「処前観(処分する前にもう一回観ておこう)シリーズ」の第5弾は『ダウン・バイ・ロー』(ジム・ジャームッシュ監督)です。
これはBSじゃなくてNHKの「世界名作劇場」とやらの録画でした。
1986年の作品で「down by law」とは刑務所のスラングで「親しい兄弟のような間柄」という意味らしいです(by ウィキ)。
ジム・ジャームッシュ監督が綴るクールでアウトローな男たちのロードムービー。
その男たちは刑務所で同房となったジャック(ジョン・ルーリー)、ザック(トム・ウェイツ)、イタリア人のロベルト(ロベルト・ベニーニ)で、ロードムービーとは“脱走の道行き”なのでした。

とにかく、オープニングとラストシーンがクールです!
退廃的でトム・ウェイツが聴かせる唄も破滅的な匂いに満ちているのですが、どこか突き抜けてる感があるオープニング。
孤高美の中にちょっとした泥臭さも滲ませ滋味深さを感じさせるラスト。このラストは画的にもカッコよくて最高に美しいのです。
似た者同士で反発しあうジャックとザックをロベルトが道化た役回りでつないでいます。いわば彼はテラー的存在なのでしょう。
ロベルトとニコレッタとの出会いと恋愛はいかにもお伽噺的ですが、その結果ロベルトは留まり、ジャックとザックの道行きとなり、あのラストを迎えるわけですね。二人の男の美学が匂い、味わい深いラストです。「お前こそリス狩りに行くのか」っていう台詞には思わず笑ってしまいますが。
ロベルト・ベニーニの存在で以て幾つもの滑稽譚がちりばめられていますが、ちょっと真面目に、「(覚えた英語を書きとめた)ノートを失くしてしまった!」と泣きそうになるロベルトにジャックが放った「生きてるだけで幸せさ。」っていう言葉には胸の奥の方が熱くなりました。
やっぱりいいです、ダウン・バイ・ロー。


本作に登場のトム・ウェイツ。
彼と言えば、やっぱりバーボンでしょう。 かく言う私の今宵のお供は恥ずかしながら安物のバーボンですが。