シネリーブル神戸で『ファミリー・ツリー』(アレクサンダー・ペイン監督)を観ました。
この日は「こうべ祭り」のイヴェントでリブ神の入ってる朝日ビル前で<KOBE JAZZ LIVE STREET>が開催されていました。鑑賞後は奏でられていたジャズの調べに暫し足を止めました。
story
祖先の広大な土地を受け継ぎ、ハワイで妻と2人の娘とともに暮らすマット・キング(ジョージ・クルーニー)。受け継いだ土地の売却の準備を進める中、妻のエリザベス(パトリシア・ヘイスティ)がボートの事故でこん睡状態に陥ってしまう。さらに、エリザベスには不倫の相手がおり、離婚まで考えていたことが発覚。友人や長女アレクサンドラ(シェイリーン・ウッドリー)もその事実を知っていたことにがく然としたマットは、自らの人生を見つめ直すことになる。

※story、画像とも、映画情報サイトよりの転載です。
ハワイの島々の海は深く澄んでいて、柔らかいエメラルドグリーンの色を湛えていました。ハワイの空も、あんなに優しい青なのですね。
実は私はハワイには行ったことがなくて、観光でメジャー化した“絵に描いたような”色彩のイメージが先立っていたのです。けれどハワイの島々で暮らしを営む家々は柔らかで穏やかな空気に満ち、マットが受け継いでいた広大な原野は、人が人としての原点に立ち返れるかのような神々しささえ感じられたのでした。
残された三人に心からエールを送りたくなる、しみじみと“家族”を感じるラストでしたが、もしかしたら、マット達が暮らしていたのがあのハワイの島でなかったら、コトの顛末は違ったものになっていたかもしれません。そう思ってしまうほど、陽光の輝きと大自然のもたらす力は大きいのだと感じました。
しかし、勿論それだけではありません。エリザベスの事故で彼女を取り巻いていた誰もがもがき苦しみ、しかしそこから逃げようとせず、それぞれに向き合う姿がありました。
とりわけ、夫であり二人の娘の父親であるマット。誇張や虚飾のない等身大の狼狽振りと煩悶、葛藤が感じられて、女性で子供もいない私でも彼の気持ちに寄り添いたいと思えるほど。(あのコテージでの浮気相手との会話。・・・殴らなかったね、マット。)
終始“小さな可笑しみ”を忍ばせながら、要所でぎゅっと情愛に迫って締める演出は涙を誘います。
マットの煩悶に一族が相続した広大な土地の行方を絡めたのも興味深いです。
単なる“報復”(取引の相手が実は・・・)ではなく「大切なものは護り続けたい」という“気付き”から翻したマットの決意でしたが、気色ばみながらも最後はマットの意をしかと受け止めた一族の大叔父には雄々しさも感じましたね。(演じるはボー・ブリッジス!ロン毛のボー・ブリッジス!!です)
趣を添えていたのは長女のボーイフレンド。
常識はずれで空気を読まないボーイは、結局はあるがままを受け止めてる、ある意味一番達観していたボーイだったのかもしれない。
残されたもの達の人生は続く。
痛みは痛みとして心に刻みながら、前を向こうと思える愛しみに満ちていました。
ただ・・・妻であり母であったエリザベスにもきっと言いたい言葉があったはず。彼女には彼女しか分かり得ない人生があったのですから。
登場からずっとあちこちにチューブを繋がれたまま昏睡状態だったエリザベス。最後に「彼女の人生」を感じさせてくれるワンシーン、ワンカットでもあったらよかったのになぁ・・・って思いました。切実に。

日置桜。
美味しかったです、大沢たかおさんに注いで頂いたし。
もとい、大沢たかおさん似の店員さんに注いで頂いたし、です。 某焼き鳥やさんにての乾杯。
アレクサンダー・ペイン監督、好きなんです。
私も、水曜日の席をネット予約しましたので、
近々再訪問させていただきたいと思います。
今回は、読みたいところをグッと我慢して。
おじゃましました。
ハワイが舞台の作品って、意外とハズレの少ないような・・
『50回目のファースト・キス』
『パールハーバー』
『バトルシップ』
って・・外れとるのも、あるし(=^_^=)
ゆるりさん、こんばんは。
アレクサンダー・ペイン監督は『サイドウェイ』を撮った監督さんですよね。
ゆるりさん、お好きなのですね〜。
そう言えば私も、『パリ・ジュテーム』の中で同監督が撮った「14区」は18編のオムニバスの中でも特に気に入った作品だったと拙ブログに記しておりました。ゆるりさんにちょびっと近付けた感じがして嬉しいです(*^_^*)。
今は『マイ・ライフ、マイ・ファミリー』を観てみたいと思っています。
是非ご再訪願います!
