2012年06月24日

八日目の蝉 (地上波上映 録画鑑賞)


  録画撮りしていた地上波初放映『八日目の蝉』(成島出監督)を、今夕観ました。

角田光代さんの原作小説を映画化した作品で、不倫相手の子どもを誘拐して我が子として育てる女・希和子の逃亡劇と、事件後、実の両親のもとに戻り大人になった子ども・恵理菜の葛藤を描いた物語です。 (← Wikipediaより一部抜粋、画像は映画情報サイトより転載させて頂きました。)


八日目の蝉.jpg



NHKのドラマ版を初回観ただけだった私は、今日このタイトルが示す意味を初めて知りました。
恵理菜だけじゃなくこの物語に八日目の蝉はいましたし、物語を離れても八日目の蝉たちは此処かしこに居るのでしょう。いいえ、形は違えど、もしかしたら人はみな八日目の蝉なのかもしれません。

ただただ圧倒され尽くしたというわけではなかったものの(消化不良的なところもあったので)、あの船着場シーンでは素直に泣け、恵理菜の「本当はここに帰って来たかった」の言葉にも胸を衝かれました。
スクリーンで観たかったですね、やはり。小豆島での風景描写は素晴らしかったです。今そこに存在しているのに手を延ばせば現実のものではなくなってしまいそうな、薫(=恵理菜)との幸せを怖々胸に抱いている希和子の心を映し出したような美しさと儚さでした。


深く考えさせられる作品であったことは間違いありません。
私なりの答を見つけたいという想いがあり、「映画と原作は独立した違う作品」であるとは思いつつも是非原作を読んでみたいと思う今です。

母娘とは何なのか、母性とは何なのか
愛することの意味、大切さは十分に教えられた気がしましたが、その一方で、逃亡のホテルの一室での希和子の授乳シーンにこそ彼女の罪深さを最も強く感じた私の中のこの矛盾と違和感はいったい何だったのか。
父性の欠落。
恵理菜の家族世界もエンゼルホームでの世界も父性が欠落していましたが、コトの元凶でありながら恵理菜の父・丈博(田中哲司)の存在が余りに希薄すぎて悲しいほどでした。それが意味するものは何なのか。
実母・恵津子(森口瑤子)。
性格はどうであれ彼女も十二分に悲しみ苦しんだ人であるのに、何故か作品では感情移入がなされなかった。そういう人物造型であったのか否か、これは「母娘とは」の問いに通じるものがある気がします。
そして、エンゼルホーム。
背景と経緯はあるにせよ、ホーム外に暮らす家族との断絶を招き千草(小池栄子)のような八日目の蝉を作り出したということでは、彼らは捕らえられ刑事罰を課せられた希和子と同罪ではないのか。その罪深さは映画としてどう描かれていたのか、或いはどう描かれるはずのものだったのか。

・・・知りたいと思います。

しかし本作は永作さんの力演がとにかくすごかったですね。そう思いました。


現代シネマ1〜7.bmp ズブロッカ.bmp


 拙ブログを読んで下さっているというKさん、「古い本なのだけど」と前置きして下さった上で映画監督評論を7冊ご恵与くださいました。ありがとうございます。
二作品を観たものの実は苦手感を抱いたままだったゴダールあたりからいってみましょうか(^^)。中身はちょっと私には難しそうですけれど。

年に何回かふと飲みたくなるズブロッカをオン・ザ・ロックでいただきながら。



posted by ぺろんぱ at 19:58| Comment(8) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
小豆島、夜の棚田にたいまつ(虫送り)の映像は、本当に綺麗でした。
この映画を見て、小豆島に行ってみたくなりました。

ズブロッカというお酒に興味を持って調べてみましたが、ウォッカなんですね!
“酒豪”と呼ばせていただきます(今さら?!)
Posted by ゆるり at 2012年06月24日 22:11

