シネリーブル神戸で『スーサイド・ショップ』(パトリス・ルコント監督)を観てきました。
パトリス・ルコントがアニメを監督!?と驚いたのでしたが、監督は若き頃イラストレーターのお仕事もされていたとか。なるほど、実写のセンスが得意分野の作画にも活かされるっていうわけですね。
本作、原作はジャン・トューレの小説で、原作が発表された直後に映画化の話がルコント監督のもとに持ち込まれたものの、実写ではそのあまりにダークでリスキーな世界を表現しきれないと、ルコント監督初のアニメーション(しかもミュージカルテイスト!)で映画化が実現したようです。
story
ジャン・トゥーレの小説「ようこそ、自殺用品専門店へ」を原作に、鬼才パトリス・ルコントがアニメに初挑戦した作品。どんよりとした雰囲気が漂い、人々が生きる意欲を持てずにいる大都市。その片隅で、首つりロープ、腹切りセット、毒リンゴといった、自殺するのに便利なアイテムを販売する自殺用品専門店を開いているトゥヴァシュ一家。そんな商売をしているせいか、父ミシマ、母ルクレス、長女マリリン、長男ヴァンサンと、家族の誰もが一度たりともほほ笑んだことがなかった。人生を楽しもうとしない彼らだったが、無邪気な赤ちゃんアランが生まれたことで家庭内の雰囲気が少しずつ変わり始め・・・。

※story、画像とも、映画情報サイトより転載させて頂きました。
なるほど、アニメでなければこの世界は画的に“危険極まりない”ですねー。
ビルから飛び降りる人間がたくさん映し出される冒頭。 スーサイド・ショップに並べられるありとあらゆる自殺アイテム。お買い上げのお客様の後を付け、願望成就?を見届けるヴァンサンとマリリン兄妹。
「PG12」の意味がこれほどダイレクトに身に沁みる作品も珍しい。
とはいえ「アニメ」「PG12」とあっても、私的にちょっと看過しがたい場面があって、正直言ってそのシーンには微かな不快感を伴わないわけではありませんでした。アランのすっとぼけた可愛さが救ってくれましたが、あの一連のシーンに付いては自分なりに納得もしたいのでいつか原作小説を読んでみたいと思う今です。
店主ミシマの「ミシマ」って「もしかして三島由紀夫?」と思っていたのですが、鑑賞後シアター内に貼り出されている資料を読んでみてなるほどと思いました。
ミシマは三島由紀夫、長男ヴァンサンはフィンセント(ヴァンサンは仏語読み)・ファン・ゴッホ、長女マリリンはマリリン・モンロー。
皆、自殺を遂げた著名人なのですね。夫人のルクレスの記載は無かったのでネットで調べてみたら、どうやらルクレスはルクレティウス(死によって人間の不幸は消滅すると説いた哲学者)らしいです。ふーん、勉強になりました。
それで、ルクレスやヴァンサン、マリリンは、アランの影響を受けて変わってゆくのが見ていてよく分かるのですが、ミシマは“さすがはミシマ”の筋金入り。その辺りは、理念に裏打ちされての自殺であった三島由紀夫のイメージが踏襲されているのでしょうか。ファミリーが笑顔と前向きな人生を取り戻しながらも、このミシマだけは最後までシニカルでブラックな一面を残していました。

私的にはマリリンのキャラが一番好きで、人生を投げている様子が見ようによってはアンニュイな感じでもあり、情緒不安定さが愛しくも感じられました。
月灯りだけの部屋で彼女がアランからプレゼントされたピンクのスカーフで踊るシーンは、コミカルなのにそこはかとなく官能的で、ここはルコント監督らしさがいっぱいでした!(『髪結いの亭主』を思い出しましたよ。)
ファミリー4人のキャラはキョーレツですが、「アダムスファミリー」ほどに毒で満ちてはいません。
意外とアラン。彼がミシマを笑わせようとトランポリン上で繰り返したパフォーマンスは“まんまブラック”で、考えたらこのアランが実は一番毒をはらんでいたのかも・・・なんて、ちょっと曲がった視点での感想でした。
アニメーションは映像も色彩も独特の雰囲気を放ち、日本のアニメとはまた違った魅力を感じることができます。
灰色に染まっていた街が明るく変わるんだからハッピーな想いで劇場を出ればいい、とは思います。やっぱり売るなら毒りんごより出来たてアツアツの甘〜いクレープのほうがいいに決まってますし。
でも、そしたら死によって辛苦から解放されたいと願っているどん底の人たちはこれからどうしたらよいのでしょうね。私は頭が固いのかな、、、彼ら(自殺願望者)が救われたわけではないのでちょっぴりの複雑さも残りました。

ルコント監督は本作でとにかく「人生は美しい!」ということを伝えたかったとか。
久々のJazz Bar Wishy-Washy さんでの Wishy-Washy(オリジナルカクテル)、やっぱり美味しい!
私は手放しで「人生は美しい」とはとても言えませんが、こうして美味しいお酒をいただいているこの一瞬は間違いなく“美しい”です。

マナー告知の映像にこの作品が使用されていて
ブラックな感じが気になっていました。
フランスのアニメーションって、大人向けな感じがして結構好きです。
いわゆる“Kawaii”ではない世界観というか。
この作品も、結構毒がありそうですね。
もしご覧になってなかったらぺろんぱさんに勧めしたいのは
昨年みた「パリ猫の生き方」です。
こちらは毒はスパイス程度で、猫が大活躍!です。
ところで、私事ではありますがこの度
はてなブログに引っ越しました。
稚ブログのリンク先を下記URLに上書きしていただければ幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。
http://yururi.hatenadiary.jp/
ゆるりさん、おはようございます。
先ずは貴ブログの件、お引越しされたのは存じ上げていて、自分のPCやスマホの「お気に入り」や「ブックマーク」は再登録していたのに肝心の拙ブログの「お気に入りリンク先」の更新を失念しておりました。失礼致しました!早速更新させて頂きました!(*^_^*)今後ともどうぞ宜しくお願い致しますね!
本作、そういえばマナー告知に使われてましたよね。自分ではTOHOの「鷹の爪」のんもマダマダ結構笑えて好きですが。
この『スーサイド…』は、アニメの画は本当に独特の味わいでした。色も深い感じで。
「パリ猫の生き方」、是非探して観てみたいと思います。猫が大活躍とは嬉しいですね。(*^_^*)
御紹介ありがとうございます。
ゆるりさんが先日挙げておられた某作品、興味を抱きつつも、上映時期が終盤なので見送りか!?と思っている朝です。でももしも観に行けたらお伺いさせて頂きます。
パトリス・ルコント監督によるアニメーション作!
興味深いですね〜(・ω・)
にしても、マリリン(モンロー)の死の真相はどうなんでしょうね?
ワタシとしては「自殺なのかな? どうなのかな?」と思ってまして・・(まぁ、ゴッホもそうですけど)
それぞれの名を主要キャラに冠した「理由」みたいなトコも気になりますね。
そうなのですよね、マリリン・モンローは私も「暗殺説」から先に入った世代ですので・・・記述に若干の迷いはありました。しかしながら、本作品の解説にもこの人の名を挙げずにはいられなかったのは、やはり(公的には自殺とされている)モンローさんのメジャー性の為せる業かと・・・。
しかしゴッホの死の真相は・・・私は知りませんでした、他殺説の存在。勉強になりました。
先日のTiM3さんの力のこもったレヴュー、せめてオリジナル作品を鑑賞の後にと思ったものの、鑑賞は先になりそうです。のちほど再訪させて頂きます。