2007年09月16日

連休PARTT 題名のない子守唄

連休初日の昨日15日(土)はテアトル梅田で『題名のない子守唄』(ジュゼッペ・トルナトーレ監督)を鑑賞。

連休で、しかも封切初日の初回ということもあってか、テア梅は結構な混雑振り。ここはシートが狭小なので満席状態だとちょっと辛いです。加えてスクリーンの位置に比して座席が低目なので、前方の席に座ればスクリーンを見上げる格好となってそれもちょっと辛いです。

それでも公開を待っていた作品、背もたれ90度で腰掛け、居住まいを正して観ました。
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story
『ニュー・シネマ・パラダイス』の巨匠ジュゼッペ・トルナトーレの監督最新作
北イタリアの港町を舞台に、忌まわしい過去を抱える美しきヒロイン、イレーナの愛と謎に満ちた物語を描く。
 北イタリアのトリエステに長距離バスでやって来たイレーナ(クセニャ・ラポポルト)は、貴金属商を営むアダケル家のメイドになる。家事を完ぺきにこなす彼女は、アダケル夫人(クラウディア・ジェリーニ)から瞬く間に信頼を得るようになる。また、4歳になるアダケル家の娘テア(クララ・ドッセーナ)とも心を通わせ合うようになるが……。 (シネマトゥデイより)


  結果的には期待感がそがれ、ちょっと残念だった作品。

今までのトルナトーレ作品のイメージとは全く違う、サスペンスタッチの作品でした。
今作でもタッグを組んでいるエンニオ・モリコーネの音楽は、そのミステリアスなドラマ性を大きく盛り上げるものでしたが、時として耳障りなことも・・・。
前半は殆どのシーンでモリコーネの音楽が響いていた気がしますが、サイレントに映像を追いかけたいところもあり、音楽が邪魔に思えた部分も結構ありました。
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冒頭の妖しく危険な香り漂うシーンや、フラッシュバック的に挿入されるグロいシーン、そしてヒロイン・イレーナが執拗に何かを探そうとしているシーンなど、その張り詰めた展開は、総じてサスペンス作品としては楽しめるものだったといえるでしょう。

オープニング、テロップで「結末は決して人にお話にならぬよう・・・」という監督の言葉が映し出されるに至っては、もう安易な予見など許されない凄い作品なのだと期待で頭が膨れ上ってしまっていました。
事実、2時間5分、画面をずっと食い入るように見つめていた私です。けれど、観終わって劇場を出た後では、不思議と尾を引くものが何もなかったのですよね・・・。


サスペンスとして謎解きの面白さを追及したかったのか、映画の謳い文句そのまま「ヒロインの母性に迫りたかったのか・・・。

前者とすれば、イレーナとテア以外の人物がすべて、思わせぶりでありながら中途半端な描かれ方で終わってしまっています。
イレーナと恋人テッドの愛、売春と乳児売買組織の悪と金、テアの両親、とりわけ母親の謎の行動・・・、どれも凄く思わせぶりでありながら結果的にはどれも尻切れトンボ。
それから事を起こさしめるに至る動機みたいなもの・・・これが人間一人を(結果的には)植物人間たらしめる(或いは死に至らしめていたかもしれない)背景としては“弱い”
人を殺めるならばそこには怒りや復讐の強い念があって然るべきと私は思うのです。
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後者とすれば、私にはイレーナのあの言動が母性あるものと感じられなかったことに大いに疑問が残ります。
テアの闘争心を培わせるためだったらしいけれど、自分が売春婦時代に受けた“おしおき”をテアに課して怒りを触発させるなんて、
そんなのは慈愛に満ちた教育でも母性でも何でもないと私は思うのです。
むしろどちらかと言えば私には、母性を(母性を発揮する機会を)取り上げられた女の、やり場のない憎しみと見て取れました。
もっと言えば、幼児虐待やSMの世界を思い起こさせてある意味ゾッとしました。
その一連の行為を「ゆるぎない母の愛(映画のコピー)」だと言われても困惑するばかりで・・・。
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しかしながら、イレーナとテアの間に芽生える不思議な感情の絆は、観ていて女のそこはかとないパワーを感じ、こちらにはいい意味でのゾクッと感がありました。
あれは親子というより、(年はかけ離れていても)女同士の絆だったと私には思えました。
演じる両者とも素晴らしかったと思います。この二人の女優はよかった、とても。

ラストシーンも、成長したテアがとても美しく、温もりが胸打つものだっただけに、全体として作品の着地点が定まらず、私にとっては凄く残念な作品でした。


 昨日は阪神百貨店・11階グリーンルームで恒例の秋のワイン際あり、(他の用もあったので)30分だけ参加して参りました。
イタリア映画の後だったので「グラーッツェ!」「コメスタ!」「ティアーモ!」の“ノリ”でイタリアワインのコーナーへ。

     バルバレスコ.jpg  img10312629504.jpg ボトル画はHPより転載
 
<プロドュットーリ・デル・バルバレスコ03年>
華々しい香としっかりとしたタンニンの力強さで余韻の長い素晴らしいワインでした。

ご馳走様でした。チャオ!


posted by ぺろんぱ at 18:13| Comment(2) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
ぺろんぱさん、こんにちは〜
絶賛の嵐の中、私もいまひとつ乗れず、
いやなところ、異議のあるところばかり気になってしまい
ついには感想を公表するのも断念しました。
どうも私はこの監督との相性も悪いのでしょう。
『パラノイド・パーク』が観たいです。
観たらまたお邪魔させてくださいね♪
Posted by fizz♪ at 2008年06月07日 23:07
fizz♪さん、こんにちは。
そうなんですね、疑問に感じたところが見逃せない点だっただけに、つらいものが残りました。
そう言えば私はあの名作『ニューシネマ・・・』にも実は大きな<疑問点>があるのです。
まあそれは別にして、折角ご覧になったのにアップされないとは残念です。
しかし『パラノイド・・・』でのレヴューは楽しみにさせて頂きますね!
fizz♪さんのブログ、とっても綺麗な背景なのでお邪魔するたびに深〜い森に入っていくような神秘性を感じます。
Posted by ぺろんぱ at 2008年06月08日 11:14
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映画「題名のない子守唄」(2006年、伊)
Excerpt:       ★★★★☆  「ニュー・シネマパラダイス」(1989年、伊)の巨匠 ジュゼッペ・トルナトーレが撮ったサスペンス。 今年本邦で公開されたヨーロッパ映画では 「ブラックブック」(2006年、蘭..
Weblog: 富久亭日乗
Tracked: 2007-10-01 07:59