2011年07月24日

大鹿村騒動記


  先週のシネ・リーブル神戸でのリベンジ、梅田ブルク7で『大鹿村騒動記』(阪本順治監督)観てまいりました。
(映画公開の)舞台挨拶の時の痩せ細られた原田さんではなく、スクリーンにはまだまだ逞しさと怪優としてのオーラを発散させた原田さんが居られました。
ほんの少しの時の経過しかなかったのに。 改めて、心からご冥福を祈ります。


 長野県大鹿村。300年もの歴史で受け継がれる村歌舞伎とその舞台に関わる村人たちのありのままの情感がたっぷりと描かれています。村で細々と鹿料理店を営む善(原田芳雄)の前に18年前に駆け落ちした妻・貴子(大楠道代)と幼なじみの治(岸部一徳)が現れることから幕を開けるお話です。
                  
大鹿村.bmp
                             ※画像は映画情報サイトよりの転載です。
  
 「仇も恨みも、これまでこれまで。」

これは劇中劇である歌舞伎の「六千両後日文章 重忠館の段」での景清(善さん=原田さん演じる)の台詞です。この台詞にこの映画の全てが集約されていた気がします。
本作は長野県下伊那郡大鹿村という、この村でしか創り得なかったであろう映画なのですね。歌舞伎の舞台が、「効果的」というよりも密接に「一体のもの」として物語の中に存在していた映画なのでした。「六千両後日文章 重忠館の段 メイキング」と言っても(ある意味)過言ではないのかもしれないですね。

佐藤浩市さん演じる越田の台詞通り、それこそ「血を見る」状況にもなり得た善さんと貴子と治の三角関係も、こんなふうに大らかな想いで俯瞰できるようになるなんて、それはここに暮らす村人達の心の年輪と村の雄大な景観の為せる業なのでしょうか。
三人の関係だけじゃなくて、貴子が罹ってしまった不治の脳疾患も、村にやってきた若者(冨浦智嗣)が苦悩する性同一性障害も、深刻な問題なのに至極あっけらかんとした落としどころで描かれています。映像はそれらの問題が抱える深刻な側面を一瞬見せながらも、やがては共に、なるようになるという大らかさと明日に繋がる希望とを見せているのでした。

ああ、だから善さんが貴子に言った「どうにでもなるし、(俺が)どうにでもするよ」っていう言葉に、私はいたく心を打たれたのでした。

村人達の涙と笑いを、善さんの営む食堂<ディア・イーター>で飼われてた可愛い鹿たちのつぶらな瞳がじっと見ていましたっけ。
時折映される鹿たちの眼に「幼き人間たちよ、さあさあ、仇も恨みもこれまでこれまで」っていう達観の相が見て取れた私です。


前述の俳優さんの他、石橋蓮司さん、松たか子さん、三國連太郎さん、でんでんさん、加藤虎之介さん、瑛太さんなど、たくさんの個性的な俳優さんが出演されていますよ。(松さん、コメディエンヌとしてもgoo! です。) しみじみ、いい映画でした


  さてさて、善さんが普段呑みにしていた<喜久水>は長野県の喜久水酒造のお酒です。
冷やでコップになみなみと注いで呑みながら、同時にお銚子に入れて湯癇にもしてたっけ。先ずは冷やでぐいぐいっと呑んでから、癇酒でちびちびグダグダと呑み続ける積りだったのでしょうか。
そういえば原田さんも無類のお酒好きだったのですよね。哀悼。

                        染めわかさん お酒1.bmp

そんな私の今日のお酒の画は、少し前にお伺いした立花、寿司割烹<染わか>さんでの冷酒です。
とても涼やかでしょう?この日は一ノ蔵・純米吟醸からスタートだったでしょうか。
たくさんの種類の地酒をリーズナブルに戴けるお鮨屋さんで、ご店主の奥様のお心配りがとても優しいお店です。



posted by ぺろんぱ at 18:59| Comment(8) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
こんばんは。

村歌舞伎への地域の方々の情熱が、
そのまま映画の出演者に憑依したかのような作品でした。
原田芳雄さん自身の、この村への思い入れも感じられて。

“喜劇”としても、はじめの方の松さんの
「メールだよ〜」のシーンから掴みはOK!で
笑わせてもらいました。
このアッケラカンとしたタッチが嬉しかったです。

立花の寿司割烹で一杯とは、渋いですね〜♪
Posted by ゆるり at 2011年07月24日 21:07
こんばんは。
また反映されず、ぺろんぱさんのお目に留まらないかも知れませんが
コメントさせて頂きますね^^

