2007年07月08日

街のあかり

 待っていました。そして、観てきました、アキ・カウリスマキ監督の『街のあかり』を初日7日(土)、梅田ガーデンシネマにて。

前日には仕事帰りのジンリッキー2杯のみ・・・相変わらずの睡眠不足で体調は万全ではないにせよ、二日酔いでないことだけは確かだ・・・やったね!さあ行こう!っていう感じで梅ガデに向かいました。

story
『浮き雲』『過去のない男』に続く敗者三部作の最終章。『浮き雲』で“失業”、『過去のない男』で“ホームレス”を描き、本作では“孤独”をテーマとしている。
友情にも家族の愛情にも恵まれず、1人で孤独に生きる夜警員の男コイスティネン(ヤンネ・フーティアイネン)
ある日、彼はマフィアの男とその情婦ミルヤ(マリア・ヤンヴェンヘルミ)の策略により、ショッピングセンターの宝石を強奪した罪をなすりつけられてしまう。しかし、ミルヤの愛を信じるコイスティネンは……。 (シネマトゥデイより)


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 常に弱者や敗者、そして人生の底辺を描いてきた監督なので私は「敗者三部作」という言い方は余り好みませんが、監督自身がそうメッセージを出しているのでこれはやはり「敗者三部作最終章」なのでしょう。

 余りの不器用さゆえに友人も恋人も持てず「独立していつか自分の会社を作る」という夢にだけ辛うじて支えられて生きているコイスティネン。
悪い人間じゃないのに、“負の磁場”みたいなものが彼をこれでもかこれでもかと追い詰めていく
汚名を着せられて何もかも失って確かにどん底、人生に敗れし者。

かたや彼を利用し悪行を働くマフィアの男リンドストロン(イルッカ・コイブラ)はもう見るからに悪の権化のような男
この悪党共に対して、身体を張って犬を救おうとしたり愛した女をかばい続けて罪を被るコイスティネンと彼をそっと見守り続けるソーセージ屋の女性アイラとストリートチルドレンの少年。

強者と弱者、勝者と敗者、悪しき者と善き者・・・この対比が凄くストレートに描かれていて、痛めつけられて瀕死の状態のコイスティネンの心に最後の最後で慈愛の光がぽっと灯るようなラストシーンに、監督の直球勝負を感じましたね。

敗者敗者と書き連ねてしまいましたが、コイスティネンはどんな状況になっても(ささやかながら)夢を持つことを止めなかったのです・・・この点において彼は敗者ではなかったのですね。
この彼の心の奥の硬い芯のようなものが、結果的に彼を慈愛に満ちたラストへ導いたのだともいえるのではないでしょうか。

X.jpg

相変わらず台詞は少なく、役者さんたちも無表情なままです。

でも悲しみや苦しみが伝わってくるのは、この監督の「間」の作り方によるような気がします。
その時々のシーンに於いて、役者さんの顔を捉えたまま、かなり長くフィルムをまわし続ける・・・その無言のシーンの続く間、観る者はスクリーンに深く心を沈めることが出来るのではないか、と。

 ほんのちょい役ながら憮然とした表情で圧倒的存在感を見せてくれたカウリスマキ作品の常連女優カティ・オウティネンも、無言ながら(SoftBankのCMじゃないから当然か)いい味出してた犬のパユ君も、シリアスなのにどこかプッと吹き出してしまうようなシーン(ポーカーに興じる悪党達の後ろで掃除機をかけながら時々画面に入ってくるミルヤとか)の幾つかにも、「カウリスマキ作品だなぁ」という空気を感じ、温もりを感じるラストシーンだけにじゃなく何だかじーんと嬉しくなってしまった土曜でした。

janne.jpg

  はい、そして例によって、打ちのめされたコイスティネンは灰皿を吸殻で満たし、ウォッカをまるでジュース用のようなグラスで
ストレートでぐいぐい呷ります。
ああ、絵に描いたような“自棄”状態です。

