2007年10月14日

明るい瞳・・・そして何故か寄席へ

13日(土)封切初回の回で第七藝術劇場での『明るい瞳』(ジェローム・ボネル監督)を鑑賞。
久々の七藝、やはりこの映画館も“心地よい空間”・・・上映待ち時間にはついつい並べられた数々の映画チラシに見入ってしまいます。
シアター内の椅子もふかふかで中々の座り心地です。

                七藝.jpg 七藝ロビー
 
 あっ、シアターへ向かうビEV.前で偶然にも某氏にバッタリ!・・・このことは映画の感想の後で記します。

story
社会にうまくなじめないヒロインが、一人の男性との出会いを通して変ぼうしていく様を描いたハートフル・ドラマ。
監督は本作がベルリン映画祭に出品され、注目を集めたフランス映画界の新鋭ジェローム・ボネル。
 風変わりな言動で周囲を驚かせるファニー(ナタリー・ブトゥフ)は兄夫婦と暮らしているが、その生活に居心地の悪さを感じていた。
ある日、兄嫁の不倫を目撃してしまった彼女は、イライラを爆発させるかのごとく旅に出発。国境を越えたファニーは、森で木こりの青年オスカー(ラルス・ルドルフ)に出会う。 (シネマトゥデイより)

                明るい瞳前売り.jpg               
  前半のフランスの田舎町でのくだりは何だか観ていて心がザラザラする感じでした。
それは取りも直さず主人公のファニー自身がその町では上手く呼吸できていなかったせいじゃないかと思います。

シネマトゥデイでは「風変わりな言動で・・・」と解説されているファニーだけれど、彼女はそんな生半可なものじゃない・・・完全に心を病んでいる女の子です。加えて孤独。兄・ガブリエルはいるけれど、彼には彼の生活と人生があってファニーの目線には降りて来れなかったんですね。でもそれはガブリエルが悪いんでもない、そして不倫行為のあった彼の妻セシルだってその事だけで決して「悪い」と決め付けられる女性でもない・・・・誰も悪くはないけれど、でも歯車が合わなくなってしまった生活というのはあるはずですから。
                cast-fanny-img.jpg

ともかく、ファニーにはお茶目な行動もあるけれどそれ以上に痛々しい行為や眼に余る言動もあって、凄く気が滅入る映画前半でした。
でもファニーが家をでて何処か(ドイツ)の森でオスカーに出会ってから、それは変わります。
オスカーとの目やしぐさでの会話(二人は言葉が通じないから)、木漏れ日と風の入るオスカーの家、オスカーのシンプルで静謐な暮らし、そしてそれらを取り巻く森の空気、そんな中でファニーは上手く呼吸ができるようになったのだと思います。

心の病気って、やっぱり医療設備や薬だけじゃ治せないものなのだなぁと感じました。
そう言えば先日読み終えた小説の巻末に「オノ・ヨーコはよく周囲の人間に“Breath!”“息をしなさい”って言っていた」ということが書かれていましたっけ・・・。
自分にとって「上手く呼吸の出来る世界」っていうのがきっと何処かにあるのですね。見つけられないまま駄目になっちゃう人っていると思う・・・何処かにあるから、それを見つけて欲しいです。
                cast-oskar-img.jpg

  後半からのファニーは魅力的。そして何よりオスカーがとても素敵です。
温かい「父性」をオスカーに感じました。良くも悪くも、あんな森で一人で生活をしているような彼だから、オスカーにはもう「怖いもの無し」なのです。そのその「揺るぎなさ」も強さを感じさせてくれます。
ファニーは父親の写真を持ち歩き、葬儀に出られなかった自分を責めているところがあったので、彼女はその父性を求めていたのかもしれないなと思いました。
                 明るい瞳1.jpg

森の中で二人の呼吸が融合するシーンがあります。
深い森の中で魂が触れ合うと言う点で少し前に観た『殯の森』を連想しました。比較するものではないのですが、今作でのそれはもう少し素直な、率直な結びつきであったように感じます。

唐突に終わるラストも、観る人それぞれが想像を楽しませることができるものだと思います。
欲を言えば、兄ガブリエルとセシルの、その後の1ショットだけでも観たかったな・・・。彼らも其々に何かを抱えてるみたいだったから。


