2007年09月02日

リトル・チルドレン


  昨日1日(土)の一本はシネ・カノン神戸で『リトル・チルドレン』(トッド・フィールド監督)

昨日は<映画の日>だったので大阪の映画館に行くのがちょっと怖くて(混雑振りを思うと)神戸での鑑賞を決めました。
当初はスルーするつもりだった今作ですが、ネット検索をするうち今作のカノンでの上映を知り、突如興味が湧き起り行ってきたものです。

2時間20分間一度も睡魔が偲びよる事もなく観応えのある映画だと感じましたが、一方では、全く解決されてはいないもと言える登場人物達其々の行く末に、消化不良に似た思いと悲しい余韻を残す作品でした。


story
 トム・ペロッタ原作のベストセラー小説を映画化したヒューマンドラマ。経済的に何不自由のない生活を送りながらも、どこか満たされない空虚さを抱えた大人たちの姿を映し出す。
 郊外の住宅地で夫と娘と暮らすサラ(ケイト・ウィンスレット)は、その生活にうんざりしていた。ある日、彼女は主婦たちの憧れの的であるブラッド(パトリック・ウィルソン)と話をする機会を得る。主夫である彼とサラは意気投合し、お互いの子どもを連れて会うようになり、やがては互いの気持ちを抑えられないようになっていく。そんな中、街では元受刑者のロニー(ジャッキー・アール・ヘイリー)が釈放され話題となっていた。 (シネマトゥデイより)

               20070219012fl00012viewrsz150x.jpg

  人間が様々に抱える心の問題がやがて形あるものとなり始め、一気に噴出し、恐ろしい事の起るラストへとスパークする感じは、何となく『アメリカン・ビューティー』を連想させましたが、今作はラストに「希望を見出しているかのように」描かれている辺りが『アメリカン・ビューティー』とは大きく違いましたね。

そう、それぞれに悩みや秘密を抱え、満たされない思いを他の生き方にすり替えて逃避して来たオトナになりきれないオトナ達の彼等も、最後にはあるがままを受け入れ、自分の居場所を見出して行く・・・文字通り、壮絶な「痛み」を伴って

観ようによっては確かに救いと希望に繋がる兆しはあったかもしれません。

けれど、「見出しているかのように」と書いた私には、すっきりとそれらが「希望あるもの」には映りませんでした

ロニー。
おそらく最も観客の心に深く印象付いたであろう彼。
彼が具体的にどんな罪で服役していたかは語られていないけれど、小児性愛者の彼が囚われたといったことで大よその想像は付きます。
住民を守るという大義の下に、彼の自宅に誹謗中傷のビラを貼り付けたり庭石に大きくDEVILと書く事は形を変えた犯罪で、断罪されるべきことだと思いますが、一方で「ほぼ100%に近い割合で性犯罪者は再犯する」と言われる実状を考えると、ロニーの居場所がないのはどうしようもないことだという気はします。

それでも「母思いの、一度の過ちに悩む心優しき男性」・・・と受け取れかけた中の、ある女性とのデート帰りの一場面。
あれはショックでした。あの時ロニーの取った言動は犯罪以外の何ものでもありませんから。

「Please be a good boy .」との母親の遺言に、ただ報いようという一心で取った彼の行動もまた、非情にショッキングなものでした。
あのナイフは別のことに使われると思って疑わなかった私に取ってのあのシーンは・・・。

だけど、決してそれで彼が救われるわけではないのです。彼の性癖と犯罪は心の問題。だからあの行為で<a good boy>になれることは、悲しいけれどないと思うのです。


ラリー。
元警官でありながら、一歩間違えれば犯罪者になりそうなエキセントリックな彼。
しかし彼もまた過去の過ちを深く悔いてがんじがらめになっていたのですね。
ラストでのロニーの救助。これには「魂の救済」を感じましたね。『クラッシュ』でマット・ディロン扮する警官が黒人女性を爆発寸前の車から救い出したシーンを思い出してしまいました。


ブラッド。
彼にとってのサラへの愛は、スケートボードで過ぎ去った青春を夢見ることと全く同程度だったのか・・・。
一大決心をしたはずの心が、スケボー一つで簡単に崩れ去るか??
呆れ果てます。ブラッドの子どもへの接し方がとても優しさに溢れていただけにあのけ結末はなんとも意外でした。考えてみればそれは彼が最も子どもだった事の象徴なのでしょうか?
ただ、彼がスケボーで何をどう吹っ切ったかは分かりませんが、それでは何も変わっていないし、第一、彼が戻ったにしても彼の家庭は元には戻らないでしょうね。
            
サラ。
彼女は自分だけを頼り愛してくれる娘ルーシーの大切さにもっと早く気付くべきだったのでしょうね。
それにやっとそれに気付いたかのように見せていたラストでしたが、ベッドで娘を寝かしつけるサラの眼が暗く深く沈んでいたように思えたのは私だけでしょうか
夫への不満?育児ノイローゼ? いえ、何よりも一番自分自身に満たされていなかった彼女なのでは・・・? 
だからきっと彼女の心の空洞は、これからも埋められることはないと思えてしまう・・・これも悲しい事ですが。
                070410_little_children_sub6.jpg