だから(えっ?どうして「だから」?)私もウォッカ、買いました。そしてストレートでいってみました。グラスも凍らせて。

Fin.jpg

このショットグラス、FINLANDの<iittala>のグラスです。そしてウォッカは<フィンランディア>で。フィンランドづくしの夕べです。


考えてみれば主演のヤンネ・フーティアイネンは、(好みか否かは別として)かなりのハンサム顔でなので、その顔を武器に?コイスティネンは何とか人生を“勝ち”の方向に持って行けそうな感じもしないではありません(コイスティネンはそういうキャラじゃないんですけどね^_^;)。

これをあの仏頂面のマッティ・ペロンパーが演じたらどうだったかなぁとふと考えてしまいました。
そう言えば来たる13日は彼が亡くなった日です。
また彼を偲んでウォッカでも飲まなきゃいけませんぴかぴか(新しい)



posted by ぺろんぱ at 18:29| Comment(7) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
フィンランドの映画でしたっけ?

予告編をみて、雰囲気暗いなぁと思っていました。でも、ウオッカをストレートで?ちょっと暗すぎる....

ペロンパさんもその深みに嵌らないように。
Posted by west32 at 2007年07月09日 00:09
ブログデザイン変えられましたね。
夏に冬の雪のデザイン!!涼しいところへ行きたいものです。
今頃フィンランドに行ったら、カラッとしてよいでしょうね。
Posted by west32 at 2007年07月09日 00:12
弱さを貫ける者は、ほんとうは弱くないんだよ

とか、星の王子様が言ったりしてそうですね(=^_^=)

タイトルからは、チャッピー(←チャップリンの愛称(=^_^=))作品へのオマージュを感じたりもしますが、
そういうのではなかったのかな?

※変更されたブログデザ、涼感が漂いますねぇ(・ω・)
Posted by TiM3 at 2007年07月09日 00:37
west32さん、アキの作品は確かに画的には暗いイメージが先行しますが、小さな灯火がそこかしこに見えるものが多いです。この映画だけじゃなくて。
(ウォッカをストレートで、は暗いですが^_^;。)

それからブログ背景、やっぱりこれ冬のイメージですよね(^_^;)。
持病持ち猫のケアがあって今は家を空けられないので、いつかまた何処か知らない外国の街をのんびり旅してみたいなぁという想いがこの背景を選ばせたのでしょうか・・・気に入ったので衝動的に使っちゃいましたが、やっぱり冬ですね^_^;。
暫くの間はこの背景でお付き合い願います。

ディープ呑みの深みには嵌っているようないないような・・・です。
Posted by ぺろんぱ at 2007年07月10日 05:38
TiM3さん、チャップリンの『街の灯』へのオマージュというのは本当です。監督自身がそういう意味のことを語っています。
コイスティネンが人生に破れて?街を一人彷徨うあたり・・・重なるものがあると。

星の王子様の言葉は本当にそう言ってて欲しいですが・・・。

ブログデザイン、確かに雪降ってますね・・・^_^;  
うだるように暑い日は弊ブログへどうぞ。
Posted by ぺろんぱ at 2007年07月10日 05:46
こちらはレヴューまだなんですが、観てきました。
カウリスマキといえば、酔っ払いですよねー!
ウォッカもウィスキーもおいしそうでした。
それにしても、ウォッカをストレートで召し上がるなんて、ぺろんぱさんは強いのですねー♪
Posted by かえる at 2007年07月17日 12:57
 かえるさん、こんばんは。
カウリスマキは良くも悪くも、好きなんです・・・。
そしてお酒も、良くも悪くもやっぱり好きなんですね、私。
酔っ払いぺろんぱをどうぞ宜しくお願いしますね。
Posted by ぺろんぱ at 2007年07月18日 20:56
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「街のあかり」 25年ぶりに記録更新
Excerpt: 7月7日よりユーロスペース25周年記念作品として公開されました、アキ・カウリスマ
Weblog: 映画コンサルタント日記
Tracked: 2007-07-11 08:06