立秋を過ぎて、日差しが少し柔らかくなりましたね。
ロンドン五輪での日本選手の活躍に熱き拍手を送りつつ、109シネマズHAT神戸で『ダークナイト ライジング』(クリストファー・ノーラン監督)を観てきました。
こちらも、シアター内外で“熱かった”です。
伝説が、壮絶に、終わる。(映画キャッチコピー)
story
クリストファー・ノーラン監督による「バットマン ビギンズ」「ダークナイト」に続くシリーズ完結編。「ダークナイト」から8年、平和を保ってきたゴッサム・シティを狙うベイン(トム・ハーディ)が出現し、再びダークナイト(バットマン 演じるはクリスチャン・ベイル)と激しい攻防を繰り広げる。
※story、画像とも映画情報サイトよりの転載です。
またもや、苦悩し続けるブルース・ウェイン卿(バットマン)がここにいました。
タイトル「The Dark Knight Rises(邦題表記は「ライジング」)」の持つ意味は深いです。観終わってみて幾つもの「rise」を感じました。
■誰でもない、ヒーロー・バットマンへのrise
■苦悩・懊悩から、心の解放・自由へのrise
■牢獄の壁を登り、闇の地底から光射す地上をひたすら目指すrise
■闇の騎士から光の騎士へのrise
『ビギンズ』からウェインが抱き続けた苦悩の果てにあるものは何?
伝説は終わったの?
終わったのではなく、新たなスタートに立ったのだと感じましたね。
『ビギンズ』から始まったノーラン監督のバットマンの世界が本作で区切りを迎え、他の監督との同シリーズとは明らかに一線を画す一つの世界を作り上げ、そして(あるかなきかは未知ながら)新たなシリーズへのバトンタッチ、という感じです。
こう書くと身も蓋もないようですが、私的にはやはりティム・バートン監督の同シリーズ1作目・2作目『バットマン(1989年作品)』『バットマン・リターンズ(1992年作品)』が好きで、ゴシックなゴッサム・シティーの世界観の中に本来のアメコミ的な味わいがほど良く残されていて、すっかり映画版バットマンのファンになってしまったものでした。(特に2作目のリターンズが物哀しくて好きです)
ジョエル・シューマッカー監督の3作目・4作目は、楽しんで観ましたがエンタテイメント性に重きを置いたような派手な大型娯楽作品というイメージが記憶の中心にあります。
そしてノーラン監督の5作目・6作目・7作目。
こんなに苦悩し、叩きつけられ、身も心もズタボロになるブルース・ウェインを見せられ、リアルで確たる信念に貫かれた禅なる境地の世界観に圧倒され、いったいバットマンはどこへ向かおうとしているのかと、ちょっと息苦しいような辛さもありました。
ノーラン監督のこの3部作は全て見応えのある作品でしたが、私としては何となく「やっとこのノーラン監督のシリーズが終わったのだ」という気持ちがあったのも否めないところです。いや、実は終わってなどいないのかもしれませんが。
余談ですが、ヒース・レジャー(『ダークナイト』でジョーカー演じる)の死が無かったらこの「ライジング」はもっと違ったものになっていたかもしれないなぁ、ともふと感じました。あるいは、完結編として本作が作り出されるのももっと先のことになっていたかも、とか。考えすぎでしょうか。
本作「ライジング」に話を戻します。
バット・ポッドもバット・モービルもザ・バットも、その華麗なる姿で楽しませてくれました(復活を遂げたバットマンがマントを翻してバット・ポッドを駆る姿は鳥肌モノ。疾走感が凄くて。)が、大半の武器は実はやっぱりバットマンの二本の腕と足でした。
巨漢のベインは肉弾戦を得意とするような如何にも的なマッチョで、やはり原始的な戦闘が勝負を分けます。また、ただ凶暴なモンスターに見えていたベインも、「善」を併せ持つ過去の姿によって「悪」が抱合する悲哀を滲ませます。その辺りはバットマンというシリーズのある意味“見せ場”なのでしょう。
「更なる黒幕の存在」はその「動機づけ」が今一つ浅いというか甘いように私には感じられたのですが(私の理解力不足かも)、それでもバットマンはとにかく闘う、闘う、闘う。守る価値のない街と言われようともゴッサムを守りぬく。
善と悪とが混沌とするなか、最後は「守る者」と「倒されるべき者」の構図が明確になるのです。
相棒ロビンの誕生の瞬間と、キャットウーマン(と言う名での登場ではなかったですが。アン・ハサウェイ演じる)の本作への絡みはどちらも見事な演出かと。
トホホな役回りでスケアクロウ(キリアン・マーフィー)も“ちょい出演”で、そこはアメコミ的な匂いをふんだんに感じました。
絶望の牢獄から這い上がるシークエンスでは禅問答のような会話が繰り返され、リーアム・ニーソンも登場で『ビギンズ』の空気が甦ります。復習をして本作の鑑賞に臨むと更に一段濃い余韻が味わえたかもしれません。
しかしながら闇の中の煩悶のヒーローが柔らかい光に包まれる騎士となる、その脱皮がなかなかに感動的ではありました。最後にアルフレッドが見たものは「現実のもの」であると私は信じます。

