先の週末にはカウリスマキ監督の新作も観に行きましたが、明日を前に、今日は保存版として BS録り置きの『パラダイスの夕暮れ』(1986年 マッティ・ペロンパー&カティ・オウティネン主演 アキ・カウリスマキ監督)で彼を偲んでみたいと思います。
「パラダイスの夕暮れ」の前に、今週の「二つの夕暮れ」もここに記しておきます。
一つ目は「ラムの夕暮れ」です。

かなりご無沙汰だったお店 SUTAG BAR KIMURA でのダーク・ラム。オン・ザ・ロックですが、マスター氏が、夏らしく絞ったレモン果汁をたっぷり加えて下さいました。
ダークラムのビターな後口に、レモンの爽やかな酸っぱさが重なり、まるで身体に良い薬酒を飲んでいるような“前向きな?”お酒でした。
二つ目は「ジンの夕暮れ」ですね。

こちらはJazz Bar Wishy-Washy でのジン・ソニック。トニックだけでは甘いのでソーダと半々で。グラスがスタイリッシュですね。
オーダーしてからマスター氏が(たとえ忙しくても)丁寧に作って下さっている気配がカウンター越しに何とはなしに伝わってくる、そんな感じのお店です。
やっぱり夏はこれ、いいですね。
そうそう、この日はママさんとカウリスマキ映画の話もたっぷりできました、いつもありがとうございます。
そしてそして、映画

story
ヘルシンキでゴミ収集車を走らせるニカンデル(マッティ・ペロンパー)は、スーパーのレジ係をしているイロナ(カティ・オウティネン)に好意を抱く。はじめてのデートでは振られた彼だったが、やがてイロナが仕事をクビになり、腹いせに店の金庫を盗んでニカンデルのアパートに転がり込んでくる。2人は急接近し、上手くいくように思えたものの、少しずつ心がすれ違っていく・・・。 (H.Pより抜粋)
久しぶりに観るとマッティ・ペロンパーもカティ・オウティネンも本当に若い。この作品も当時「敗者三部作」の一つと言われていたことを思うと、やはりカウリスマキ監督は敗者を取り続けてきた人だったのねと再確認させられます。
(先週も書いたことですが「敗者」という言い方は好きじゃないですけれどね。)

不器用で、時に「愛なんて要らないさ」とばかり強がって見せるニカンデル・・・その深い孤独は、仕事を終えて通う英会話のLL教室や、一人興じるビンゴゲーム店で俯く姿、小さなキッチンで有り合わせのもので作った夕食を窓辺にもたれて食べる姿のそこ此処に見え隠れしています。
そうとう幸薄い人生を送ってきたに違いないと思わせるほど人を寄せ付けようとしない女性・イロナと、やがて手を取り合うようになるまでのその“紆余曲折”が、何度観ても心に“じぃん”と来ます。
最初はとんでもない奴じゃないかと思わせる友人メラーティン(サカリ・クオスマネン)も、凄く「いい奴」としていい感じで絡んできます。(子供の貯金をくすねるのはイケマセンよ。)
最後に港で抱擁し合うシーンは涙さえ誘うほどです。
殺伐としたヘルシンキの街の片隅で起こる事々と、ラストの船出のシーンと・・・・孤独の象徴のようなヘルシンキの夜の色と、黄昏の港の空の色と・・・それは「絶望」から「希望」へ、の構図ですね。
情けないけど、イケてないけど、貧乏でずっと寂しく生きてきたけど・・・、それでもそんな奴等にやっと小さな温かい灯がともったんだね、これから頑張りなよ・どうか幸せに暮しなよ・とそっと言葉を贈りたくなるラストです。
いつもながら極端に余計な台詞が排除されている映画ながら、この作品ではその少ない会話の中に特に光る言葉の妙を感じます。
幾つかある中で、結構好きな台詞、というか好きなシーンは、ニカンデルが仕事の合間に休憩で港の一角に腰を下すところ。
ニカンデル「・・・・・きれいだ。」
メラーティン「何が?」
ニカンデル「太陽と海と鳥。」
そして、
ニカンデル「今、彼女が俺の家にいる。」
メラーティン「どうしてすぐ帰らない?」
ニカンデル「恐怖と勤務。」
この一連の会話、結構好きです。
「一人では生きられない」とだけ言ってプロポーズしたニカンデル。
船出の後もきっと様々な紆余曲折があるに違いない二人だと思うけれど、エンディングに流れる音楽の歌詞が彼の心に被ります。
♪人生は果てしなく短い だからお願い、急いで僕のもとへ・・・・
やっぱり「頑張りなよ・幸せに暮らしなよ」、です。そして、やっぱりマッティ・ペロンパーはいいですね。
このあと私は「ウォッカの夕暮れ」ならぬ、「ウォッカの夜」へ突入します。
ページの印象がガラッと変わってました。
昨日は予定通りウオッカの夜へ突入されたのでしょうか?今日は週末、あと1日がんばりましょう。
今はお昼休憩ですので、あと半日?頑張りましょう、というところでしょうか。
昨夜は先日ブログで紹介のウォッカ/フィンランディアが残っておりましたので予定通りのウォッカの夜としました。(他のお酒も少々…)
何でもビール飲み、というのは私にも通じるものがあります。ロックだろうが水割りだろうが、日本酒だろうがワインだろうが・・・・ピッチが同じという・・・^_^;。
今度は私の大好きな和酒の分野で、ビイルネンさんが是非それを「ビール飲み」して下さるように“誘い”の記述をしたいものですが・・・・無理でしょうか・・・。
今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
デジタルカメラを購入したんだけど、お天気はあいにくの・・おまけにノートPCの液晶画面の調子も良くなくて“敗者気分”です(・ω・)
カウリスマキ作品語録の中では、
「もしオレが道で行き倒れていたら・・仰向けに」
ってのが好きですね。強烈に記憶されました(=^_^=)
言葉の裏を探ってみると・・意外と深いかも、なのもイイですね。
「巨匠は、普遍的味わいを持つ言葉を、その作品に刻む」
これを「本日のひと言」としておきましょうか。
(ナニをえらそうに!)
さて、「もしオレが道で行き倒れていたら・・仰向けに」は『過去のない男』ですね。それもその1シーンだけに登場した男の言葉でしたよね。
最後の「本日のひと言」はTiM3さんのお言葉ですか?・・・深いですね。
>キサラギ、観に行って参りましたよ。
おお、ようやく! ワタシは思わづ「大磯ロングビーチ」に行ってみたくなりました(=^_^=)
>さて、「もしオレが道で行き倒れていたら・・仰向けに」は『過去のない男』ですね。
>それもその1シーンだけに登場した男の言葉でしたよね。
流石ですね! クレケンバンドが起用されたり・・とさり気ないメジャー路線っぽさが少々気にはなるんですが、イイ作品でした。
(にしても、カウリスマキ作品って・・意外に暴力描写がキッツイですね・・映像から痛さが伝わって来たりもします)
暴力描写・・・多分「劇的」に「カッコ良く」撮ろうとかしないから、余りにストレート過ぎて容赦なく“ボコッ!”みたいな感じで痛いんじゃないでしょうか。
そう言えばアキ作品では殴られ方もフラれ方も「絵に描いたような」ところがありますね(^^)。