2012年09月29日

ブラック・スワン (DVD鑑賞)


 先日『アイ・アム・キューブリック』を貸してくれた友人が、「これも興味ある?これはあるよね!」と、一緒に『ブラック・スワン』(ダーレン・アロノフスキー監督)を貸してくれました。同じくWOWOW録画取りをDVDにしてくれたものです。
Yes! これは観たかったのです!ありがとう、Hさん。

story
 ニューヨーク・シティ・バレエ団に所属するバレリーナ、ニナ(ナタリー・ポートマン)は、踊りは完ぺきで優等生のような女性。芸術監督のトーマス(ヴァンサン・カッセル)は、花形のベス(ウィノナ・ライダー)を降板させ、新しい振り付けで新シーズンの「白鳥の湖」公演を行うことを決定する。そしてニナが次のプリマ・バレリーナに抜てきされるが、気品あふれる白鳥は心配ないものの、狡猾で官能的な黒鳥を演じることに不安があり…。

                     ブラック・スワン2.jpg

                 ※story、画像とも、映画情報サイトよりの転載です。


  サイコサスペンス、ソフトホラー、的な印象を強くしがちな演出でしたが、最後の最後で、「ああ、この映画は真のバレリーナの(それも最高峰に立とうとするトップバレリーナの)物語だったのだ」と感じました。
そうです、最後のニナの「完璧だったわ・・・」の台詞で。 鳥肌が立ちました。

ラスト、ニナのブラック・スワンとしてのステージ、そして感極まった最後のその台詞まで、怒涛の数分間は圧巻でした。
追い詰められた果ての精神の錯乱と極限ぎりぎりまで張り詰められた緊張感、それらが一気に解き放たれた、名バレリーナの誕生の瞬間だったといえるでしょう。

不気味でグロい映像の中に、ニナが闘ってきたものが見え隠れしていました。
それは母親(母親からの呪縛)と、ほかならぬ自分自身でした。この母娘の関係は殆ど何も語られてはいませんでしたが、映像からは相当に根深い「歪んだ支配と従属」を感じさせます。それはもう、相手を破壊するか、さもなくば自分が破壊されるか、という世界のようで。これは観ていて最も息苦しかったですね、私は。
そしてこの「母親の支配からの解放」と「自分自身を解く、放つ、超える」ことは、実は表裏一体のものだったのですね。

鏡がいたるところで実に効果的に使われていました。
そこには不安に潰されそうになる表の顔のニナと邪悪で悪魔的な表情を垣間見せるもう一つのニナの顔があり、抑圧されていた自分自身の化身が存在していました。
終盤に鏡を壊し、その破片でとある人物の(それが本当は誰であったか・・・)肉体に切り込む姿は壮絶であり、まさにそこが二ナのバレリーナとしての、そして人間としての「分岐点」であったというわけですね。

ホラーばりのダークで陰湿な空気の息苦しさの中から、一気にスポットライトの光りに満ち溢れた頂点の世界へとニナを昇華させる、、、こういう感動的な思いを味わえる映画だったとは意外でした。

主演のナタリー・ポートマン、本作で「アカデミー主演女優賞受賞」というのも納得です。


              曽根崎のバル Nちゃんと.bmp  曽根崎のバル withN.bmp

過日の、N嬢とのバルでの二景。
連ドラ評論家の彼女と、ああそう言えば「梅ちゃん先生がそろそろ終わるね」と話していたのでした。意外なものが意外にウケる、連ドラはわかりませんね。







posted by ぺろんぱ at 19:58| Comment(6) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
おお、ご覧になられたんですね。

イサベル・ユペール主演の『ピアニスト』と何となく、
“描きたかった事”の似てる気もしましたっけね。

指の(爪の生え際の)皮を引っ張るトコで「ひぃぃぃ!」
となってしまいました(×_×)

あと、ウィノナさんの出演は、後で知りました(・ω・)
Posted by TiM3 at 2012年09月29日 22:13
作品としては凄くインパクトの強いものでしたね〜。

