2012年10月13日

俺たちに明日はない (久々の再鑑賞)


  「処前観シリーズ」の第14弾は『俺たちに明日はない』(1967年製作 アーサー・ペン監督)です。
これはね〜、初めて観たのが某大学の学祭での「名画上映会」だったのですが、すごく混雑していて確か立ち見だったのですよ。若かったとはいえ身動きも取りにくい状態での立ち見はきびしく、時を経てTV放映の際にゆっくりと鑑賞し直した記憶があります。そして今回鑑賞のソフトは、いつだったか、結構昔のBS録画VHSです。

story
   不況時代のアメリカ30年代に実在した男女二人組の強盗、ボニーとクライドの凄絶な生きざまを描いた、アメリカン・ニューシネマの先駆け的作品。ケチな自動車泥棒だったクライド(ウォーレン・ビーティー)は、気の強いウェイトレスの娘ボニー(フェイ・ダナウェイ)と運命的に出会い、コンビを組んで強盗をやりはじめる。二人は順調に犯行を重ねていくが…。

                     俺たちに 1.bmp
                      ※story、画像とも映画情報サイトより転載させて頂きました。


  もともとウォーレン・ビーティーは好きな男優さんです。何しろ映画にハマるきっかけとなったのがあの『天国から来たチャンピオン』でしたから。
しかし本作は観返す度、フェイ・ダナウェイが殊のほか輝いて見えます。初めて本作を観た時から30年近くを経た今も尚、それは変わりません。

フェイ・ダナウェイを見ると、昔々、中学生の頃に月刊誌『スクリーン』やら『ロードショー』やらをワクワクしながら読んでいた頃の記憶が甦ってきます。ページを繰るたびに漂う新刊特有のインクの匂いとともにね。フェイ・ダナウェイは当時のトップスターでした。

私の回顧談はさておき。
軽妙なマンドリンの奏でるメロディーと共に展開するシーンは結構悲劇的です。
少しずつ、徐々に悲劇性が高まってゆきます。
基本的にロードムービーは好きな私ですが、このロードは文字通り町から町へと流れる旅路の意に加え、崩壊への道行きでもあります。段々に「旅」と「人生」の終焉が見えてくる、、、時として胸を締め付けられるような痛さが走ります。

嵐の前の凪を思わせるような場面も。
ボニーの母親や親族とクライドたちが草原で食事に興じる件りです。セピア色に輝く、懐かしさと温もりに満ちた時間でした。
お尋ね者ではない普通の家族として過ごす幸福を一瞬味わったボニーとクライドですが、ボニーの母親の「(あんたたちは)一生、逃げるしかないのさ」の一言で現実に引き戻されます。しかし本当は彼らには分かっていたはず、明日という日がいつか来なくなることが。

現実から目を背け、つかの間の肌の触れ合いを求めるボニーとクライド。
「女は苦手だ」という台詞で曖昧に描かれていたけれど、クライドはもしかしたら性において何かしら精神的に深く負うものを抱えていたのでしょうか。そう考えると、それまでのクライドに時折見えた孤独の影が意味を持ってくる気がしました。でもそれはきっとクライド自身にしか分からないこと。 最後は「一つ」になった彼らの姿に私は救われました。

鮮烈に記憶に残るラスト。
鳥たちが一斉に飛び立ち、一瞬だけ音を失った世界で目と目を見交わす二人は、刹那に何を思ったのでしょうか。

文字通り、旅路の終わり、そして人生の終わりが、物語の 終わり・THE END なのでした。
映画としてはクールだけど、実在した彼らを想うと言葉を失いますね。


                      自宅で赤ワインを.bmp

<自宅シアター>での必須アイテムの一つ、赤ワイン。




  
posted by ぺろんぱ at 19:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
ばんはです。

かなり前に衛星で(?)観た覚えがあります。
冒頭、初登場するシーンでのボニーってば「すっぽんぽん」の設定だったんでしたかね?

ジーン・ハックマン兄貴が登場してて、意外に思ったモノでした。
顔面を撃たれてましたっけ・・

ラストでは、片方サングラス(?)なクライドが「ハッ」とした表情を見せるのが鮮烈でした、確か・・

唐突な幕引きとしては『イージーライダー』『俺明日』と共に、いつまでも語り継がれて行くべき作品と言えましょうね。

ときに、、

>「処前観シリーズ」の第14弾

これまでの13本も、改めてご教示頂けると嬉しいです(=^_^=)
Posted by TiM3 at 2012年10月19日 00:15
TiM3さん、こんばんは。
お身体、大丈夫ですか。大事になさってくださいね。

>冒頭・・・ボニーってば「すっぽんぽん」の設定だったんでしたかね?

そうだと思いますよ。
しかしそのあと、階下に駆け下りるシーンの前ではワンピースしか羽織ってなかったような・・・。

>ジーン・ハックマン兄貴・・・顔面を撃たれてましたっけ

たしか、頭部ではなかったかと。結構悲劇的でしたね。

>ラストでは、

あまりにも有名なラストですが、「蜂の巣」ってことだけじゃなくて二人(ボニーとクライド)の其々の一瞬の表情も印象に残りますね。

>唐突な幕引きとしては『イージーライダー』『俺明日』と共に、いつまでも語り継がれて行くべき

そうですね。
「記憶」と「記録」にそれぞれ残る作品、というわけですね。(*^_^*)

>「処前観シリーズ」

ブログにアップした時系列じゃないですけど、思いつくままタイトルを列記しますと以下になります。

俺明日(←真似しました、これが最新ですね (^^))
華麗なるギャッツビー
ナイト・オン・ザ・プラネット
靴をなくした天使
マイ・レフト・フット
スタンド・バイ・ミー
髪結いの亭主
マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ
ダウンン・バイ・ロー
ロザリー・ゴーズ・ショッピング
恋する惑星
パリ空港の人々
秋菊の物語
ベルリン・天使の詩

こんなところです。
もしもご興味のある作品がございましたらご訪問くださいませね。でも既に幾作品かは貴コメントを頂戴していますが(*^_^*)。ありがとうございます。



Posted by ぺろんぱ at 2012年10月20日 18:38
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