  さて、映画の前にEV.前でバッタリ!と出会ったのは十数年前の小さな某落語会からずっとファンで聴き続けてる落語家さん・月亭八天さんです。
挨拶もそこそこに、聞けば同ビルで2時から寄席があるとのことで(そう言えば13日にはこの会があったんだと思い出しまして)、折角なので映画が終わってから15分遅れで会場へ駆けつけました。
                十三寄席.jpg

八天さんの本日の演目は「七度狐」と「正直課長」で、後者は創作落語です。創作落語を演じる八天さんも珍しいので中々楽しいサプライズでした。
「映画と落語」の土曜の午後、っていうのもオツなものですね。


 そして本日のブログアップの友は自家製<レッド・アイ>です。ビールはサッポロ・黒ラベルで、軽く塩と黒胡椒もふって。
何となく飲みたくなって作りました。
軽いお酒で日曜の午後、っていうのもオツなものですねぇ〜。
           
                レッド・アイ.jpg


posted by ぺろんぱ at 15:43| Comment(6) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
いつもながら”選ぶ映画がひと味ちゃう!”と感心しておりますが、レッド・アイ黒ビ−ル版自分も早速まねしようと思っています。ていうのは、話せばチト長いんですが、ビ−ル通のかわゆい30台女性が以前”ギネスのレッド・アイめちゃくちゃ美味しいですよぉ”ておっしゃってたので即まねして飲んでみたところ、”美味しいいうたら美味しいかもしれんが、ギネスはある意味expensiveなわけで、そのギネスの主張を感じられなければ・・むむぅ”と、貧乏くさいことを思っていたので、普通の黒ビ−ルでやればええんやなぁとハタと気づいたわけでして・・・。(長いわりにしょうもなくてすまん!)とここまで書いて自分の早合点に気づきました。黒ビ−ルやなくて黒ラベルやったんですね。(トホホ)けど、せっかくなんで、やってみますわ。インスパイアおおきに!!(しかし、写真みたら黒ないのにまちがえるか)(重ねてすまん!)
Posted by ビイルネン at 2007年10月14日 17:50
この映画の予告を見ただけですが....確かに前半のザラザラした感じ、後半の上手く呼吸できる感じってのは印象強く受けますね。

言葉が分からなくても感情が伝わるって良い感じなんでしょうね。
Posted by west32 at 2007年10月14日 20:30
ビイルネンさん、こんばんは。
黒ビールでレッド・アイ・・・確かに美味しそうですね。では私はお初なのでギネスでのレッド・アイを試してみたいと思います。

サッポロの黒ラベルは市販の国産ビールではエビスに次いで好きな銘柄です。あ、S社のモルツも結構好きです。

でもこれもトマジューとの割合できっと微妙に味が変わるはず・・・今度は是非「プロ」の手で作られたレッド・アイを飲んでみたいです!(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2007年10月14日 20:54
west32さん、こんばんは。
「言葉は大切」と思う私も、今作では言葉を超えて呼び合うものがあるのだなぁと感じました。
ファニーが黄色い椅子をオスカーにプレゼントするシーンがあるのですが、そこがとてもチャーミングでした。緑深い森に黄色の椅子で、色彩的にも綺麗でしたしね。(^_^)
Posted by ぺろんぱ at 2007年10月14日 20:59
こんばんは!

>凄く気が滅入る映画前半でした。
とあるので、ぺろんぱさんが繊細な方だというのが
わかりました。(=^_^=)
私は、ファニーを愛していながらも理解する事ができない
兄に感情移入して、ちょっと涙してしまったけど。

「殯の森」思い出しました。私も。
澄んだ空気が伝わってくる様な映画でしたね。
Posted by ゆるり at 2007年10月19日 17:37
ゆるりさん、こんにちは。
私は繊細じゃないですが、ファニーの振る舞いを単に「お茶目」とは片付けられなくて・・・私もゆるりさん同様、兄ガブリエルの想いも分かるだけに彼が救われるようなワンショットが欲しかったです。

空気感は確かによかったですね。TBもありがとうございます。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2007年10月21日 12:26
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Excerpt: 監督 ジェローム・ボネル (2005年 フランス) 【物語のはじまり】 フランスのとある村で兄夫婦と同居しているファニー(ナタリー・ブトゥフ)は、 予測のつかない行動で、周り....
Weblog: ゆるり鑑賞 Yururi kansho
Tracked: 2007-10-19 17:38