夢を一途に追う者の、ある種、宿命ともいえる、自分への縛り。

芸術家にとっての、その解放のタイミングと苦しみを
ナタリー・ポートマンが伝えてくれた作品でした。

今年は5輪もあったので、
その、夢の為に様々な誘惑を乗り越えて舞台に立つ、
リアルアスリートたちを、いつも凄いなあ〜と思ってしまいます。
Posted by kira at 2012年09月30日 14:14
こんばんは。
台風の影響は大丈夫ですか?
お仕事の行き帰りなどは、どうぞお気を付けてくださいね。

少し怖くて時々ギクッとしながら観たのを思い出しました(´艸`)
他の方も書いていらっしゃるように
私も『ピアニスト』(ミヒャエル・ハネケ監督)での母親との葛藤を思い出し、
それでまたゾク〜ッとしたりしました。
それにしても乗り移ったかのようなポートマンの迫真の演技は、圧巻でしたね。

追伸:最近うちでは梅酒がプチ流行です(´艸`)
炭酸で割って、みんなでちびちびとやってます♪
Posted by あぶく at 2012年09月30日 23:33

TiM3さん、こんばんは。

『ピアニスト』との類似点はいろんな方が言及されていますが、私は未見です。(涙)観ていさえすればいろいろとお話を交わせるのに残念です。
これは今後の課題作に加えますね。

ウィノナさんは確かに映像的には分かりにくかったかもしれませんね。でも私的には彼女の「声」で「ああやっぱりウィノナさんや」と思ったところも。しかし、本作中での彼女の壊れ方が何となくウィノナさんの私生活と被ってるのかしら?と考えると痛かったです。

>指の(爪の生え際の)皮を引っ張るトコで「ひぃぃぃ!」

そうでしたね〜。
あと、家具の角に足の小指をぶっつけて「つぅぅぅっ!」なところも・・・・・・そんなのなかったですよね、はい。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2012年10月01日 19:27
Kiraさん、再びこんばんは。
こちらにもお越し下さりありがとうございます。

>芸術家にとっての、その解放のタイミングと苦しみを

なるほどそうですね、バレリーナと言うより先ず、「表現する“芸術家”」としてのニナの誕生でしたね。
そして仰る通り、それはアスリートの魂にも通じるのですね。

乗り越えるということ。
日頃サバイバル能力無しと自己評価している私自身、その点に於いても自分は到底頂点になど立てない人間だなぁと自覚するばかり。当たり前なのですが。

ところで、ナタリー・ポートマンも素晴らしかったですが、リリー役の女優さんもとても魅力的でしたね(*^_^*)。でもその華麗な風貌の女優さんがニナ役を演じるとしたら、の難しさをふと感じてしまいました。



Posted by ぺろんぱ at 2012年10月01日 19:50

あぶくさん、こんばんは。

台風は自宅のあたりは大事に至ることなく過ぎてくれました。仕事はお休みの日でしたのでその点もセーフ!でしたが、もしも仕事の帰りならば嵐が去るまで何処かの止り木で一杯???ってことになったかも ^_^;
あぶくさんの方は如何でしたか。何もなかったことを祈っています。

あぶくさんも『ピアニスト』をご鑑賞済みなのですね、、、私は先述のコメでも書きましたが未見で、話題に乗れず寂しいです。(涙)いつか観なきゃ、です。

幾つかの佳品にもご出演のナタリーさんながら、未だにどうしても「あのレオンのナタリー・ポートマン」という表現をしてしまいがちでした。
でも本作はそれを“変えて”くれるでしょうね。

梅酒ですか♪
いいですね、炭酸で割るのも爽やかです。実家でもある時期までは母親が年々梅酒を作っていました…今は作って無くて自家製の梅酒を味わうこともなくなりましたが。
私はジンの夏が終わり(そうは言っても結構ジンを年中呑んでますが)、これからのアルコールの中心は何でいこうかと・・・思案する間もなく手当たり次第に呑んでいます。 あ〜あ。(^_^;)



Posted by ぺろんぱ at 2012年10月01日 20:06
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Excerpt: 純白の野心は、 やがて漆黒の狂気に変わる… 原題 BLACK SWAN 製作年度 2010年 上映時間 108分 脚本 マーク・ヘイマン/アンドレス・ハインツ/ジョン・マクラフリン 監督 ダーレ..
Weblog: to Heart
Tracked: 2012-09-30 13:57