シネリーブル神戸で『チキンとプラム〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜』(マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー 共同監督)を観ました。
92分という上映時間は最近の私には嬉しいです。シアターサービスデーに、仕事帰りに鑑賞。
story
自伝的コミックを映画化したアニメ「ペルセポリス」で注目されたイラン出身の女流監督マルジャン・サトラピが、自身初の実写作品に挑んだ作品。ドラマ。死を決意した主人公が、最期の8日間で人生を振り返る。
天才音楽家のナセル・アリ(マチュー・アマルリック)は命よりも大切なバイオリンを妻に壊されてしまう。絶望した彼は死ぬことを決意し、自室に引きこもる。そして死に向けての8日間のカウントダウンが始まる。そんな彼の脳裏を、ままならなかった人生の思い出が去来する。中でも、若き修業時代に出会った美女イラーヌ(ゴルシフテ・ファラハニ)との叶わなかった恋は、今も彼の心を締めつけるのだったが…。

※story、画像とも、映画情報サイトより転載させて頂きました。
絵本の世界のような映画でした。それも、「摩訶不思議なお伽噺」という感じ。
全体的にシュール且つファンタスティック、時にユーモラス、時にビターテイスト、時にミステリアスでブラックで、本当に不思議な世界でした。
病と貧しさと失恋は詩人(芸術家)を生む三大要素だというのは誰が言ったんだっけか・・・。
ヴァイオリンの師匠(何故かこの人、マッドサイエンティストふうな容貌)から「お前の音色はテクニックはあるが空っぽだ」と言われたナセル・アリは、愛した女性イラーヌとの悲恋で一流のヴァイオリニストとなります。
しかし一流になったからといって全てが順風満帆にいかないのが芸術家の人生たるところ。
家庭に愛を見いだせずヴァイオリニストとしての道も途絶えた時、彼の魂は妻と子どもたちへの想いを通り越して愛した女性イラーヌの元へと戻るのですが・・・。
メインはとても切なく美しいラヴストーリーなのに、この物語には人生の“決して美しいだけではない部分”がふんだんに登場します。
美しくない部分は滑稽でもあります。その滑稽である部分はより滑稽に誇張されて描かれ、美しい部分でさえ、その向こう側にある戯画性を感じてしまうのです。実写でありながらまるで戯画?絵本?のような味わいを感じるという、これはまさに演出の妙といえますね。

寂しい最期を迎えるナセル・アリですが、妻の愛に気付けなかったことは残念、かな。妻の愛は人生に於いて現実的なものであり、そこに目を向けられなかったのもやっぱり芸術家たる所以なのでしょうか。
でも私は、ナセル・アリは芸術家である前に、あまりにも一人の女性への愛に生きた、ただのか弱き男であったのではないかと思ったのでしたが・・・。
現実逃避型、現実不適合型のナセル・アリに比して、二人の女性は現実に向き合うしかなくて、それが哀しいです。
特にイラーヌ。ラストで見えた彼女の涙(彼女しか知らない涙)がひどく哀しく、ここだけは純然たる美しさでした。
主演のマチュー・アマルリックってつくづく演技の引き出しの多い役者さんなのだと感じました。
死の天使・アズラエルを演じたエドゥアール・ベールは、黒塗りなので顔がよくわからなかったですが目の白眼と歯の白さで異様なアピールがありました。何より、アズラエルのキャラクターはサイコーに面白いです。
それから、成人した娘・リリを演じたキアラ・マストロヤンニ! 迫力ある目力にゾクゾクしてしまいましたよ。
さてさて、先日は引っ越しをしてやっと落ち着いたという友人S子さん宅にお呼ばれになりました。
美味しい赤のスパークリングとS子さんお手製のお摘みで乾杯。この赤のスパークリングは、とってもしっかりしたボディーで呑み応えがありました。色もダークチェリーで、まるでスパークリンじゃないみたいでしょう? 美味しかったです。 S子さん、E子さん、楽しい時間をありがとう。

キアラ・マストロヤンニ、クールな役どころで
キレがあって格好よかった!
アメリカに行った兄とあまりにも違いすぎるのも、
奇想天外な感じで面白かったし。
ナセル・アリの弱さは、周りを不幸にしてしまいますね。
母(私の苦手なイザベラ・ロッセリーニ)との関係性を見ると、マザコン要素が強いし。。。
マチュー・アマルリックはやっぱりこういう役上手いです。
きわめつけなのは、その死に方。
ありえへんようやけど、あるかも〜と思ってしまいました(笑)
“美しくない分、滑稽”なのかもしれませんね。
TBもありがとうございます。お返事が遅くなって本当に申し訳ありません!
死に方は、醜くなく、苦しまず痛くなく、ってことでの最終判断だったのに、なぜかアズラエルの存在を感じた途端「前言撤回!」というのも何ともひ弱くて・・・・・でもあのイラーヌの一言があったことでナセル・アリも情けないほどに哀しい人だったのかもしれないなぁって思えたのでした。
あのザ・アメリカンファミリー的なお兄ちゃんは何だったのでしょうね。あれもナセル・アリの遺産だったのでしょうか。お姉ちゃんとの対比が、仰るとおり面白かったです。お姉ちゃんの人生には一体何が…!?(*_*)
イザベラ・ロッセリーニは苦手な女優さんですか。
なんとなく、なんとなくですが、分かるような気もします。(^_^;)
人生とは溜息、この不条理が可笑しくて。
ペルセポリスもみたんですが、
彼女の図太い神経が好きです。
私はこの監督さんの作品は初めてでしたが、仰る通り独特の世界観でしたね。
「人生とは溜息である」、なるほどこの言葉に反応されましたか。
やはりcochiさんは芸術家でいらっしゃるのだなぁと改めて感じました。
ヒロインの女性、とても美しかったです。(*^_^*)