2011年09月14日

オーデュボンの祈り(新潮文庫)


 途中ちょっと話題の新書を2冊はさんで、今は再び通勤電車で「小説」タイムを楽しんでいます。
昨日めでたく『オーデュボンの祈り』(伊坂幸太郎著 新潮文庫)を読了しました。

伊坂さんの小説を読むようになってから多分一年以上は経っていると思いますが今になってデヴュー作を手にとったわけです。
でも、6作品ほど読んだ伊坂小説の中で「物語の放つ匂い」としては私はこれが一番好きかもしれないと、読了した今感じています。

                       オーデュボン.bmp

江戸時代から外界とのつながりを閉ざしている島にやってきた青年の数日間を描いた物語で、奇妙な島民たちとの出会いと「ここには大事なものがはじめから消えている、島の外から来た奴が欠けてるものを置いてゆく」という言い伝えを追う青年の姿が綴られてゆきます。

とかく文体や作風が「村上春樹に似ている」と言われているらしい伊坂さんですが、何冊か読んでも、実は私にはちっともそうは思えませんでした。拙い私的見解ながら、(どちらが優か劣かではなく)両者に根源的な、或いは本質的な違いを感じていたので。
でもこの『オーデュボンの祈り』には初めて春樹の小説を何処となく想起させるものがありました。具体的にいえば春樹の『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』を想起させる匂いが。

伊坂ファンの皆さまは「伊坂は伊坂、春樹は春樹」と思っておられることと思います(私もそう思っています)が、私は春樹小説の中で『世界の終りと…』が最も好きな(大好きな)作品ですので、「だから何となくこの『オーデュボン祈り』にも惹かれていったのかな」とつまらぬ自己分析をしてみたということです。ごめんなさい。

本作は、読み進むにつれ現実感が薄れ、うら寂しい異次元の世界を彷徨うような感覚に陥ります。爽やかな風のなかに「哀」の匂いを切実に感じるラストも好きです。
優午(←ゆうご、案山子です)や ウサギさん(←人間です)の語る言葉の幾つかも哀切な響きを伴って心に届きます。
それでも最後の最後にふわっと温かみが残るのは、伊坂幸太郎さん独自の世界、独自の魅力といえるのでしょうね、きっと。

桜(←人間です)の存在は取り分け異色でした。
島のルールとして殺人を許されている桜を、島民の全てが恐れながら、実は彼を潜在的に許容し必要としているように感じました。そこのところに、伊坂さんの「この世に存在する絶対悪」なるものへのメッセージを強く感じた私です。

オーデュボンの祈り、「読み返したい一冊」になりました。

                          玉乃光 実家にて.bmp  実家にてかわいい

帰郷時に実家の父と呑むことも親孝行のひとつになっています。
この日も週変わりでの地酒<玉の光 純米吟醸生酒>を購入してくれていました、ありがとう。

そういえば先日友人が貸してくれた映画(DVD)『鴨川ホルモー』にこの<玉の光>が登場したのでびっくりしましたよ。京都が舞台の映画なので妥当なところなのですけどね。




posted by ぺろんぱ at 21:17| Comment(8) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
ペロンパさん  こんばんは (^-^)

伊坂幸太郎せんせいの作品ですか〜
ムズカシイです・・私には・・
買うと絶対失敗すると思って、図書館で何度か借りて読みましたが、へえええ〜っって、いつも思うんです、途中で読むの止めた本もあります
なので、鴨川ホルモーについて (^-^)
最初、本読んで、すっごくおもしろくて、映画になると知り、観に行って、すっごくガッカリ
したんです
ペロンパさん、DVD のみで、まだ本読んでないなら、是非読んでみて下さい
創造力を試される本なんですよね〜思うに!
あっ・そうか・・
私が創造していた感じと、映画の感じが違ってたので、違和感覚えたのかな〜?
Anyway, try it,please vivian
Posted by vivian at 2011年09月15日 23:12
vivianさん、こんばんは。

