2011年11月22日

プリンセス


第18回大阪ヨーロッパ映画祭。

興味深い作品は幾つかありまして。『アマドールからのの贈りもの』『サラの鍵』『ヘアードレッサー』、そしてこの『プリンセス』。中でも『アマドールからの贈りもの』と『プリンセス』は観たかった作品です。
土日には行けなさそうな気配となって昨日(月)午前に半休もらって観てきました、 『プリンセス』(アルト・ハロネン監督 フィンランド映画)。
赤丸4つでも結局この一作で終わりそうで全くもって不甲斐ない私です(しゅん太郎)。

会場のエルセラーンホール(エルセラーンホテル5F)は綺麗で、完成間もなくの(昨年春竣工)いい匂いがしていて快適でした。コンサート用に供されることを主目的に建立されたのでしょうか、座席列の勾配が結構大きくとってあり音響もよいらしく、舞台中央にはグランドピアノも配備されていました。


さて映画。ぴかぴか(新しい)

(映画祭HPより)精神病院に入院したアンナは自らを"プリンセス"と呼び、王妃のように振る舞う。やがて彼女の存在はまわりを和ませ、患者たちを癒していく。しかし担当医はたとえ危険でも彼女を治療しようとするのだが。2011年フェストロイア国際映画祭特別賞。

プリンセス.bmp

    ※エルセラーンホテル前のポスターを携帯でカシャリ。ポールが邪魔(-_-)、撮り直せばよかった。


  実話をベースにつくられた映画なのだそう。
今から65年ほど遡った時代のフィンランドの精神病院から幕を開けます。

拘束衣というものがまだ当然のように使用されていた頃、それでもまだ幾らか自由で大らかな気風も残されていたその病院にアンナ(カトヤ・クッコラ)がやって来ます。
「私は王妃」、「人々を救うのが目的」と言い放つアンナにやがて少しずつ心を預けてゆく患者たち。

治療っていったい何なのだろう、率直にそう考えてしまいました。 病気を治すこと? 完治がなかったなら? そしてもし治ったとしてもその先にあるものが自身が望む姿でなかったとしたなら? 
「彼女(アンナ)自身、(今のままで)幸せそうだ」
新たな治療法を強行しようとするヨハン医師に対してロンカ医師が放つこの一言は、「That' all !」っていう感じで結局はそれが全てなのだとも思えて目から鱗が落ちたような一瞬でした。

切なさこの上ないのは、他の患者たちを救おうとしていただけじゃなかったアンナのこと。
意識的にせよ無意識的にせよ、彼女は自らを王妃と称することで母親の愛に飢えていた現実から逃避し、辛うじて命を繋ぐ術としていたように思えてなりません。
「私はアンナ・ラッパライネンよ。」
だから彼女がそう言えた時、もしかしたら「ああ、やっと(自分の人生を)終われる」と思ったのかもしれないなぁって感じた私です。

ヨハン医師にはヨハン医師なりの苦悩とアンナへの深い思慮があったことを思わせるラストがいいです、悲しいシーンなのですけれどね。

本作、1975年の映画『カッコーの巣の上で』と今年8月に鑑賞した映画『人生、ここにあり!』を想起させるものがありました。


スコッチお湯割り.bmp


 今日はスコッチのお湯割りを。映画祭のチケット半券を添えてみました。寒ぅなってきましたねぇ。



posted by ぺろんぱ at 20:21| Comment(5) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
これ、こんな映画だったんですか?!観ればよかった。今年のパンフレットでは初めのカラーページのみをチェックしていたんで...残念。レンタルDVDが出たら是非観たいと思います。

> 治療っていったい何なのだろう、
これって言えます、正常な人間とはっていっても何が正常なのかの定義がないし、平均的な、標準的なといっても違うし。
ぺろんぱさんが取り上げているロンカ医師の言葉
> 「彼女(アンナ)自身、(今のままで)幸せそうだ」
そうです、その人が幸せであれば良いのですよね。
(但し他人に迷惑をかけていなければというのはあります)

見逃して残念でした。
Posted by west32 at 2011年11月23日 23:32
(追伸)
今日、帰るとき私もエルセラーン入り口のこの張り紙(写真)を見つけ、同じように写真をとりました。入るとき全然気づかなかったですが、これって気づいたときには面白いですね。
Posted by west32 at 2011年11月23日 23:34
私も、これ観たい!と思ったのですが、
朝の上映のみだったので無理でした。

こうやって、ぺろんぱさんのレビューを拝読できて
良かったです。
映画祭、それも大阪という地方都市での上映という事もあってか、圧倒的にレビューが少ないので、
気になってた作品の事が知れて感謝!です。

精神病院を描いた映画では「17歳のカルテ」も、
私には思い出深い作品です。
Posted by ゆるり at 2011年11月24日 23:44
west32さん、こんばんは。

つい見落としてしまいがちですよね、あのモノクロのページは。私は上映スケジュールからチェックしたので先ず目に入ったのだと思います。(^_^)

病を治すことの最終の目的は本人の「苦痛を取り除き、本人がよかったと思える、幸せになれる」ってことだと思うのですよね。しかし間違えれば悲劇にも繋がってしまう、そんな危うい状況も描かれていて本作には複雑な思いも残りました。
結構ショッキングなシーンから幕を開けるもののところどころ小さな笑いも漏れるような“あったかさ”もある作品でしたよ。是非DVDになったらご覧になってみてくださいね。

お昼時間にエルセラーンの前を通ったら、映画祭の垂れ幕もエントランスの各パネルも撤収中でした。暫く置いておいてくださるといいなぁって思いましたが残念です。

Posted by ぺろんぱ at 2011年11月25日 20:21
ゆるりさん、こんばんは。
重なっていた貴コメントは一つにさせて頂きました(^_^)。当方のブログシステム上に問題があったのかもしれません、そうだとしたら本当にすみません。

さてさて、私もレヴューをアップしてからどうしても一つ気になるところがあって、他のブロガーさんはどう評していらっしゃるのだろうとレヴューを探してみたのですがその時は全く見つからず、まだまだ認知度が低い作品なのかなぁって思っていました。
それだけに、今は拙レヴューが自分本位で見当違いな内容でないことを祈る思いですが。^_^;

「17歳のカルテ」は未見です。
ウィノナ主演の映画ですよね。近いうちに観てみたいです。ありがとうございます。

Posted by ぺろんぱ at 2011年11月25日 20:31
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