしゅっとしたにいちゃんーやったとしたら、自分途中で観るのんやめた思います。(キッパリ)この人出たとたん、もちょっと観てみたろと思たんですわ。

そして、一番心に残ったシーン、
ずらーっと並ぶ似たりよったりのシリアルの棚。
「自分にしかできないことをする=ワンアンドオンリー」の感情が浮かび上がったシーンに思えました。

ほな、またです。
Posted by ビイルネン at 2014年06月15日 20:50
ビイルネンさん、こんぱんは。

「3年前」のハードルは記憶力の乏しい私にはちょっと高い?と思ってましたが、本作はかなりの作品でしたのでなんとか受けて立てそう??です。

戦争を扱った作品は私も結構観に行く前に気合が要ります。
(あ、「苦手」と仰っているのはまた違う意味でですかね??)

ジェレミー・レナーさん、確かに骨太の存在感ですね。
しゅっとしてない当時話題の御仁という点ではサム・ワーシントンさんとイメージがかぶっています。
それは別として、『ジェシー・ジェームズの暗殺』にも御出演とかで、確か録画したソフトがあったはず・・・と思っている今です。
本作にお寄せいただいている先のコメントでもレナーさんの『ザ・タウン』っていうのが違うレナーさんが観れてお薦めのようですよ。
似たような御名のジェレミー・レニエさんも私は大好きな男優さんですが、それは「今関係あらへんがな」ですよね、、、すみません。(T_T)

>「自分にしかできないことをする=ワンアンドオンリー」の感情が浮かび上がった

なるほど。
そういう感情こそ、ビイルネンさんのワンアンドオンリーの感性に感じました。(*^_^*)

ほなまたお越し下さい。(真似しぃです、ごめんなさい)

Posted by ぺろんぱ at 2014年06月16日 20:21
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Excerpt: 2011/9/10  Movie heart beat vol.1180                                    text by dk ++++++++++++..
Weblog: 映画に浸れ。
Tracked: 2011-09-19 21:42