原田さんもっともっと活躍を期待しておりましたので残念です。
出演者の皆さんも様々で楽しみな顔ぶれですね。
私もきっと観るつもりですので鑑賞後にまた伺わせてください♪

お酒の画。本当に涼やか! 
ぺろんぱさんの文章を拝読して
そんなご店主様と奥様のおもてなしを味わいに、近くならきっと通いたいと思いましたよ。
Posted by あぶく at 2011年07月24日 23:59
こんばんは。

本作、原田さんの遺作になってしまいましたね。
ワタシの中では原田さんといえば浅丘ルリ子さん(笑)
ふたりが共演されたテレビドラマ『冬物語』が子供ながらに大好きでした。
内容はまるっきり忘れましたが
ただただ浅丘さんの美貌を見るためだけに眺めてた記憶が有ります。
ちなみにその頃好きだった他の女優さんは水野久美さんでした。

あ〜、もういちど70年代の浅丘さんを見てみたい(笑)
っていうか、記事とまったく関係ないコメでスミマセン^^;
Posted by ituka at 2011年07月25日 00:11
ゆるろさん、こんばんは。

原田さん、以前に別作品の撮影でこの村を訪れられて、以来この村の人々との交流があったとか漏れ聞きました。

あの舞台を観ておられた村の人々、単なるエキストラと違う熱気が満ちていたのでしょうね。(*^_^*)

松さんの本作での初カットのお顔があの表情とは!ヽ(^o^)丿
私も笑わせてもらいました!

>アッケラカンとしたタッチが嬉しかった

そうですよね、“楽しんで”何度でも観たくなる作品ですね。

立花のこのお店は友人に案内してもらいました。
お鮨屋さんはやっぱり一人ではなかなか行けないものですね〜。
Posted by ぺろんぱ at 2011年07月25日 22:28
あぶくさん、こんばんは。

その節は申し訳なかったです(T_T)。そして今回はバッチリ!キャッチ!させて頂きました。
ありがとうございます。

本作の原田さん、近寄りがたさよりも、何だかうんと近付きたくなるような素敵さでした。
是非ご覧になって、どうぞまたいらして下さいね。

画のお店は友人のお友だちがやっておられるお店なのですが、奥様が明るくて、でもちゃんとお客さまの様子に目と心を配って下さってるのが感じ取れて居心地の良いお店です。
Posted by ぺろんぱ at 2011年07月25日 22:38
itukaさん、こんばんは。

冬物語!
知らないです!ネットでチラッと調べてみたら、結構壮絶な?感じのドラマなのでしょうか?
興味津々です。

浅丘さん、現在でもあれだけの「吸引力」といいましょうか「魔的な魅力」を放っている女優さんですから、きっとゾクゾクするような美貌をお持ちだったと思います。
同性の、そして子どもの目から観ても、やっぱり引き付けられるご容貌でしたよね。

>水野久美さん

シブいですね。
水野さんと言えば、私は真っ先にテレビドラマの『気になる嫁さん』(だったかな??)を思い出します。

ああ、懐かしや。(*^_^*)
掲出の映画と関係ないコメントでもどうぞドンドンドシドシお寄せ下さいませ。
お待ちしております。
Posted by ぺろんぱ at 2011年07月25日 22:48
おっとびっくり!しました

まさか私共の店が載せていただいてるなんて(≧∇≦)

ありがとうございます


またお待ちしております m(_ _)m


ところでどなたでしたやろか(*^o^*)
Posted by 染わか at 2011年09月16日 03:39
染わか様、ようこそお越し下さいました!
コメントくださって(こちらこそ)ビックリ!しております!ありがとうございます!
奥様はお元気でいらっしゃいますか。(*^_^*)

美味しいお鮨やお造りの画をご紹介出来ていなくてすみません。このブログに載せる画像は大抵お酒をメインにしておりまして・・・ご容赦願います。
でもお酒のみならず、戴いた酒肴はどれも美味しかったです。(*^_^*)

>ところでどなたでしたやろか

そうですよね、お分かりじゃなかったですよね。^_^;
染わか様の中学時代の同級生で吹奏楽をやっていたH・Mさんに連れられて二、三度お伺いさせて頂いた者です。

またお伺い致します。
奥様にもどうぞよろしくお伝えくださいませ。

Posted by ぺろんぱ at 2011年09月16日 20:16
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Excerpt: →立川シネマシティにて ■製作年:2011年 ■監督:阪本順治 ■出演:原田芳雄、大楠道代、岸部一徳、松たか子、佐藤浩市、石橋蓮司、三国連太郎、他 先日亡くなった私の好きな俳..
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Tracked: 2011-07-29 21:27