2013年08月28日

孤高のメス (DVD鑑賞)


   友人が貸してくれていたDVD『孤高のメス』(成島出監督、大鐘稔彦原作)観ました。
原作の真っ直ぐで健全な医療への追求心を、奇をてらわない配役と正統的な手法で描いた本作に、改めて良質な邦画の持つ心地よさを感じました。

story
   1989年、とある地方都市の市民病院に外科医・当麻鉄彦(堤真一)が赴任する。冷静で正確なオペ技術を持ち、なにより患者のことを第一に考える当麻の姿勢は、仕事に疑問を抱いていた看護師の浪子(夏川結衣)らにも影響を与え、停滞していた院内の空気を活気づかせていく。しかし、そんなある時、当麻は脳死した患者からの肝臓移植を行うか否かという大きな決断を迫られる。それはまだ法律で認められた手術ではなかったが、当麻はいかなるリスクを背負おうとも、助けられる命に手を差し伸べようとするのだが・・・。
 
                       孤高の.jpg

                ※stpry、画像とも、映画情報サイトより転載させて頂きました。


  タイトル「孤高のメス」は、崇高な精神のもと、ひたすら患者の命を救うために奔走する孤独な医師を連想させます。また、医学の理念を問う社会派然とした作品世界をもイメージさせます。現役の医師による原作と聞けば尚更に。

しかし“良い意味で”その予想は覆されました。
勿論、医療のあるべき姿を追求した作品には違いないですが、テーマの周辺にあるものを丁寧に掬い上げて描いた、情感に溢れたソフトな作品だったと感じました。

十数時間ににも及ぶ難解な大手術。その様相を(医学界の監修のもとに)徹底してリアルに描きながら、そこには殺伐とした空気もなければ、冷徹な眼差しだけで終わる疎外感もありませんでした。これは一人の女性・浪子の当麻に対する秘めた恋情を綴った物語であるとさえ言えるのでした。
決して放たれることのない、おそらくは本人もそれと気付かぬ、淡く切ない想いがこもった柔らかな情感。オペ器具一つ一つを当麻に手渡す浪子の所作が何度も映し出されるのですが、そこにある種の熱情のようなものを感じ取った人は多かったのではないでしょうか。
医療用語が飛び交う硬質さ、大学病院と地方の公立病院の癒着という粘着性、その行間に柔らかな情感がふわっと匂い立つ、そんな作品でした。

浪子の一人息子・弘平(成宮寛貴)が彼女が残した古い日記から母の過去の日々を紐解いてゆく流れは、似たようなシチュエーションは有りがちですけれど、それはとても安定感のある流れでもあり、観る者を心穏やかに導いてくれるのでした。
ラストの“邂逅めいた展開”は「あ、そういうことになるんだ・・・」とちょっと意外でしたが、そういう“愉快さ”があってこそ、日の目を見ることのなかった浪子の秘めた感情が最後で活きてきたのかもしれません。
    
                        孤高の 1.jpg
 
                      
堤真一さん、イイですね。
映画では『ALWAYS 三丁目の夕日』『舞妓Haaaan!!!』『クライマーズ・ハイ』『容疑者Xの献身』といった作品を観ましたが、どれもハズレはなかったです。私的には『容疑者Xの献身』の堤さんが一番印象深いですけれど。

生瀬勝久さん、なかなかの“悪いヤツ”振りでした。私、画面に向かって「キミ、悪いヤツやな〜!」と独りごちてました。それはそれだけ生瀬さんが好演だったということなのでしょう。
それにしても、、、あの京葉医大から来た三人の医師の中で、一人くらい「真の医療とは何ぞや」と思い悩み、自らの言動を自問自答する医師がいてもよかったのになーって思いました。一人くらいは・・・ねぇ。

現在は脳死状態での臓器移植は法的に認められています。
私は脳死での臓器提供の意思カードにサインして持ち歩いています(そのような状態になることは勿論無いに越したことはないのですが)。特に理念があってのことではありません。そうすることが自分にとってもいろんな意味でいいように思えるまでのことです。



                      黒ビール.jpg

  そろそろこの夏も「去り支度」を始めたようですね。
夏の終わりを感じるのは、いつも何だかとても寂しいです。たとえ今夏のような猛暑であっても。

某日、仕事帰りの黒ビール。
一杯目はオーソドックスな生ビールをグビグビ! 二杯目にこの黒ビールをゆっくりと味わいました。
そういえば少し前からスーパーで麒麟の<秋味>が並び始めましたね。 秋、なのですね。




posted by ぺろんぱ at 21:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
良い作品でしたね〜

ラストはベッタベタ過ぎて(正直)イマイチでしたが・・今にして思えば「まぁ無難な演出でしょうかね」ってトコかなぁ。

本作を劇場で観て間もなく、都はるみの「例の演歌」をダウンロード購入し、聴きまくった事を思い出します(=^_^=)
Posted by TiM3 at 2013年08月31日 17:11
TiM3さん、こんばんは。

TiM3さんがこの作品を(総じて)好意的にレヴューされていたのは記憶に深いですよ。(*^_^*)
それでも、あのラストは…拙レヴューにも記していますが私もちょっとあそこまでの展開は意外でした。でもでも、それはそれでイイのかも、とも思える今です。

>都はるみの「例の演歌」をダウンロード購入し、聴きまくった

同じ演歌のカテゴリーでも、「例の演歌」のような“メジャーラインの鼓舞し”がある曲がオペには望ましかったのでしょうね・・・ドクター当麻には。
TiM3さんは、この曲で何のモチベーションがアップされましたか??(*^_^*)



Posted by ぺろんぱ at 2013年09月01日 21:50
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/73533798
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック