2007年10月17日

麦の穂をゆらす風(DVD鑑賞)

  私の<今後のお題>作品の一つだった『麦の穂を揺らす風』(ケン・ローチ監督)を昨日・16日夜にDVD鑑賞。

キリアン・マーフィ主演、ケン・ローチ監督作品、ということで<お題>に加えていたのですが、先日劇場鑑賞した『パンズ・ラビリンス』でのスペイン内戦下で権力や支配に抗う者の状況や酷い拷問シーンなどが今作と通じるものがある(描き方はもちろん違いますが)ということで、以後<お題>ランキングがぐっと上昇していたのでした。

今作でも正視できないシーンはあり、拷問の酷さは筆舌に尽しがたいのですが、それ以上に今作では「自国の解放と自治」に命をかけて戦う人間の深い苦しみや、戦いそのものに於ける悲しいまでの不条理さに心が激しく乱されました。

story
  イギリスの名匠ケン・ローチによる、カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた人間ドラマ。20世紀初頭のアイルランド独立戦争と
その後の内戦で、きずなを引き裂かれる兄弟と周囲の人々の姿を描く。
 1920年アイルランド、英国による圧政からの独立を求める若者たちが義勇軍を結成する。医師を志すデミアン(キリアン・マーフィ)も将来を捨て、過酷な戦いに身を投じていく。激しいゲリラ戦は英国軍を苦しめ停戦、講和条約にこぎつけるものの、条約の内容をめぐる支持派と反対派の対立から同胞同志が戦う内戦へと発展する。 (シネマトゥデイより)

                20061026001fl00001viewrsz150x.jpg
                
 何が悲しいと言って、アイルランドのあんなに美しい風景の中で血生臭い戦いが繰り返されたのだということが、ひどく気持ちをダークにさせます。
風に揺らぐ草原は空気の清々しさまで感じさせて、心を何事からも完璧に解き放ってくれる大きな力を持つものでした。
タイトルの「麦の穂を揺らす風 THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY」は、アイルランドに古くから伝わる名歌らしいのですが、それが英国植民地としての長く悲しい歴史を見てきた歌であるとともに、アイルランドの美しく、本来ならば平和であるべき情景をそのまま表現しているという点に於いて意味深いものがあると思います。

 「悲しいまでの不条理」と書いたのは、一つは、互いに国を憂えるという点では同じ志であるのにも関わらず、その目指すものの違いから互いを殺しあうまでになってしまうこと。かつては同じ「解放と自治」を唱えあったもの同士で。

もう一つは、戦いが人間を変えてしまうこと。
活動を敵側に漏らしたスパイが自分の幼な馴染だと分かりながらも処刑したデミアンですが、かれがその処刑の後で以下の台詞を吐いているのが深く心に残りました。
「僕は一線を超えてしまった」
「心が何も感じなくなってしまった」
「(幼な馴染みを殺す、)それだけの価値のある戦いなのか!?」

自国民の平和を勝ち得るための戦いなのに、その戦いで同国の友人や隣人、兄弟とまで殺し合うことになってしまう・・・この「戦争」というのは一体何なのか・・・。

戦争が人間から人間としての普通の感覚を奪ってしまう、誰と何のために戦うのかさえ分からなくなってしまうという不条理さを描いていた点では、邦画ですが今夏鑑賞した新藤監督の『陸に上った軍艦』を思い起こさせます。
どこからどう切るか、その描く視点の違いはあれど、戦争への思いは同じなのだと思いました。
                  mugi.jpg

この国で戦いに関わった全ての人達が(敵も味方も、女子供も、死んでいった者も生き残った者も全て含めて)平和と自由を求めて“もがいて”、“泣いて”いました。
その涙と辛苦を、ケン・ローチ監督は一人一人、一つ一つ、とても静かに、けれどとても大切に描いていたと思います。

アイルランドに限らず、それら全ての「生身の人間」の血と涙と慟哭の歴史の上に、今の我々の営みがある事を忘れてはいけないと思います。
でも、出来ることなら、本当はデミアンにはあの汽車に乗ってしまっていてほしたかった・・・。高邁な思想に端を発した戦いであろうとも、一人でもいいから、あの地獄の世界から遠ざかっていて欲しかった・・・そう思わずにはいられません。

兄テディ(ポードリック・ディレーニー)と弟デミアン(キリアン)との最後の会話のシーンが、武器を暫し捨てて近付きあった兄弟の真の姿として、深く哀しく心に残りました。


  さて、一夜明けてブログアップの友は私の<アルコール版・今後のお題>だった「ギネスBeerを使った」自家製<レッド・アイ>です。
ギネスとデルモンテのトマジューで。
                ギネスレッドアイ.jpg

