「処前観シリーズ」の第12弾は『ナイト・オン・ザ・プラネット』(ジム・ジャームッシュ監督 1992年作品)です。
5つの都市それぞれで、深夜のタクシードライバーと乗客たちとの人間模様が綴られたオムニバス映画です。

※画像は映画情報サイトよりの転載です。
ジャームッシュ監督の、一種独特のだらだらと投げやりなような?どうでもいいような?日常の一コマ一コマが、タクシーの中という極めて限定された小さな空間の中で展開していきます。
ドラマ性が、あるようで無い。
実際交わされる会話や起こった出来事はあり得ないような強烈さもあるのですが、それぞれのストーリーは起承転結的な完結をみません。けれど妙なリアル感がそこにあるのは、やはり人間の持つ、自分でも気がつかない“可笑しみ”みたいなものがベースにあるからでしょうか。
メッセージ性やテーマは皆無とよく評される本作ですが、私は結構、教訓めいたものやそこにあるテーマみたいなものを薄っすらと感じないではないのですけれど。うっすらと、呟きのようなトーンで。
例えば第一話<ロサンゼルス 19:07>では
「自分にとって価値あることが人にとっても価値あるものとは限らない」、とか。
第二話<ニューヨーク 22:07>では、
「家族を持つ者と、持たない者。孤独は緩やかな死への扉かもしれない」、とか。
第三話<パリ 4:07>では
「大抵の人間は目が見えるから“感じる”ことができない、そしてただ右往左往するだけなのだね」、とか。
第四話<ローマ 4:07>では
「偶然の出会いがもたらす不幸もある」、とか。
第五話<ヘルシンキ 5:07>では
「幸と不幸は他者と比べるものなんかじゃない」、とか。
この第五話の中では思いっきり他社との不幸比べが描かれているので、いわば“逆説的に”ね。
そして「それぞれの不幸を背負った人間たちにも夜明けは来るよ」っていうようなこととか。
事実、この第五話のパートで映画は夜明けを迎えるのですよね。
あー、こうして書いていくと、全話に「幸も不幸も定義なんてない」ってことを感じますね。ある人がある人を不幸で可哀想って思っていても、当の本人はそれなりに幸せだと思っていたり、自分は不幸極まりないって思っていても自分が気付かないところでかけがえのない幸せを持っていたり。
ユーモラスな展開でもあるのに、車窓からのそれぞれの夜の街は「ここではないどこか」を感じさせ、寂しげでちょっと切なくもなります。
<L.A>のウィノナ・ライダー、<パリ>のベアトリス・ダルがなかなかイイです。
<ヘルシンキ>では、マッティ・ペロンパーやカリ・ヴァーナネン、サカリ・クオスマネンなどのカウリスマキ組が出ててとても嬉しいです。
エンディングのトム・ウェイツの歌も聴かせる、地味に、こそっと、味わいのある作品だと思います。

誰にも等しく「ナイト・オン・ザ・プラネット」はやって来ますね。
先日の私の「ナイト」は久々の堂島サンボアでのジンでした。
まだ観れてませんが、気になってる(なり続けてる)1作です。
『デッドマン』も『リミッツ.オヴ・コントロール』もそうでしたが、
この監督さん・・意外とワタシの肌に合う(?)気がします。
『ゴースト・ドッグ』も観てみたいなぁ・・
TiM3さん、再びこんばんは。
こちらにもお越し下さり嬉しいです。
>この監督さん・・意外とワタシの肌に合う(?)気がします
そうですか!ならば是非にご覧くださいませ(*^_^*)。
そういえば、『リミッツ.オヴ・コントロール』も撮影監督はクリドイさんがされていたと思います。
クリドイさんとの相性もピッタリなのかもしれませんね!
『ゴースト・ドッグ』は未見です。私もインプットしておきます。
そんなジム・ジャームッシュの映画は大好きです。
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を見た時は、目から鱗が落ちたというか。
『ナイト・オン・ザ・プラネット』のウィノナは良いですね。
ところが、ベアトリス・ダルがどんな役だったのかどんなお話だったか、
記憶がすっぽり抜け落ちています。これは再鑑賞しなければ。
『ゴースト・ドッグ』は意外と見てない方が多いのかな?私も未見なので気になります。
ゆるりさん、こんばんは。
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』も私は未見です。そちらも要チェックですね。
ジャームッシュ監督はアキ・カウリスマキとも親交が深くて、そんなところもアキ贔屓の私としては好もしいところです。(*^_^*)
『ナイト・オン・ザ・プラネット』のベアトリス・ダル、是非是非再度のご鑑賞で思い出して下さいね〜。再見されて多分、きっと一目で“ビビーン!”とご記憶が甦ってくることと存じますよ〜。それくらい強烈なキャラです。(*^_^*)
実はこの一週間、いろいろあってPCを開けておりませんでした。
先程ゆるりさんのところにお伺いいたしましたら良い作品をたくさんご覧になっていらっしゃいましたね!そのうちの某作品で追っかけさせて頂きますね(*^_^*)。
先日やっと観ました。
もう、まったく私の好みの映画です。
トム・ウェイツの歌も最高ですね!
映画のBGMも。
そこはかとなく哀愁とペーソスを感じさせる音楽は、この映画の映像、物語にぴったりです。
すべてのストーリーが好きですが、特には最初のロサンジェルス、そして最後のヘルシンキ編が好きかなと。
最後に希望を感じさせるのが良いのかもしれません。
コメントのお返しが遅くなってすみません。
そうですか、Jupiさんのお心に直球で届いた作品でしたか!(*^_^*) レヴューを綴った私も嬉しいです。
ロサンゼルスの二人は(シチュエーションは違えど)ああいうことってありますよね。自分の価値観が誰かの何気ないひと言とかでぐらっと揺らぐ瞬間とかが。
ヘルシンキ編は、やっぱりあのパートで映画そのものも夜明けを迎えるっていう流れがいいですよね。
今、この瞬間にも、世界のあらゆる都市で、あらゆる町で、いろんな人生が紡がれているのですねー(しみじみ)。