梅田ガーデンシネマで『スタンリーのお弁当箱』(アモール・グプテ監督)を観ました。
ネット上の評判もよかったのと、そういえばインド映画って久々だなぁっていう思いから。美味しそうなお弁当の中身にも興味があって・・・。
story
みんなを笑わせるのが大好きなクラスの人気者スタンリー(パルソー)は、家庭の事情で学校にお弁当を持ってくることができず、昼食の時間はいつも水道水を飲んでお腹を満たせていた。そんなスタンリーを助けようと、級友たちはお弁当を分けてあげるが、食い意地の張ったヴァルマー先生(アモール・グプテ)に見つかって弁当を取り上げられた上、スタンリーは先生から「学校へ来なくていい」と言われてしまい・・・。

※story、画像とも、映画情報サイトより転載させて頂きました。
中盤までこれってコメディーなのだったのか?とちょっと悩んだほど、謎の教師ヴァルマーのあり得ない言動に唖然とし、お弁当をめぐる「ヴァルマー VS. スタンリーとクラスメートたち」の構図が随所で笑いを誘いました。
しかし勿論、本作は“笑えるお弁当カルチャームービー”では決してなくて、物語の進行と共に実に多くのものが見えてきたのでした。
何故スタンリーはお弁当を持って来ないのか。
何故彼は放課後、級友たちとのゲームに加わることなく真っすぐに帰ってゆくのか。
何故いつも汚れた制服を身につけ、顔にうっすらと痣をつくっているのか。
何となく彼が不幸せな状況にあることは想像に難くないのですが、とにかくスタンリーの明るさと真っ直ぐさが眩しくて、そうじゃない違う答を探してしまうのでした。
トンデモ教師のヴァルマーもいれば、心優しくて美しい女教師ロージー(デイビヤ・ダッタ)もいて、スタンリーを温かく見守ってくれます。
何より、本当に何より、スタンリーの級友たちの絆が半端じゃなくて、彼を理解し守ろうとする姿が健気でとても愛おしいのです。毎日豪華なお弁当を持参して携帯電話まで持ってるお金持ちのアマンくんの包容力、リーダー的存在のアビシェークくんの凛々しさ、的確な判断力と行動力。喧嘩はしてもイジメはない、「本当にいい子たち」な彼らに、私はものすごく温かい贈りものをもらった気分になりました。
苛酷な状況にあっても見守ってくれる者がいることで人は前を向いて歩いて行ける・・・本作のキモはここなんやろうなぁって思いました。
なかなかの佳作品でしたよ。

オープニングとエンドロールにテロップで映画制作にかかわった教育関係者全てへの謝辞と、子どもたちが一日も学校を休むことのないよう撮影が行われた経緯などが示されます。
グプテ監督のインドの子ども教育への真摯な姿勢が深く感じられましたし、5000万人にも及ぶ就労児童が当国に存在することを示すことでインドという国が抱える貧困問題への厳しい眼差しも伺えました。
この心優しき社会派監督は、本作で憎まれ役の教師ヴァルマーを見事に憎ったらしく且つ怪しく(ホントに怪しい!)演じておられます。主人公スタンリーを演じたパルソー君はなんとこのグプテ監督のご子息らしいです。

子どもたちや先生たちが持参するお弁当はどれも美味しそうでした。
サフランライスは色鮮やかだし、豆や野菜が七変化。でも何よりやっぱり「愛情」ですなぁ、お弁当は。
***最後に三言***
■謎をまとったまま姿を消したヴァルマー先生。最後の最後にもう一度登場して何らかの変化を見せてほしかった気がします。
■インド映画に派手な歌と踊りは付き物なのかもしれませんが、随所に流れるあの啓蒙的な歌詞の歌は無い方がよかったのじゃないかと。
■ロージー先生の結婚相手が最後にちょっと登場するのですが、かなりカッコイイ男優さんで、まさに美男美女カップルなのでした。

アマン君のお弁当箱は豪華四段重ね。
こちらは純米大吟醸三種重ね…じゃなくて横に並べての三種飲み比べセット。<咲くら・大阪丸ビル店>にて。
目の前でボトルから注いでくださるお店の女性に、「たっぷり入れてくださいね」と声色優しく脅迫。
インドの就労児童問題をあつかった映画、ぜひ観たいと思います。
社会の問題を扱いながらも、怪しかったり、笑いがあったりと、
そのミックス感がインド映画らしいような印象を受けました。
見てみたいです。
>苛酷な状況にあっても見守ってくれる者がいる
残念ながら、今の日本では、弱者は切り捨てるみたいな(特に教育の現場で)
風潮が感じられます。
色んな事情の人が世の中に存在しているという事を子供時代に知る事は大事だと思いますが、
日本の子供達は、そこらへんの意識が薄いのかもしれないなぁなどと思ったりします。
そうですか、お酒好きのだめたけさんの御目を捉えてしまったのですね(^^)。
女性店員さんへのソフトな脅迫?が効いて、表面張力を見るまでにはなりませんでしたが結構たっぷりと注いでもらえました〜。これからこの手でいきます!(って、アカンアカン(^_^;))
私の拙いレヴューを読んでくださっていて本当に嬉しいです。ごちゃごちゃ書いてるだけのレヴューは恥ずかしい限りですが、本はDVDででも、是非いつかご覧くださいませね。
ゆるりさん、こんばんは。
ミックス感、ですか。なるほど、確かにそんな感じですね、インドの映画って。
怪しさはピカイチでした、ヴァルマー先生。機会がございましたら是非ご覧になってみて下さいね。(^^)
子どもだから純粋培養でというのは違うと思いますし、むしろ子どものうちに世間の“一筋縄ではいかない”面も見せておくのは本人にとってはプラスになると私も思います。日本は国民の多くが(自戒の意味で私も含めて)あまりに問題意識が少な過ぎるように感じますね。
いろんな実際の出来事や、勿論小説や映画などからも学ぶことは大切と感じます。
ちょっと違うことですけれど、学校のカケッコなどで順位を発表しないというのも私はおかしいと思うのですが。
しかし実際にお子さんのいらっしゃる人にはまた違った見解もあるのでしょうけれど。
一昔前に比して複雑になった日本の子ども(教育)事情・・・、これ自体が一筋縄ではいかない状況なのでしょうね。
これと一緒に同じインド映画「きっとうまくいく」も。
きっと〜のほうはダンスを随所に入れててファンタジック感もありながらも、インドの抱える問題、若者の自殺の多さ、カースト制度、レイプ問題などがメッセージとして感じられました。
そうなんですか!
ヴァルマー先生は監督ご自身。
なんとも気味悪さも感じる役柄でしたね。
この先生もお弁当を持ってこない、これない事情があるのでしょうね。
確かに、あのナレーションは違和感でした。
こんな感じで映画を作ってもいいのだろうなとか思いながら観てました^^
歌の中の「良くも悪しくも我が家」ってことばにジンときます。
お弁当を分け合って食べる、ごほうびのチョコを分け合って食べるこどもたちの姿に人の良心を感じてほっとしますね。
Jupiさん、こんばんは。
一緒にご覧になった『きとうまくゆく』の方に興味津々ですが・・・また後ほどゆっくりお伺いしたいと存じます。
怪しいヴァルマー先生、何らかの決着を(せめて彼の行く末を考える材料でも)出して干しかったですが。彼を巡るお弁当事情に何らかの事情が(感情が)あったのは確かですよね。
>人の良心を感じてほっと
そうですね。
「良心」、なるほど、その言葉がぴったり添いますね。
子供たちの姿からソレを感じたということが本作のいいところなのでしょうね。(*^_^*)