どうでしょう・・・色は何とも魅力的だったのですが・・・私としてはやはりギネスはギネスとして飲んだほうがいいかなぁと。
レッド・アイにはキリッと感がより強い普通のビールの方が風味的には合うかなぁと。
ただ、もしかしたら割合の問題で、私じゃなくちゃんとしたプロの御方が絶妙の割合を計算して配合して下さればきっと凄く美味しいのかもしれません。例えば私は半々で少しギネスを多めにしたのですが、逆にトマトジュースをメインにしてギネスをほんの少し足す程度にすれば双方の味がいいように呼応しあったかもしれませんね。

何にしても、こういうお酒の試作はとても楽しいぴかぴか(新しい)です。

この調子で<映画版・今後のお題>も着々とこなしていきたいところですが・・・暫くは週末の劇場鑑賞だけで手一杯になりそうです。



posted by ぺろんぱ at 20:32| Comment(6) | TrackBack(2) | 日記
この記事へのコメント
やはり師匠もそう思われますか?ギネスはギネスで!と。で、”色を楽しんで飲む”分には黒ビ−ルで充分という調査結果報告もさせていただきます。

キリアン・マ−フィ−は”プル−トで朝食を”ではじめて知った俳優さんですが、この間、BSでやってた”真珠の耳飾りの少女”でも−出てるやん−と思ったとこでした。これ、話題の映画やとは思うものの、そして、アイルランド大いに興味あり(ギネス好きなだけちゃうん?)の割に、たぶんよう観ないと思います。残酷シ−ン多そうな映画は自然に避ける根性なしなんですわ。(トホホ)
Posted by ビイルネン at 2007年10月18日 02:59
ビイルネンさん、こんばんは。
ギネスはギネス、でした(^_^;)。でも「師匠」は止めて下さい、師匠!

今作は私がDVD画面から席を立ったのは一箇所・・・です、観ていられなかったです。でも一箇所でもあればNGなのですよね・・・それも大事な鑑賞の条件だと思います。
キリアン君がメジャーになったといわれているのはダニー・ボイル監督の『28日後・・・』という作品なのですが、それは私も劇場に観に行ってとても印象深い作品として心に残りつつも、ホラー張りに怖かったのでその点で私は「二度は観られない」作品になってしまっています。
私も「トホホ」です・・・。
Posted by ぺろんぱ at 2007年10月18日 21:00
こんばんは。
映画を観る前に多少の覚悟はしていたんですが、
私の中では思った以上に重くてとても辛い気持ちになった作品です。
キリアン・マーフィがマッチョなタイプじゃなくて、か細かったので
なんかよけい痛々しくて。
私が目を細めて耐えていたシーンでは、後ろの席に座っていた人の
「ハーッ」という大きなため息が聞こえてきたので、
「わかるよー、その気持ち」と心の中で頷いてました。
またこの問題は過去のものではなく、
IRA等様々な組織のテロ行為は現在も暗い影を落としているので、
余計に気持ちが沈んでしまいました。
いい映画だとは思うんですけどねー、
二回目観ようとは思わなかったのも正直な所です。
Posted by ゆるり at 2007年10月20日 23:27
ゆるりさん、こんにちは。
そうなのですよね、キリアンたら細いんですよね〜。聞けば菜食主義者らしいですよ。儚ささえ感じますよね。

ところで、この国の歴史は本当に闘いの歴史だったのだなと思います。決して明るくはなれない作品ですよね。IRAにしても、この映画で感じたこと同様、始まりは高邁な思想に基づくものだったのに今ではテロ集団のようになってしまっているのも辛い現実です。

確かに、いい映画だと納得できるのと何回も繰り返し観たいと思うのは別ですよね。
Posted by ぺろんぱ at 2007年10月21日 12:31
こんばんは〜♪

やはりぺろんぱさんも席を外されましたか。
ワタシも2度ほど、両手で顔を覆ってしまいました。
本当は視覚的なガードより、あの叫びを聞きたくなかったのだと後で解かりましたが。
観賞後、暫く心に痺れを感じました...。
いい作品だと思っても、繰り返しは観れない作品、、同意です。
TBさせて戴きました〜☆
Posted by kira at 2007年10月23日 22:47
kiraさん、こんばんは。
目と耳、どちらも閉じて居ないと恐怖や苦痛は伝わってしまいますね。あのいつまでも響く叫びは脈拍を高めました。

TBもありがとうございます。お邪魔させていただきます(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2007年10月24日 22:34
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/5950933
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック

映画『麦の穂をゆらす風』
Excerpt: 原題:The Wind that Shakes the Barley 第1次世界大戦後のアイルランド独立戦争、英愛条約の締結後のアイルランド内戦と美しい自然を背景に、義勇兵としてIRAに参加した悲し..
Weblog: 茸茶の想い ∞ 〜祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり〜
Tracked: 2007-10-18 17:38

麦の穂をゆらす風
Excerpt:   願ったものは同じだったはずだった・・・ 原題 THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY 製作年度 2006年 上映時間 126分 監督 ケン・ローチ 出演 キリア..
Weblog: to Heart
Tracked: 2007-10-23 22:29