ゆるりさん、こんばんは。
そうでしたね、ゆるりさんは確か公開時にご覧になっていたのですよね。

小豆島の「虫送り」、ネットで調べてみたら、本作のロケがキッカケとなって数年ぶりに復活した行事のようですね。そういうのって、喜ばしいことだなぁって思いました。私も、小豆島は子どもの頃に家族と旅行したきり?だったと思います。また訪れてみたいです。

ズブロッカ、独特の風味があるのです。
機会がございましたら是非一度口にしてみて下さいませ。
酒豪??いいえ、単に「お酒好き人間」なだけです、私。

Posted by ぺろんぱ at 2012年06月25日 19:54
先日テレビで放映してたものですね。
私もそれを見ようと思って録画してます。
まだ見てないのですが。

角田さんのファンで原作も読みました。
許せないと思う気持ち、逃げてと願ってしまう思い、そして痛いほど感じてしまう母性。
複雑な思いで読みました。
映画のほうを見るのが楽しみです。
Posted by Jupi at 2012年06月26日 17:41

Jupiさん、こんばんは。
私も今日、本を購入しました。明日から早速読みたいと思います。
角田さんの小説は確かこれが3作目ですが、長編は初めてだったかと思います。

私は、実は千草(映画では小池さん演じる)の人物描写に最も興味を抱いています。
そのあたりを楽しみに(且つ視点を据えて)読み進んで行きたいと思っています。
Posted by ぺろんぱ at 2012年06月26日 20:59
地上波デジタルでいよいよ放送されたそうですね。

完全に観逃してしまいました(×_×)

遠くに屋島を望むブランコの公園は、鮮烈な印象でした。
高松から眺めるのと、(向きが)正反対なワケでして・・

エンゼルホームの教祖の言動が懐かしいなぁ・・
しかし、余さんってば、今やホンマに実力派女優の代表格ですね〜

好きじゃなかった『東京タワー』の頃が懐かしい・・
Posted by TiM3 at 2012年06月27日 23:24
コレは一概にヨカッタとか、感動したと云えない作品でした。

夫には不倫されて、あげくにその不倫相手に産んだばかりの子を盗まれて、、、
踏んだり蹴ったりの妻が、たとえ夫婦仲が悪かろうと、
とてもこの主人公・希和子に心を寄せられないままでした。

命・人生を盗み取る行為があって、
そこに母性を被せて美化しようとしている感が、どうしても馴染めませんでした。
私も千草にかなり想いがいってしまったクチです。
キャストはみんな素晴しかったです〜。
Posted by kira at 2012年06月28日 20:34

TiM3さん、おはようございます。

ブランコの公園、そちら高松からはどんなふうに映るのでしょうね。

エンゼルホームの教祖様、怪しげでしたね。ちょっとヘンなイントネーションの関西弁もブッキッシュさを盛り上げていて。
余さん、ご怪演でした。存在感は凄いですね。
そういえば『東京タワー』にもご出演でしたっけ。江國さん原作小説の映画ですよね?
私は余さんで懐かしいのはTBSドラマだった『愛していると言ってくれ』です。トヨエツも素敵だったし〜。(*^_^*)

Posted by ぺろんぱ at 2012年06月30日 06:06
Kiraさん、いらっしゃいませ。

そうなのですよね、私もストンと上手く心に落としきれないままに観終わった感があります。
手に入れられなかった自己の欲望を叶えるのと純粋な母性と、それは何処か違うものなのじゃないかと感じるシーンもあって。いま本を読んでいるので、小説世界はどうなのか興味を深くしています。

そして千草。彼女には恵梨菜よりも何故かシンパシーを感じる部分がありました。

>キャストはみんな素晴らしかった

そうですね、主演のお二人に加えて、余さん、田中泯さん、小池さんも。
そうそう、市川実和子さんもイイ感じでした。

Posted by ぺろんぱ at 2012年06月30日 06:19
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Excerpt: 優しかったお母さんは、 私を誘拐した人でした。 上映時間 147分 原作 角田光代 脚本 奥寺佐渡子 監督 成島出 出演 井上真央/永作博美/小池栄子/森口瑤子/田中哲司/市川実和子/平田満/渡..
Weblog: to Heart
Tracked: 2012-06-28 20:20