ゆるりさんのレヴューも楽しみです〜!
悲しきかな、記して下さってる3作品とも未見です。
(どれがハズレてるヤツですか??? ^_^; )
ハワイと言えばやっぱり『フラガール』かなぁ・・・って、アレはハワイが舞台じゃないってば !!!
お時間がございましたら本作も是非ご鑑賞いただきたいところです。(*^_^*)
まさかこんなに切実な問題が山ほどあるなんでビックリですよ。
ワタシだったら相手を探さないと思います。
このまま静かに妻を行かせてあげたいというか
でも、それだと娘との確執も修復しなかったんですよね。
あのボーイフレンドがマットのこと「はい!ボス」って返事したところから胸が熱くなりました(笑)
>相手を探さないと
そうですか、そうですねぇ。
しかし知りたいという思いも解るのですよねぇ。別の男性に心を向かせてしまった自分自身と対峙するためにも。でもそれって頭の中で考えたことだし、もし本当にその立場になったら私も探さない選択を
するかもしれません。
いろいろ考えさせられましたね。itukaさんの作品鑑賞に対する真面目なご姿勢が伺えて素敵だなと感じました。
あのボーイフレンド、イイ面だけを伸ばしていってもらいたいですよね(^_^;)。
私も「マイ・ライフ、マイ・ファミリー」気になってます。日本未公開作品らしいですが。
監督さんは別の方ですが、ローラ・リニーやフィリップ・シーモア・ホフマンなど、
俳優陣からして興味津々な作品です。
それから「パリ、ジュテーム」の“14区”は「最も印象的だった」と
私もブログに記していました。
こちらこそ嬉しい限りです!あとでその記事を再読させていただこうと思います。
さて「ファミリー・ツリー」ですが、
正直に言うともうちょっと辛らつな部分というか、
皮肉の効いた笑いみたいなところが欲しかったかも。
ちょっと期待値が高すぎたのかもしれません。
それと、妻・エリザベスの人となりやマットとの関係性などが
見えてこなかったのがちょっと残念でした。
あのままでは、贅沢好き・派手好みで軽薄なタイプの女性のような
印象が残ってしまって気の毒な気もします。
ジョージ・クルーニーのことは、ますます好きになりましたけど(笑)
「マイ・ライフ、マイ・ファミリー」は別の監督さんだったのですね!制作総指揮がペイン氏だった由・・・すみません!ウィキか何かでペイン氏のページを見て早合点してしまったみたいです、お恥ずかしい。でも仰る通り、興味津々の作品ですよね。
妻・エリザベスを巡ってのご意見は私もまったく同感です。
彼女だけが何も語ることを許されていなかったですよね。語れないなら語れないで、何か彼女の人生を物語るシーンが私は欲しかったです(これは拙レヴューでも書いてたことですけど)。
G.Cは私もまた更に好きになりましたよ。(*^_^*)
この俳優さん、2の線も3の線もどちらも違和感なく演じられる御方ですよね。
(大物俳優)G.OならぬG.C・・「意図的な」無様な演技が光ってました。
汚いプールでひと泳ぎしたくなりましたね。 ←なるかい!
>「意図的な」無様な演技が
あの狼狽振り、でしょうか。(^^)
今晩、楽しみに貴ブログにお伺いしたいと存じます。
汚いのはイヤですが(^^)、やっぱり自宅の庭にプールがあるっていいですよねぇ。
六麓荘辺りで見たような。今度買おう。←買えるかい!
私もハワイは行ったことなくて、また関心もまったくなかった場所でした。
でもそれはこの映画でまったく変わりました!
ほんとに観てよかった。
私は特にハワイアンミュージックがすっかり好きになってしまいました。
癒しとかいう以上に神々しさまで音楽に感じました。
それもきっとハワイの大自然と人間の感情がスクリーンで融合しあって余計にそう思えたのかもしれません。
Jupiさん、こんばんは。
ハワイアンミュージック、軽快なのに柔らか〜い優し〜い音色が滋味深さを感じさせます。
ハワイの大自然も思い描いていたものとは違いました。
>ハワイの大自然と人間の感情がスクリーンで融合しあって
そうですね。
どちらか一方だけではJupiさんの感覚を覆すような力が生まれなかったのかもしれませんね。そう考えたら、やっぱり映画は総合藝術作品なのだなぁ…って思います。