こんな風にいろいろと深く考えさせられた、いえ今も考えている今作品。
オトナはもしかしたら皆「オトナになりきれていないオトナ」なのかも知れません。だれもが自分の人生を完璧なものとは思っていないはず。
皆、別の何かを渇望し、また、望む事に疲れ一つ一つを諦め始めたりもする。
みんな同じなのだという気付くことで、少しはオトナになれるのかもしれませんね。

ケイト・ウィンスレットの体当たり演技、そしてジャッキー・アール・ヘイリーの名演、素晴らしいと思いました。

「今、ここにある、身近なもの」を大切にしようと思える映画でしたね。
疑問も残るものの、観てよかったと思える映画でした。


 さて、実は当初は大阪OS劇場に某作品を観に行こうかとチラと考えたりもしていましたが、映画デーということであっさり見送り。
でもそのOS劇場からちょっと歩いたところにとってもいいお店がかわいいあるので紹介だけしたいと思います。

お惣菜Barとでも言うべきでしょうか。私は実は友人に誘われて先日初めて訪れたのですが、ママさん手作りのお料理が本当にどれも美味しい、そしてビジュアル的にもGood!な楽しいお店です。
その名も<まんまや>さん。カウンターだけのこじんまりしたお店です。
      まんま鴨.jpg  まんまホタテ.jpg
  サラダ仕立ての鴨ロース & ホタテとマグロのアボカド
  (照明の加減で本来の色が写真に出てないのが残念)

               まんまドリンク.jpg
       この日は<里の曙>水割りで
 
お店には、職業・年齢・思想・各方面の趣味に至るまで種々雑多なお客が集まってくると仰る“オトナ”のマスターママさん。
「あんたたちの酔っ払い振りなんてまだ可愛いもんよ!」と言われた友人と私は、それこそママさんから見れば<チルドレン>そのものなのでしょうね。
posted by ぺろんぱ at 15:08| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
ばんはです。

ワタシの周辺でも、既に観に行かはった方がおります。
何故か老夫婦(?)と思しき観客層が目立っていたとか。。

彼らのハートをわしづかむ何かがあったのでせうか(・ω・)

私的には『アイリス』を観て以来、ウィンスレットちゃんの“女優根性”に感服することしきりです。
ハリウッドで一番「さらけ出す演技」を求道している方ではないでしょうかね。

その是非を論ずるつもりは(資格も)ありませんが、その姿勢を学ばねばならない女優さんも少なくないように思います。
Posted by TiM3 at 2007年09月03日 00:51
TiM3さん、こんばんは。

老夫婦・・・う〜ん、主要人物達は皆、設定は未だ30前から40代だと思うのですが・・・。ただ、ロニーの老いた母親がとても大切な存在で描かれていますからその方面でハートをわしづかむ何かが・・・?

ケイト・ウィンスレットは好きな女優さんの一人です。実は『タイタニック』での、結構酷評もあった時からずっと好きでした。
でも近年の「力演」は拍手モノですよね。
でも私は『アイリス』は未鑑賞でした、新たな「お題頂戴」、です。

それからこの映画、冒頭延々続くナレーションが実はちょっと気になりました。第三者が語る物語という演出だったのかどうか・・・余りそれが活かされていないような気がしましたが、弊ブログで言及せずに終わってしまいました。いいように考えれば、最初気になったのが段々忘れてしまうほど作品に没頭できたということかも知れませんが。
もしも今後、TiM3さんがDVD等でご鑑賞される機会がございましたらその辺りのご感想がどうなるか楽しみでもあります。
Posted by ぺろんぱ at 2007年09月03日 20:43
こんばんは〜。
ケイト・ウィンスレットには何故か複雑な感情を抱いてしまう私です。
『いつか晴れた日に』や『アイリス』、
『エターナル・サンシャイン 』等、
エキセントリックな部分を感じる役の時は、
あーっイヤな女!と嫌悪感を感じながらも
惹き付けられて観てしまいます。
かたや、『ネバーランド』や『ホリデイ 』
等の彼女は上品で好感が持てて、
時折感じる野太さも許せてしまうのです。
あれっ、よく考えてみると、どっちの場合も
存在感があるって事かぁ。
それだけ素晴らしい女優さんって事なんですね。
この作品の彼女はどんな感じなのか、
気になるところです。
Posted by ゆるり at 2007年09月04日 23:41
ゆるりさん、こんばんは。
「好きなのか嫌いなのか・・・分からない、でも気にはなってる俳優」っていう感じなのでしょうか。
「野太さ」の表現が(魅力とも取れるし嫌悪にも通じるし)それを言い得ているような気がしますが、とても的確な表現のような気もして「なるほど」と頷いておりました。

私は野太さがあるとすればケイト・ウィンスレットはやはり素晴らしい女優さんではないかと思います。でも何というか、理屈抜きでの気に沿う沿わないというのはありますものね。私も女優男優さんの“好き嫌い”にはどこでどう線を引いているのか全くもって分かりません。
でも何かの感情の作用はあるのでしょうね。

ただ、“(役柄の)キャラクター”だけでいうと実はこの作品の彼女は余り好きではありませんでした。
感情の移入がし辛かったわけですが、それでもその“ちょっと嫌な”部分をも上手く表現して“ちゃんと嫌に(?)”見せてくれていたのは彼女の力なのかな、と。
・・・深読みしすぎでしょうか^^;。

もしも今作もご覧になる事があれば、その辺りもお伺いしたいです(*^_^*)。
Posted by ぺろんぱ at 2007年09月05日 21:05
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/5296564
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック