「処前観(処分する前にもう一回観ておこう)シリーズ」の第4弾は『パリ空港の人々』(フィリップ・リオレ監督)です。
第3弾の『髪結いの亭主』の主演男優ジャン・ロシュフォール繋がりで。
この人のお顔は見ようによってはアクが強くてギラギラと煩悩の塊りみたいにも見えますが、笑った後で真顔に戻る時の一瞬の寂しそうな表情がすごく好きなのです(そういう役柄のせいかもしれませんが)。
幾作品か観ている中で一番好きな出演作は『タンデム』(パトリス・ルコント監督)です。
さて本作。
パスポートを盗まれてパリ空港に足止めになってしまった男アルチェロ(ジャン・ロシュフォール)が出会った、それぞれの事情で空港内で暮らし続けている人々の悲哀を綴った物語です。

※写真は映画情報サイトよりの転載です。
これは何と言っても、アルチェロと黒人少年ゾラ(イスマイラ・メイテ)との出会い、そして眩いほどに輝くパリの夜景の哀愁、これに尽きます。
両親に見捨てられた(としか思えない)ゾラはまだ一度もパリの街に降り立ったことがない。
パリの夜景の眩さに呆然自失状態で見とれるゾラ。その輝きは彼にとって希望と永遠の可能性を感じさせる魔法となったに違いありません。
満身創痍で手負いの身といえるセルジュ、アンジェラ、ナック。パリの夜を眺める彼らの表情には胸を締め付けられるような郷愁が過ります。華やかなイルミネーションが涙で滲む瞬間でした。
空港がホームとなってしまった彼らに、ふと中島みゆきの「遍路」という曲のワンフレーズを想い起こしました。
「・・・手に提げた鈴の音は帰ろうと言う、急ごうと言う
うなづく私は帰りみちもとうに失くしたのを知っている」(byみゆき)
それでも、ゾラのように一歩踏み出す勇気をセルジュたちにも持ってほしいと願わずにはいられません。アルチェロとゾラの旅立ちのように、裸足でもそこに道があれば歩いて行けるのかもしれないから。
アルチェロの奥さんスサーナ。彼女なりにアルチェロを愛していたのだと思うからちょっと可哀想でしたが、もしかしたらあのバリバリのスーツと超ハイヒールを脱いで歩いてみたら、何処かでアルチェロとの「再会と再開」が叶うかもしれないなぁって思いました。

北新地の<おでん・多加さん>での焼酎お湯割り。
こちらでいただくおでんは優しいお味で大好きです。
