2013年01月18日

灰とダイヤモンド(VHS鑑賞)


  新作の劇場鑑賞に行けていない中(ちょっとフットワークが重いです、ここのところ(>_<))、昨年末に同監督の『菖蒲』を観てから私的課題作にもなっていた映画『灰とダイヤモンド』(アンジェイ・ワイダ監督 イエジー・アンジェウスキー原作 1957年制作)をツタヤでレンタルして鑑賞しました。何店か探してやっと見つけました、VHSのみのようです。

story
  第二次世界大戦末期、ポーランド。戦争中は対独レジスタンス運動に身を投じ、戦後は反ソ派テロリストとなったマチェク(ズビグニエフ・チブルスキー )は、ソ連から来た共産地区委員長暗殺の指令を受けるが、誤って別の男二人を殺してしまう・・・。「世代」「地下水道」に続くワイダの抵抗三部作。

                      灰とダイヤモンド.bmp

                 ※story、画像とも、映画情報サイトより転載させて頂きました。


  痛々しい青春映画だと思いました。
勿論、戦争への怒りと自国の歴史への深い嘆きが根底にあることは否めませんが。
本作はマチェクという一人の青年の、闘いに捧げて(と言うよりそれしか選択肢がなく)散っていった青春碑。しかし同時に、ワイダ監督の他作品同様、戦争は不毛であるというメッセージが通底していたと思います。

マチェクには戦争、殺戮、レジスタンス、そんなのがもう完全に染み付いていて影のように切り離せないものになってたように思います。
地下での闘いが長すぎてサングラスを外せない身体になってしまったのと同じように。
愛というものに初めて触れてテロ行為から足を洗うことも考えるけれど、結局は染み付いた暗闇の世界へ戻るしか道がないことをマチェク自身も気付いていたに違いないと思うのですね。
キリストが逆さに吊るされたままのあの廃墟でのクリスティナ(エヴァ・クジジェフスカ)との会話は、だからきっと、叶わぬと分かっていてのマチェクの束の間の“希望”だったように思えました。(本作のあの廃墟でのワンカットは、若き頃に手にした映画雑誌でその小さな写真を目にしたことがあったのですが、その時は「この吊り下げられてるオブジェは一体何なのだろう」ってずっと疑問に思っていましたが、廃墟と化した教会のキリスト像だったのですね。改めて映像で観ると鮮烈でした。沈思。)

その時にマチェクとクリスティナが碑に刻まれていた詩を見つけるわけです。
  永遠の勝利の暁に、灰の底深く
  燦然たるダイヤモンの残らんことを・・・

この映画のラストでこの詩が何とも言えぬ哀しみを伴って反芻されます。
マチェクの壮絶な死の跡に、ダイヤモンドなんて残っちゃいないよ。灰になってゆく名も無き小さなマチェクの亡骸が残るだけなんだよ。・・・そんなことを思いました、哀しいですね。


ワイダ監督の眼差しには『カティンの森』鑑賞時には“冷静なもの”を感じましたが、本作には冷静さという以上に“冷徹さ”を感じました。
ご自身も戦禍の中で抵抗運動に参加され、また、お父さんをカティンの森事件で亡くされていながらも決して感情には左右されない、畏れるほどの強さを感じましたね。
それから、この作品は1957年の制作にしてワイダ監督の監督3作目とか。私が生まれるよりも更に前であり、年末に鑑賞した氏の最新作『菖蒲』までの間に私の人生分以上の年月が収まっているのだと、改めて、ワイダ監督が作品を撮り続けて来られた年月の重さ、意志の重さを受け止めずにはいられない思いでした。


                      ボンボヤージュでのジントニ.bmp

   少し前にふらりと初めて入ったお店にて。
女性のオーナーさんがお一人でされているカジュアルなカウンターBARで、寒かったので温かいお酒と迷ったけれどやっぱり大好きなジントニックを。素敵な空間でしたのでまたお伺いしたいと思います。

  風邪でダウンしていたのですが、今夜は今から熱〜いお酒を作って眠りに就きたいと思います。
それはホットワイン、風邪に効くとか。ブログを見て下さっているKさんに教えていただきました、ありがとうございます。





posted by ぺろんぱ at 20:14| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
こんにちは!
この映画を高校生くらいの頃だったか、ずいぶん前に教育テレビで放映していて見たことがあるのを思い出しました。

最近読んだ本には「30年間ひとつのことを続けること」、ひとつのことを長くやり続けていくことで自分という人間が作られていくことが物語の中に一筋貫かれてました。
アンジェイ・ワイダ監督の貫徹してる姿勢もまさにそれですね。

ジントニックおいしそうです。
神戸のお店ですか?
今年は私も?おいしいお酒のお店を開拓したいなどともくろんでいます^^
Posted by Jupi at 2013年01月19日 23:12
Jupiさん、こんばんは。

おお、高校生(くらい)の時にもう本作をご覧になられていたのですね!そういう頃の記憶って、ストーリーそのものよりもあるシーン・あるセリフ・ある音とか、そういうピンポイントでの記憶が鮮明に残ってたりしませんか。(*^_^*)

何かひとつのことを長年にわたって続けることって、結果的に自分に(自分自身は自覚していなくとも)何らかの指針を与えてくれているものなのでしょうね。30年かぁ・・・なるほど、心に刻んでおきますね。(*^_^*)

このお店は姫路のお店です。実は昨年姫路に転居致しまして。JRの駅近にある、元気印の美人ママさんのお店です。(自分にとって)新しいお店に入るのって不安と期待とが綯い交ぜで凄く勇気が要るけれど、佳き出会いとなった時の慶びは深いです。
Jupiさんの新規ご開拓を陰ながら応援させて頂きますね。(*^_^*)



Posted by ぺろんぱ at 2013年01月20日 20:51
姫路ですか。
ありがとうございます。
確か姫路駅の辺だったか、日本酒、地酒を扱ってる立ち飲みのお店があったと思うのですが。
一度行ってみたいです^^

拙ブログにぺろんぱさんのブログをブックマークさせていただきました。
大丈夫だったでしょうか。
了承もいただかないうちにすみません。

そうそう、灰とダイアモンドを観た高校生くらいのころはいろんな社会問題にすごく興味を持っていた時期でそこからアンジェイ・ワイダ監督を知ったのだと思います。
かなりうろ覚えなのですが、ラストシーンの鮮烈な場面を今もよく覚えています。
Posted by Jupi at 2013年01月22日 23:44
Jupiさん、こんばんは。

ありがとうございます。私の方も早速「お気に入り」にリンクを貼らせて頂きました。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

仰っている地酒の立ち呑みって、「試(こころみ)」というお店のことではないでしょうか。
JR姫路駅東改札からすぐのところにある、兵庫県の地酒ばかり200種置いてあるショットバーです。ずらりと並んだ地酒のボトルが時折微かにライトアップされる静かな空間でのお酒は至福の味わいです。女性一人でも違和感なく楽しめます。私も既に30種類ほど試飲しています。(*^_^*)

灰とダイヤモンドのラストシーンは仰るとおり鮮烈ですね。高校生という多感な頃なら一層そうお感じになられたことと思います。
私も子供の頃にテレビで観た映画で、ストーリーは綺麗さっぱりと忘却の彼方でも、あるシーンだけが未だに記憶に残ってるというようなのがあります。
そういう記憶って、結構嬉しい宝物だったりしますよね。(*^_^*)


Posted by ぺろんぱ at 2013年01月23日 21:44
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