2007年08月26日

天然コケッコー

  行ってまいりました、梅田ガーデンシネマ。観てまいりました、『天然コケッコー』(山下敦弘監督)。一週間、前売りチケットがお財布の中で「コケッコー」と鳴いておりました。

 なんていうかなぁ、・・・夏の暑い道を歩いていて、ふと過ぎ行く風に一瞬すぅっと汗が引いた時のような・・・飲みすぎた翌朝に優しい風味の白粥を一くち口に含んだ時のような・・・そんな感じの映画でしょうか。
(ちょっと両者の例えにトーンの違いがありますが・・・。)

story
くらもちふさこ原作の同名人気少女漫画を、『リンダ リンダ リンダ』『松か根乱射事件』の俊英山下敦弘が映画化。
脚本は『ジョゼと虎と魚たち』の渡辺あやが担当し、みずみずしい魅力を発揮するヒロインに映画初主演の夏帆がふんする。
小中学校合わせても、たった6人の生徒しかいない島根県の田舎の分校に、東京から転校生の大沢(岡田将生)がやってきた。
そよ(夏帆)は、都会の雰囲気漂う大沢に心ときめくが、彼の冷たく乱暴な言動に戸惑いを覚える。しかし、海水浴でのあるできごとをきっかけに、そよの大沢に対する印象が変化し始める……。 (シネマトゥデイより)

               半券.jpg               
 
  この映画に悪い人は出てきません
いわく有りの東京から帰ってきた大沢の母・美都子や、ちょっと喋り過ぎの“イタい”青年・しげちゃんやら、ちょっぴり変り種は登場するものの、それらはちょっとした風味付けになっていて、ほろ苦さを残す事はあっても不快さを残すことはありません。

学年は一つ違えどほぼ同級生とも思える3人の女子達の前に中々のイケメン君が登場することで「感情のもつれから苛めや仲間はずれに発展するのじゃないか」とか、田舎だからと海に遊びにゆくのにも子ども達だけで連れ立って行く姿に「ヘンな奴が出てきて事件になるのじゃないか」とか、そういう田舎ではない処に暮らすオトナである私の心配は杞憂と化し、それはそれは“ぷぷっ”と笑ってしまうほどのほのぼのとしたシーンに変化してしまうワケなのです。

この辺が原作が少女漫画であることを感じさせますが、もしかしたらそれは過疎の村で暮らす子ども達の間には本当に存在する姿なのかもしれません。
               天コケ.jpg                           
学校がね、「家」みたいなんです、そこに通う子ども達にとって。だから、児童・生徒はなんだか家族みたいで・・・。
それが温かくて、黒板に白とピンクのチョークで書いたメッセージや、紙で作ったバラの花やら、画鋲でとめられた掲示板やらがみんな懐かしいものとして、まるで昔住んでいた家に戻って来たような気持ちにさせてくれます。

山下監督はその辺りの描写が凄く上手くてポイント毎のシーンにゆっくり時間をかけてとても丁寧にきちんと撮っておられる印象を受けました。
些細なことにも決して時間とフィルムを惜しまない撮り方というのでしょうか・・・そしてその些細な事の中に実は観る者の心をきゅっと掴むモノが存在しているのですね。

  この映画で特に好きだなぁと思えたシーン、三つ

@祭りで置いてけぼりにされたそよが、祭りの舞台で舞う大蛇たちの煌びやかで勇壮な舞いとその迫力の音楽に、自分の惨めさを知って大粒の涙を流すところ。・・・いろんな孤独がない混ぜになって流れた涙が凄く切なくもあり、また清らかでもありました。

Aバレンタインデーに、そよと弟の浩太郎と大沢君が其々に取った行動。
皆がそれぞれを思いやる気持ちに溢れています。大沢君が浩太郎に手渡されたチョコをそよに見えないように持った右手がアップになる・・・ここはちょっと甘酸っぱい感情が湧きあがります。

Bそれから東京でそよが「(田舎と)同じだ」と街の雑多な音を耳に集めるシーン。・・・大都会で暮らす人は泣けるはず。

そして秀逸だったのがラスト。
窓からさす陽光で誰もいない教室にできる光と陰・・・そこに柔らかな風が入ってきて白いカーテンをそわそわと揺らします。
その教室をゆっくり右から左へカメラがなぞって行きます。観てきた今作品への想いがそこに凝縮されます。
                untitled.bmp


