今週の一本は第七藝術劇場での『ナルコ』(トリスタン・オリエ、ジル・ルルーシュ共同脚本&監督)です。
ナルコレプシーとはその語源「ナルコ=麻痺」「レプシー=発作」から成る“突発性睡眠発作障害”の病気のことです。
この病気は少し前にVIDEO鑑賞したガス・ヴァン・サント監督の『マイ・プライベート・アイダホ』でも主人公マイク(リヴァー・フェニックス)が持っていた病気ですが、今作では(表面上は)ユーモラスに、洒脱な感じのフレンチ・テイスト満載で描かれています。
視覚的にとてもカラフルで、シュール且つブラックな笑いの中にも物事の“真理”が埋め込まれていて、ほろ苦いラストに“人生”を見てしまう、何度も観返したくなる佳品でした。
story
どこでも発作的に眠ってしまう病気“ナルコレプシー”に悩まされる男が、自身の生き方に目覚めるまでを描く。監督・脚本は、本作が長編初監督となるトリスタン・オリエ&ジル・ルルーシュのコンビが務め、肝心なときに眠ってしまう頼りない主人公を、『戦場のアリア』のギョーム・カネが好演。また、アクション・スターのジャン=クロード・ヴァン・ダムが本人役でカメオ出演しているのも見逃せない。
どこでも発作的に眠ってしまう病気“ナルコレプシー”のため、子どものころからばかにされ続けてきたギュス(ギョーム・カネ)。愛する父(ジャン・ピエール・カッセル)や唯一の親友レニー(ブノワ・ポールブールド)に祝福され愛する女性パム(ザブー・ブライトマン)と結婚するが、いつまでも定職に就けず役に立たない彼に、妻も愛想をつかしてしまう。絵を描く才能だけは天才的であったギュスはある日、眠っている間に見た夢をコミックに描き始めるが・・・。(シネマトゥデイより)

登場人物すべてがいいです!
それぞれ、良くも悪くもエキセントリックで個性的で且つ魅力的・・・そして結果的にはギュスを陥れることになってしまう何人かの人間も、みな其々、どうしても忘れ去ることのできない夢を心の奥に持っていた、ある意味“真っ直ぐな”人たちなのです。
ギュスを陥れて束の間の夢を実現させたかのように思っても皆それぞれにやがては本来の自分に立ち返っていくのが、人間が併せ持つ「愚かさ」と(どうしようもないなりに)失くせない「善良さ」を描いていて、人間は捨てたものじゃないんだという監督の優しい視点を感じました。
ギュスのカウンセラーであった精神科医ププキンが、悪行の後でプライドと自責の念に押しつぶされて自滅しちゃうのも、彼が手に入れたものは似非夢に過ぎなかったことを悟ったからなのですよね・・・私的にはこのププキンが憎み切れず中々に愛らしき存在でした。

愛とか友情、そして信頼で成り立っていた相関関係があっという間に崩れ去っていったのは心に痛いけれど、それが再び(ヒビ割れたところにベッタリと接着剤を埋め込んだような歪さはあるにせよ)収まる所に収まっていったのにはちょっぴり泣ける思いです。
「ほろ苦いラスト」と書いたのは、ギュスにとってハッピーでもアンハッピーでもない、彼がもしそれを不幸と呼ぶなら呼べないことはない「諦観」のようなものをそこに感じたからです。これが幸せなのだと自分に納得させて生きていくのが人生なのかもしれない、って思ったから。
特異な病気を持った人間に特定せず、普遍的な、等身大の我々の生きる道についてそっと道標を立ててくれた、そんな味わい深い作品でした。

ストーリーのみならず、映像も演出の仕方も面白くって興味深いです。そのあたり、映像クリエーターとして名を馳せている二人の共同監督ということからも頷けますね。
ギュスを演じるギョーム・カネは、初めの登場シーンから終盤に至るにつけどんどん魅力的になっていきます。最後の方では「こんなに素敵な男優さんだったの?」と思うくらい、甘いマスクに浮かべた寂しげな微笑みにぐっときました。
ギュスの親友・レニーについては観ていてこんな格言が過ったと言えるでしょう。「信じるものは救われる。」(映画をご覧になった方は納得して頂けるかと・・・^^;)
それから、最後になりましたが、ジャン=・クロード・ヴァン・ダム。よく出演をOKしたなぁと思うくらい最初は「失笑の的」的な描かれ方ですが、終盤に“カリスマ・アクションスター”としての崇高なまでに輝く存在になるのです。「愛してくれる者にとってお前はスターだ!」という名台詞とともにね。
ジャンクロ・ファンは必見です!(私はファンじゃないけれど。)
『ナルコ』・・・DVDになったら是非もう一度観てみたいです。
ところで・・・眠っている時のギュスは時として幸せな夢見顔です


そこにはギュス自身の、ギュスだけの、彼が主人公である物語が展開されているからなのですが、美酒でほろ酔いの私も時々こんな顔をしているのかも・・・。

何だか嬉しいですね〜。
でも、気になるのは「ちゃんと開脚を披露してくれてんのやろか・・?」ってこと。
開脚演出のないヴァン・ダムなんて・・(=^_^=)
ナルコレプシーな主人公がコミカルなタッチで描かれていましたが、
ギョーム・カネのルックスともっさりした雰囲気も加わり、面白い作品でしたね。
(オープニングクレジットのスタイリッシュな感じからヤラれましたよー。)
>『戦場のアリア』のギョーム・カネ
かなり前に観たので、いったい彼がどんな役だったのか全然思い出せません。
(『戦場のアリア』は登場人物の多い映画やったし)
今回、にわかギョーム・カネファンになったので、気になるところ。。。。
※記事アップしたら、またTBさせていただきますので、よろしくお願いします。
残念ながら開脚演出はございません。
アクションの披露すらございません。
でもシブいジャンクロさんが観られます。(*^_^*)
二本続けてご覧になったのですか?凄いですね!
私は『戦場のアリア』は未鑑賞ですが、ギョーム・カネのにわかファンになってしまった点はゆるりさんと同じです(*^_^*)。
TBして頂くのを楽しみにしていますね。
今までいくつもの出演作を観ていながら、私も初めてギョームのファンになっちゃいました。
役作りのために体重を増やしたことが意外と好感度アップだったようで、愛嬌満点でよかったですー。
16年も日記を続けているなんて素晴らしいですねー。
私は最長で10代の頃の1年くらいかな・・・。
そんな私がブログを2年半続けているのは不思議です。
自分の日常や自分と向き合うことからは逃げているけど(笑)、愛しい映画について書き記したい思いは強いということか、他人の目に触れることが励みになるのか・・
なるほど、ギョームさんは役作りで体重アップされたんですね。それがあの少し弛緩したお腹周りで感じる“ゆるい感じ”を作っていたのですね。
今の私の日記は日常と向きあってるというより、日常の出来事を半ば事務的に綴っているという感じです。私のブログはまだ1年9ヶ月ですが、かえるさんの“華もあって気骨もある”ブログを目指して頑張りたいです。今後ともヨロシク、です。