2012年02月14日

ルルドの泉で


 梅田ガーデンシネマで『ルルドの泉で』(ジェシカ・ハウスナー監督)を観ました。
興味深い他作品も続々「公開」となりながらも、ずっとこれが気になっていました。

story
不治の病により長年車椅子生活を送ってきたクリスティーヌ(シルヴィー・テステュー)は、奇蹟の水が湧き出ることで有名な聖地ルルドへのツアーに参加する。そこには、病を抱えた人や家族を亡くして孤独な老人、観光目的の主婦たちなど、奇蹟を求めて様々な人たちが参加していた。そんな中、別段熱心な信者でもなかったクリスティーヌにある日突然奇蹟が起こるのだが・・・。
      
                       ルルドの.jpg                              

                     ※story、画像とも映画情報サイトよりの転載です。

   
  人がそれを奇蹟と呼ぶなら、その人にとってそれは奇蹟であり、神の力によるものだと信じれば、それはその人にとって紛れもなく神の御加護となるのでしょう。数日間で終わる(終わることになるかもしれない)夢のような事象を幸福ととるか無情の出来事ととるかも人それぞれです。
信仰は人間の心の中それぞれにあって、それぞれが形成してゆくものなのかもしれないと、先ずはそんなことを感じたりしました。

とはいえ、本作は信仰や宗教の形骸化を描いた作品では決してありません。マリア像の前にひざまずき敬虔な祈りを捧げる老婦人の姿には心を打つものがありました。
「信じる者は救われる」とはよく言われることです。望みが叶う叶わないは別として、信じるという想い自体が自分を救うのだと思えます。
しかしそれでも人間は脆弱な生き物であり、それが悲しくもあり怖くもあります。
むしろ本作で描かれていたのは、そういった人間の、心の奥に潜んでいた思いもしなかった負の感情の炙り出しだったと思います。
(苦しみを背負うのは)何故、私なのか。
(奇蹟が起こるのは)何故、私ではないのか。
劇中の「神は自由だ」という司祭の台詞は逃げの言葉として響き、「自由」は「気まぐれ」という詞に置き換えられたかもしれません。
魂の救済以外に肉体の救済を願うのは罪なのか、そしてまた、「あなたの苦しみには意味がある」の言葉の持つ酷さは? 「すぐ戻るよ」と言いながら戻らないであろうあの人は?

聖なる地でいろんな感情が渦巻くさまをカメラは淡々と捉えていきます。出来事と人々の心の変化を、ありのままに(誰か一人に特別の感情移入することなく)描いていきます。

ラスト。
クリスティーヌの夢心地に酔うような笑顔が物語るものは何なのでしょうか。肉体は元に戻ったとしても、彼女は希望という名の幸福と共に生きてゆくことができるということなのでしょうか。背景に流れ続ける「Felicit・フェリチタ(幸福の意)」の歌声に、ともすれば残酷ささえ感じてしまった複雑な思いに包まれたラストでした。

それでも人は神に祈らずにはいられない。
私も、です。



                      JDストレート.bmp 堂島バルでJDストレート
                               
  最近ちょっとお酒の摂取量が増えたなと思って「節酒」の二文字をプリントアウトして部屋に貼ってみました。それを眺めつつ呑むお酒は自虐の味がして、「今さら小学生の書き初めみたいなことは止めるべし」と直ぐにはがしました。
節酒ばかりは自助努力のみ。(努力の跡、未だ見られず。)


posted by ぺろんぱ at 19:29| Comment(4) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
こんばんは。
予告どおり、見にいらしたんですね。

>ありのままに(誰か一人に特別の感情移入することなく)描いていきます。
そういう面が、好き嫌いを分ける作品という気がします。私は好きです、ハイ。

ちょっと突き放した視線で人間を描いているような感じがしました。
同時に、キリスト教の抱える多くの矛盾に対する皮肉も描かれてるようにも感じました。

私も、これまで何度か神様というかお天道様に祈ったことはありますが、
神様はそんなに怖くて絶対的な存在じゃなくて
敬愛する“大きなお母さん的存在”じゃないかなぁ等と
漠然と考えています。
Posted by ゆるり at 2012年02月15日 21:33
ゆるりさん、こんばんは。

はい、予告どおり、見に行きました。
うそつきぺろんぱにならなくてよかったです^_^;・・・と言いますか、本当に見送りにせず観に行ってよかったなぁって思いました。複雑な感情に包まれましたが、それはそれで考えさせられて。
ゆるりさんに宣言しておいてヨカッタです、ありがとうございます。(^^)

>ちょっと突き放した視線で

そうですそうです!そんな感じ。的を射たご表現ですね。

>キリスト教の抱える多くの矛盾に対する皮肉も

セレモニーを行う側の人間の“どうにも・・・”的な言動が(特段キリスト教信者ではない私にとってさえも)結構堪えました。
大義的に「救い」を説く神父さんに対して、「具体的に言うと?」と食い下がってたツアー参加者の言葉も印象深かったです。

>敬愛する“大きなお母さん的存在”じゃないかなぁ

なるほど、佳きお言葉です。
いただきました。(^^) 私もそう思って、これからもこの世のあらゆる神に祈り続けようと思います。

Posted by ぺろんぱ at 2012年02月16日 22:02
はじめまして。
ルルドの泉でを観て余韻さめやらず、いろいろネットでこの映画のことを検索していたらこちらに来ました。
記事を拝見して、またほかの映画の記事などもいろいろ読ませていただきました。
素敵なブログですね。
お酒も良いですね。

いくつかの私も観た映画の感想にもおこがましいですが、共感する感性みたいなものを感じさせていただいてここにあたってよかったって思いました。

ルルドの泉での映画は、たくさんのメッセージを持った映画でした。
映画終わってからも今もずっと余韻が残り続けてきています。
最後にクリスティーヌの胸の中をめぐる思いはなんだったのだろうと。

ラストシーンの歌をyoutubeで調べたらイタリアの男女のデュオが歌ってる古い歌みたいですね。
聴き返していると映画が思い出されて胸が熱くなります。

記事を更新されるのを楽しみにしています。
Posted by Jupi at 2012年03月02日 13:55

Jupiさん、はじめまして。
ようこそお越し下さいました、ありがとうございます。
他作品のページでもJupiさんに少しでも何かを感じて頂けた部分があったのなら、こんな嬉しいことはありません。重ねてありがとうございます。

私もいまだに本作の幾つかのシーンが鮮明に甦ります。やはり、(Jupiさんもご指摘の通り)あの最後のクリスティーヌの微笑みも。
泉を去った後のクリスティーヌに思いを馳せずにはいられません。

いろいろあって一昨年末から劇場通いがぐっと減ってしまいましたが、旧作品の鑑賞や映画意外のことも含め、ぼちぼちと綴っていきたいと思っています。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2012年03月03日 22:18
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『ルルドの泉で』お薦め映画
Excerpt: 舞台はルルドだが宗教色は薄く、意地悪なくらい冷静な目で、人々の心の葛藤を描いている。一見地味だが、かえってこのくらいの方が、ヒューマンドラマとしては面白い。奇蹟が起これば幸せになれるのか? 聖地への旅..
Weblog: 作曲♪心をこめて作曲します♪
Tracked: 2012-03-03 02:05