あと感じたこと三つ。

@そよのお父さん(佐藤浩市)と美都子の不倫疑惑はどうなのかな。
多分二人ともバカではないから、もう昔の二人ではない事に自ずと気付くでしょうね。
それにしてもお母さん(夏川結衣)は賢い! あのお母さんである限り、大丈夫、家庭は安泰。

A大沢君は言うことが辛辣だけど、その言葉は実に的を射ている・・・到底中学生とは思えないけれど、ナイーブさの漂うキスシーンには急にピュアな幼さを感じさせて中々の好演でした。

B私的に注目したいのが一年下の篤子(藤村聖子)
誰もが可愛いと認めるそよの影で、「自分は常に二番以下」と静かに認識していた彼女。「ダサい床屋」と(悪気はなかったが)そよに言われてもちゃんと友達でいられる彼女。
そんな篤子の視点でこの過疎地での出来事を撮ったら、多分『天然コケッコー』ではなくちょっとダークな青春モノになったかもしれませんなぁ・・・。


 そんなこんなで、くるりのテーマ曲の歌詞がずっと心に残る夏の終わりに鑑賞するに相応しい映画でした。
 ♪ことばは三角で、心は四角だよ まあるい涙よ、飛んで行け♪ 


 夏は過ぎ行くようですが、まだまだ暑く晴れ暑さでやっぱりジンに走ってしまいます。
                ジン・刀.jpg                     
この日は映画の後に久々の刀屋さんでの<ジンリッキー>
今日のジンはキングスバリーではなく、タンカレーでした。
キングスバリーに比べるとジンのいい意味でのクセは少ないものの、すっきり上品で切れの良いタンカレー、大変美味しゅうございました。




posted by ぺろんぱ at 13:53| Comment(4) | TrackBack(3) | 日記
この記事へのコメント
石見銀山、イイですねぇ・・
行きたいですねぇ・・

もう少しガソリン代高騰に揺るがない懐と度胸を手に入れたら・・行ってみたいですねぇ(=^_^=)
Posted by TiM3 at 2007年08月26日 23:36
TiM3さん、こんにちは。
当地は今作の完成で大盛り上がりだったみたいですよ。

映画では四季の移ろいも描かれていきますが
、私的には緑の風景も良かったのですが、海辺の情景がとても奇麗でいいなぁと観ていました。





Posted by ぺろんぱ at 2007年08月28日 12:32
ぺロンパさんのブログをみていってきました。
良い映画でしたね。連日疲れが残る私にとっては心地よい時間でした。

トラバさせて頂きます。
Posted by west32 at 2007年09月01日 01:29
west32さん、こんにちは。

心地よい時間になったのなら良かったです。
連日のお疲れはやはりボランティア活動での?
今から貴ブログにお邪魔して読ませて頂きます。


Posted by ぺろんぱ at 2007年09月02日 15:42
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「天然コケッコー」
Excerpt: もうすぐ消えてなくなるかもしれんと思やあ、ささいなことが急に輝いて見えてきてしまう 田舎の分校・生徒6人の学校に東京からの転校生がやってきた田舎を舞台にした映画。 大事件が起こるわけでも、大展開に..
Weblog: 永遠の自分探し  って迷子やん!!
Tracked: 2007-08-27 22:23

映画「天然コケッコー」
Excerpt:   とても純粋な   どこかホッとする映画で心が和みました   まだこんな温かい先生と生徒の関係が実際に存在するならば   うれしいのになぁ・・・..
Weblog: happy♪ happy♪♪
Tracked: 2007-08-29 20:39

天然コケッコー
Excerpt: 世界陸上ボラでちょっと頭の中がインターナショナルなので、普通の昔ながらの日本を味わいたいと思った。 ゆったりした田舎、のんびり、中学生の女の子 右田そよ の毎日を描く。年下の子供たちを連れてお姉ちゃ..
Weblog: westさんに映画を
Tracked: 2007-09-01 01:30