(ちょい追記)
■「(真のヒーローとは)泣いている少年の肩に上着をかけ、世界の終わりではないと勇気づけられる男だ」という台詞には改めて泣かされました。バットマン誕生の本当の瞬間だったのかも。
■「コスプレ野郎」呼ばわりされていたバットマンが不憫でした。
■エネルギーとしての「核」の扱い方には、3.11を体験した日本人として緊張感が走り、居心地の悪さが拭えなかったです。

ジンの夏はまだ続いてくれるかな? 暦の上では立秋だけど。
ゆかないで、夏。
男は言葉を交わさなくとも互いに通じるモノがあるというのを本作で知りました。
これが会社で通用すれば凄いんですけどね(笑)
ひとは死を覚悟したときにこそ本当の力を出せる。
これも勉強になりました。
今回の締め方は、次の新たなバットマンへ申し送りすることが出来たなという感じですね^^
悪に転じるストーリーも待たせ、
正義を目指す根拠もちゃんと描かれて、
まさにノーラン監督の男の美学が詰まった最終章でした。
>「更なる黒幕の存在」はその「動機づけ」が今一つ浅いというか甘いように
はい。私もそこのとこだけ引っかかりました。
>「(真のヒーローとは)泣いている少年の肩に上着をかけ、世界の終わりではないと勇気づけられる男だ」
はい。。泣きました(u_u。
ノーラン監督の描く、センチメンタルなヒーロー、結構好きでした☆
アイコンタクト! なるほど!
男であること以上に、きっと人生のかなりの部分を共に生きてきた者同士だからこその“通じ合い”だったのかも。
だから会社で通用するのはもうちょっと先かも。いつかきっと通じ合える人が!(*^_^*)
>ひとは死を覚悟したときにこそ本当の力を出せる
そうですね。
恐怖を感じることが真の強さだ、というのはそういうことだったのですね。改めてitukaさんに明言して頂いて私も勉強になりました。ありがとうございます。
新たなバットマン。
このノーラン監督の構築した世界観のあとではいろいろと難しいかも知れませんね。でもでも、やっぱり期待して、やっぱり観に行ってしまいそうです!(*^_^*)
Kiraさん、こんばんは。(*^_^*)
はい、息苦しさも感じつつ、終わってみればやはりノーラン監督の本シリーズの良さを、余韻と共に味わっております。
>センチメンタルなヒーロー、結構好き
そうですね。
そこには生身の「人間」としてのブルース・ウェインがいましたものね。
演じたクリスチャン・ベイルは、過去作の“自己の作り上げ”でも凄い役者さんやなぁと思っていましたが、本シリーズで改めて確固としたイメージ「バットマン→クリスチャン・ベイル」が出来上がったように思います。
すっかり遅いコメントとなってしまいました(×_×)
私的には、アルフレッドにしても、ゴードンにしても・・
もう少し「前面に歩み出て」の活躍を期待したいトコでしたが・・
長尺の物語だった割には、もっと「削るトコ」「きっちり描くトコ」のメリハリをつけて欲しかった気もします。
で・・
本作の鑑賞を経ても、ノーラン監督には、イマイチ惚れ込めないワタシでした(⌒〜⌒ι)
TiM3さん、こんばんは。
アルフレッドの一時退場のあり方には私もちょっと「?」でした。ゴードンは、演者があの人だけに、ただならぬ化け方をどうしても期待してしまいますね。
確かに長かったですね。でもこの監督のシリーズはどれも長尺で、一応構えて観に行ったところもあり、こんなものかと・・・。^^;
イマイチ惚れ込めませんか。
しかし、反面、すごく真剣に作品と対峙されてるTiM3さんのお姿も感じるのですが〜。(*^_^*)
私はどこかホッとして、一息二息ついてから次なるバットマンの登場を待つことにします〜。(^^)
>いったいバットマンはどこへ向かおうとしているのかと、ちょっと息苦しいような辛さ…他の監督との同シリーズとは明らかに一線を画す一つの世界
そうですね。まさに。アメコミをかなり超越して、人の信心までに言及しているすごい世界ですよね。良くも悪くもノーラン監督…という感じがしますw
個人的に『インセプション』のロジックとさほど距離を感じないのが、辛いと感じますが、なんとかヒーローものとして成立させてるのはすごいっす。
>禅問答のような会話が繰り返され、リーアム・ニーソンも登場で『ビギンズ』の空気が甦ります。
善が悪で、悪が善で。のようなノーランシリーズw。でもこのライジングは大いにエンタメでそれは大満足でした☆
私は『インセプション』を観ていないので多く方々が『インセプション』の終末に言及されているのに絡めないのが残念でなりません。
ノーラン監督の本シリーズを、観る側の私がもっと肩肘張らずにのめりこめば、きっと「大満足」になっていたかも知れないなぁって思います。
でも、やっぱり、この作品を劇場で観ておいて良かったなぁと思います。
仰る通り、前作に比しては、「娯楽性」は高かったと言えるのでしょう・・・ね。
バットマンを離れたノーラン監督の次回作、楽しみです。