2013年06月22日

ビル・カニンガム&ニューヨーク


  気が付いたら劇場での映画鑑賞は『ハッシュパピー』(4月30日レヴューアップ)以来です。

デイタイムでの上映は21日迄らしく、気になって仕方がなかったこの作品を観にシネリーブル神戸へ。(会社早退しました(^^ゞ)
『ビル・カニンガム&ニューヨーク』(リチャード・プレス監督)です。

ビル・カニンガムという御名を、この映画の情報に触れるまで私は全く知りませんでした。
だからNY.の最先端のファッションや彼の独自のカメラワークが観たかったというわけではなく、その生き方(大好きな一つのことを為すために徹底して他の要素を排除する)に触れてみたくての選択でした。

story
  「The New York Times」の人気ファッション・コラムと社交コラムを担当する大御所写真家、ビル・カニンガム(1929年生まれ。御歳84)の実像に迫るドキュメンタリー。
ファッションに魅了され、50年間ニューヨークでストリート・スナップを撮り続けてきたチャーミングな彼の知られざる素顔を描き出す。ビルをよく知るアメリカ版「VOGUE」編集長のアナ・ウィンターら有名人が続々登場。カメラ片手に自転車で街に出て、セレブも一般人も関係なく、ただひたすら魅力的なファッションだけをカメラに収めるプロ根性が描きだされる。

                       ビル1.jpg

     ※story、画像とも、映画情報サイトより転載させて頂きました。


私事ですが、それなりに歳をとって時間や能力の限界も見えてきて、なのにいろんなことで忙殺される日々で、漠然とこれではいけないなぁ、自分を見失ってはいけないなぁ、と感じていました。
だから、最も大切なものを一つ選択してあとは全て捨て去るというビルの生き方に触れて、ではこの先、自分がもっともっと歳を経て一人になった時にいったい自分には何が残るのか、大切なものとして残せるものが私にあるのか、自分がビルのような生き方を率直にどう感じるのか、それらを知りたいという思いがありました。「こんな生き方もあるんだなぁ」とふっと肩の力を抜きたかったという思いも実はあったのかもしれません。(ごちゃごちゃ書いてすみません、まあ、そんな感じで選んだ映画だったんです。)

ビルの生きざま、そして彼の吐く言葉たち。
それは実に小気味良い刺激となり、思惑通り?癒しにさえなりました。

 ●バスルームとトイレは共同の小さなアパートメントに住み、
  フィルムの入ったキャビネットに囲まれ、食事は殆どバーガーとコーヒー。
  「コーヒーは安ければ安いほどありがたいよ。」
 ●動きやすい清掃員用のジャンパーを常に着込み、破れたらテープで補修。
  「どうせまた直ぐ破れるんだからね。」
 ●VOGUEから渡された報酬の小切手を破り捨てたとか。
  「カネをもらわなければ口出しもされないからね。」
  「自由より価値のあるものなんてないよ。」
 ●皆、ビルに撮られることが誇り。
  どんな著名人の豪華なファッションも興味が無ければ撮らないビル。
  「タダで着飾った有名人には興味が無いね。」
 ●「誰でもセンスはある。ただ、勇気が無いだけなんだ。」 
  ↑ あー、これは私を含む多くの日本女性へのエールと受け止めましょうか(笑)。

そうやって彼が撮った数多の写真はどれも活き活きとしていて楽しくて、目にもとっても鮮やかで、撮られる側の人たちの喜びと高揚感が写真全体から感じられるのです。
「まいったなー、凄いおじいちゃんだなー」って、ビルのしわくちゃの笑顔もとってもカッコよく見えましたよ。

                      ビル2.jpg                


しかし・・・、しかし、です。

最後に本作の監督が「答えたくなければ答えなくていい」と前置きしたうえでビルに投げかけた2つの質問。これによって本作は全く別の意外な側面を持つものとなりました。

特に二つ目の問いに、ビルはそれまでの和やかな表情を一変させ心乱された様子で深くうなだれます。何より、スクリーンを通して観ている私自身が、深く烈しく心乱されました。
しばらくの沈黙のあと、彼は前を向いてきっぱりと答えを返すのですが、そのときの深く刻まれた皺に、心の奥にしまってあった本当のビルが見えた気が私にはしたのですよね。もしかして、ビルが最も手に入れたかったものは他にあったのではないか、彼が心の底から欲したものが他にもう一つあったのではないか・・・そんなことが頭を過った瞬間でした。

二つの問いは、それぞれ、彼の「性」と「信仰」についてのものでした。
結局のところ、私には本当のことは分かりません。あの問いとビルの答えが示す真の意味を。しかしあの時、私にはビルの深い諦念が感じられた気がしたのです。信仰によって自らを律し、神の前で祈りを捧げ続けなければ守り得ない彼の中の「何か」があることを。
ああ、だからビルはこうも言っていたではなかったか・・・「ファッションは鎧。日々を生き抜くための。捨てたら人生は終わる」と。ビルにとってはファッションを撮り続けることが鎧だったのかもしれません。「他の一切を捨て去る」ことは、彼にとっては深い悲しみに裏打ちされた宿命だったのかも。

                       ビル.jpg

頑固でクールな生きざまを貫いてる老紳士の、ファッショナブルなドキュメンタリー映画というだけではなかった。私にはむしろ、私生活を知られていなかったビルの、初めて「孤独」な顔が浮かびあがった人間ドラマのようにも感じられました。
ある生き方を貫き通すにはそれなりの覚悟が要るのですね。生きることの厳しさを教えられた気がしました。


演出は、フィルムの繋ぎ方なんかにとてもスピード感がありました。
字幕を追っていたらあっという間に入れ替わる素敵な映像を見逃してしまうほど。
そしてニューヨーカーたちはやっぱりエネルギッシュ。「自分たちが世界の中心にいる」という、良くも悪くものプライドがそのエネルギーの源なのかな。
ニューヨークは16年ほど前に何日か滞在したのみ。いつかまた訪れてみたいものです。


               U-ya 生ビール.jpg  U-ya 仙介.jpg

  劇場での映画鑑賞はほんとうに超スローペースになってしまいました。
こっち(日々の乾杯)はなんとか健在。
某日、独りでふらりと訪れた立ち呑み屋さん(オサレ系の立ち呑みです)にて。 生ビールと、神戸の地酒<仙介 特別純米しぼりたて生>です。




posted by ぺろんぱ at 19:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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