梅田ガーデンシネマ・サービスデーだった水曜、午後から半休をもらって『オレンジと太陽』(ジム・ローチ監督)を観てきました。
story
マーガレット・ハンフリーズ原作の「からのゆりかご 大英帝国の迷い子たち」を基に映画化した、英豪両国による児童移民の実態に迫る作品。本作が映画監督デヴューになるのはイギリスを代表する巨匠ケン・ローチの息子ジム・ローチ。
1986年、マーガレット(エミリー・ワトソン)は、イギリスのノッティンガムでソーシャルワーカーとして働いていた。結婚して子どもにも恵まれた彼女は、ある女性から衝撃的な告白を聞く。当時児童養護施設にいた4歳の彼女は、何と船でノッティンガムからオーストラリアまで送られたというのだ。彼女はそのことをきっかけに、本件に関して調査を進めていくが…。

※story、画像とも映画情報サイトよりの転載です。
とてつもなく大きく立ちはだかる壁に、私なら為す術もなく“時代のせい”にして逃げ込んでしまったでしょう。よしんば奮い起ったとしても、暴徒に遭遇した段階であっさり身を引いてしまったことでしょう。
二つの大国と、共犯意識で口を閉ざす教会と慈善団体。壁はあまりに高く厚く、危険でもありました。
生命を脅かされ、PTSDにまでなりながら尚マーガレットに活動を続けさせたものは何であったのか。
「あなた方を糾弾する積もりはない。ただ彼らに自分が誰であるかを教えてあげたいだけ。」 これは劇中のマーガレットの言葉です。
過ぎ去った惨い過去を事実、現実として受け入れている彼ら(それだけでも筆舌に尽くしがたい辛苦)ですが、今もなお求めてやまないものがありました。それは「自分が誰であるか」ということ。自分の出自、アイデンティティー。自分を産んでくれた母に会い、自分の生の原点を知りたいという思いでした。人間としての切実な、しかし当たり前のこの思いに、全てを投げ打って応えようとしたマーガレット。
それを為したものは、(文字にしてしまうとそこらじゅうに氾濫しているこの一語がチープに響いてしまうかもしれませんが、でも、)やっぱりこの一語でしか言い表すことのできない、それはマーガレットの「愛」なのだと思いました。
埋もれていた事実に光を当てたジム・ローチ監督は、マーガレットと同様、過去の罪を糾弾するよりも、苦しみを背負いながら生きてきた多くの人々の、声にならなかった心の叫びにそっとマイクを向けてくれていたように思いました。
被害者の一人であった心を閉ざしたレン(デヴィッド・ウェナム)に「今はあんたがいてくれる。」と言わしめたマーガレット。悲痛の半生と引き換えにできるほど彼女の存在が大きいものになったということに、静かに心を打たれたのでした。
マーガレットを支えた夫マーヴと二人の子供たちの存在もマーガレットの偉業の大きな要因となったはず。
疲れた足のブーツを脱がし、温かいコーヒーを運んでくれる存在がマーガレットにはあったわけですから。そして、幼い息子ベンの「ママをあげたよ」の一言はずしりと響きました。この言葉の重さは引きずりました。どうかそのことがベンの未来に影を落とすことのないように、と。
酷く悲しい真実に正面から向き合ったマーガレット。
重厚な作品でしたが、テーマ曲「WILD WORLD」の「この世はワイルド、微笑みだけじゃ乗りきれないよ」の歌声(Cat Stevens)が、そっと肩に手を置いてくれたように感じた、そんな鑑賞後でした。
久々の六甲道・刀屋さんでの日本酒三昧。 全て原酒タイプで、空腹で味わうと心の中の幽谷にトリップできます。




めずらしく体調不良で挫折してしまいました。
エミリー・ワトソンが主役の社会派ドラマという事で興味を持っていましたが、
監督はケン・ローチの息子さんなんですね!
社会の闇に目を向ける重厚な作品というテイストが
親子で共通しているように思えるのが面白いですね。
そういった作品をつくってきた父を尊敬しているのかな〜。
拝読した限りでは、鑑賞後どんよりとした気分になる程暗い作品でもない感じですが、
いかがでしたでしょうか?
残念ながら劇場鑑賞は見送る事になってしまいそうですが、
ぺろんぱさんのレビューで作品の雰囲気だけでも味わえて感謝!です。
ご体調は如何ですか。快復されましたでしょうか。
事実は事実として、かなり辛いものもあります。
しかし結果的に、それぞれが自分自身の中で決着をつける姿が描かれているので救いはありました。
それと、過去の出来事よりも自分のルーツを探ろうとする前を向いた姿が描かれていたのも“どんより”で終わらなかった一因と思います。(あと、やっぱりテーマ曲「WILD WORLD」の歌声ですね、やっぱり(^^))
ジム・ローチ監督、父親の後姿に何かを学んだのでしょうかね。