鴨川ホルモー、vivianさん的には「小説がGOOD!」だったのですね。
そうですか、映画はがっかりでしたか。
私としては京都の見知った風景を楽しめたのと、青春モノとして気楽に観られたのと、山田孝之くんの軽妙な演技に笑えたのがよかったかなと思えました。
終盤の攻防シークエンスがちょっとパワーダウンだったかな??という思いもありましたが。
鑑賞後は「ゲロンチョリー!」っていうのが暫く脳内にこだましてました。(^^)

でもvivianさんのご意見を受けて小説にトライしてみますね。(*^_^*)
ありがとうございます。

Posted by ぺろんぱ at 2011年09月16日 19:25
今日はです。

ウィキで(←駆け足すぎてすみません)本作を調べてみました。

面白そうな展開ですね。

そして「キャラ陣が、立ってる」印象を受けました。

本作ばかりは・・さすがに仙台が舞台じゃなさそう(?)ですね(=^_^=)
Posted by TiM3 at 2011年09月17日 12:12
TiM3さん、おはようございます。

そうですね、登場人物が興味深いです。
まさに“興味を抱いてしまう”人たちが出て来ます。

>本作ばかりは・・さすがに仙台が舞台じゃなさそう(?)

いえいえ、仙台、登場しますよ〜。(*^_^*)
機会がございましたら手に取ってみて下さいね。
Posted by ぺろんぱ at 2011年09月19日 09:19
今日はです。
昨夜は『孤高のメス』に涙ちょちょぎらせました(=^_^=)

新聞で(遅ればせながら)知ったんですが・・奇しくも本作ってば
10月22〜23日にブリーゼホールで舞台版が上演されるんですね〜

島の所在地も「仙台市の沖」と紹介されてました(⌒〜⌒ι)

ちょいと気になる・・
Posted by TiM3 at 2011年09月19日 11:53
TiM3さん、こんばんは。
『孤高のメス』は見逃しました。
録ってそうな友人に当たってみるつもりです。

ブリーゼでの舞台、実は私もごく最近知りました。
喋る案山子をどう表現するのか、ラサール石井さん演出っていうのも含めて(私も)気になっています。

観客の90%はきっと伊坂ファンでしょうね〜。
いいえ、100%かも・・・。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2011年09月21日 19:17
コチラには先日お邪魔した時に、「舞台」を観てからお邪魔しようと思っていたのですが、
私が密かに応援している恭子ちゃん所縁の吉沢悠くんが舞台で演るそうなので、
行きたいと思っていたのです〜。
もちろん、伊坂ファンではないですが、彼の描く「悪」に挑む「正義」は
いつも気になっているんです。
東京は今日が初日で、12日まで。。行けるかどうか、というところです、、。

24時間記事に関するコメント、嬉しかったです。が、
ああいう方は結構粘着ですので、ぺろんぱさんに害が及ぶことも考え、
コメントは(下の部分をカット)コピーして再度投稿しました。(編集はできないのですよ〜)
私なりに考えての行為でしたが、ちょっとブルー目だったので、有難かったです(u_u。
Posted by kira at 2011年09月30日 23:08
kiraさん、こんばんは。

そうですか、東京でのお芝居、もしも御鑑賞が叶った際は是非御感想をうかがいたいです!(^^)
大阪でも公演があって、実は私も日程的に行けるかどうか、ちょっと難しいかも、というところです。吉沢悠さん、主演をはられるのでしょうか???

仰る通り、伊坂氏の「悪」への姿勢は私も興味深いところです。舞台でどう表現されるのか、興味深いです。

コメントの件、私にまでお気遣いを頂いて本当にありがとうございました。
あのコメは過ぎた事を思い出させてしまうようで躊躇ったのですが、もしもほんの少しでもkiraさんのお気持ちをラクに出来たのだとしたら投稿してよかったです。
たまにしかお伺いできていませんがkiraさんのブログは好きです、頑張って下さい。
Posted by ぺろんぱ at 2011年10月01日 20:06
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