テアトル梅田で『タンゴ・リブレ 君を想う』(フレデリック・フォンテーヌ監督)を観ました。
これは心待ちにしていた一作なので頑張って公開初日に鑑賞。
story
規則正しく退屈な毎日を送る刑務所の看守、JC(フランソワ・ダミアン)。ある日、唯一の趣味であるタンゴ教室で15歳の息子を持つ女性アリス(アンヌ・パウリスヴィック)と踊り、華やいだ雰囲気に心惹かれる。翌日、JCは彼女を刑務所の中で見つける。夫フェルナン(セルジ・ロペス)の面会に来ていたアリスだったが、彼女にはもう一人、面会相手の男がいた。それは愛人のドミニク(ジャン・アムネッケル)。しかもフェルナンとドミニクは同じ事件の共犯者でもあった。やがてフェルナンはアリスがJCとタンゴを踊っていることを知り嫉妬する。しかし、いつしかタンゴのことが気になり出し、アルゼンチン出身の囚人をつかまえて、刑務所の中でタンゴを習い始めるフェルナンだったが・・・。

※story、画像とも、映画情報サイトより転載させて頂きました。
「彼女と踊った、
欲望が忍び込んできた、
そして私の世界は変わった・・・。」
これは本作のキャッチコピーです。
結果からいえば激変でした、JCの人生。でもその変貌をいったい誰が非難できようか。それに、変貌と言いつつも実はJC自身は何も変わっていなかった気がしています。
物語の主人公はJCですが、ここには三者三様の、いいえ、アリスの息子アントニオ(ザカリー・シャセリオ)を含めた四者四様のアリスへの想いに溢れていました。
アリスの奔放さは同じ女性として感情移入しがたいほどの激しさで時として傲慢ささえ感じるのですが、アリスを囲む男性四者(息子アントニオも含めて)が余りに其々味わい深く魅力的に描かれているので、そんなふうに彼らに愛されるアリスも(決して共感はできないとしても)魅力的に見えてしまったのは否めません。
事実、彼女は不思議な魅力を放っていました。
フェロモンのひと言だけでは言い表せない、何か危険で、でも温かなるもの。母性ともどこか違う、不思議なもの。トラブルメーカー的な匂いもします。それは多分、JCもフェルナンもドミニクもアントニオも、皆が十二分に解っていることなのだとは思います。
夫フェルナンの言った通り「俺たちを傷付けただけじゃないか」という台詞は胸を突き、息子アントニオの「お母さんが悪いんだ」となじる姿は余りに痛々しい。
真面目で気弱なJCはそんなアリスに健気に尽くし、例え空回りでもいたわり、優しく包み込もうとします。愛人ドミニクに至っては、その大きく深い愛が諦念となって自身を自殺へと向かわせます。
みなアリスに翻弄されます。しかしアリスは彼らを其々に愛し必要としていて、アリスを中心に彼らがファミリーになってゆくのは不思議としか言いようがないのです。

タンゴを通して四角な関係が微妙に形を変えてゆきますが、それぞれのタンゴがそれぞれの味わいを持っていて・・・。
朴訥なJCのタンゴは男性であるのに吐息のように切なく官能的でさえあります。ドミニクのタンゴはなんだか哀しくて、フェルナンのそれは力強く、どこまでも真っ直ぐ直情的です。
タンゴが「魂の踊り」と称される所以がそこにある気がしました。
スクリーンでのラストのあと、一体どうなるんだろう。
どうにでもなれ、なのか、どうにかなる、なのか。苦難の道行なのか、それとも・・・。
シチュエーションから何もかも全く別ものの映画なのに、ふと『卒業』のラストシーンがフラッシュバックした私なのでした。
刑務所内でアルゼンチン出身の囚人二人がダンスを披露するシーンがありますが、このシーンは圧巻です。男同士のタンゴなんて私は初めてで、激しく力強く情熱的でまるで命を賭けた絡み合いのように感じました。
どうやらプロのタンゴダンサーで、うち一人はチチョ・フルンボリという世界的に有名なカリスマ・タンゴダンサーの御方らしいです、なるほどね。
それから、アントニオ役のザカリー・シャセリオくん、若き日のレオナルド・ディカプリオを髣髴とさせて鮮烈な印象を残してくれたのでした。

いつだったかの、シックなBARでのマルガリータ。
お酒好きの先輩にお連れ頂いたのでしたが、初めての訪問でちょっと怖々?ながらの入店でした。でもカクテルも美味しくていい雰囲気で、でも思ったよりもリーズナブルでちょっと嬉しくなったBARでした。
もしまたお伺いが叶えば、<タンゴ・リブレ>、、、じゃなくて<キューバ・リブレ>でも飲んでみたいと思う今日です。
もっと単純なタンゴで魅せる映画だと思い込んでいたので、
そういう点では裏切られたというか、ユニークな作品でした。
アリスを前にしたJ.C.のあのハニカミ具合は、間違いなく
今年度モジモジ大賞第一位でしょ!と言いたくなる程
可愛くもあり、ちょっとイラッともしました(笑)
アントニオの「母さんが誰とでも寝るから〜」という言葉には妙に説得力があって(笑)
でも、なんかアリスって男前なところがあって憎めない存在です。
チチョ・フルンボリさん、初めて拝見しましたが、
新しく個性的なタイプのダンスをさせる方のようで、見ごたえありました!
エンドロール前の男だらけのタンゴのシーン(メイキングでしょうか?)も楽しかったです。
ゆるりさん、こんにちは。
久々の鑑賞作一致、嬉しいです!(*^_^*)
モジモジ大賞第一位!まさしく!
それから「やっちゃったで賞」も第一位ですね(あの終盤の大ドジ^_^;)
私は本作に「哀」の部分をとらえてしまったものの、ゆるりさんのレヴューを拝読して「喜(劇)」の要素の大きさも改めて感じ、なるほどなぁって読ませて頂きました。アントニオくんの“リバフェニ度”も、ああそうだ!リバフェニだ!なるほどなぁっていう思いでした。
こういうのこそ、鑑賞作一致の喜びですね。(*^_^*)
>エンドロール前の男だらけのタンゴのシーン
楽しげでしたね。あれはフェルナン達が去った後に刑務所内でタンゴダンスが大ブームになっちゃったってことかなと思いました。
メイキングと言えば、私が鑑賞した回は本編の後にメイキングムービー上映されまして、やっぱり皆楽しげで、チチョさんのダンスの後には大喝采が巻き起こっていましたよ。
>私が鑑賞した回は本編の後にメイキングムービー上映されまして
あー、やってしまいました!
実はこのすぐ後に(同じくテアトルで)見た「危険なプロット」が
今作の終了時間から始まるというタイミングだったので、
エンドロールが流れ出したタイミングで席を立ち
別シアターに走り込んだのです。
で、まさかの、見逃し。。。
やっぱり強行スケジュールはダメですね(涙)
チチョさんのダンス、また見たいですわー。
しかしシャイな日本人にとって、タンゴのように見つめ合わないといけない
ダンスって、敷居が高いイメージです。照れたら負けかな?!
ゆるりさん、こんばんは。
いえいえ、そういう過密ご鑑賞スケジュールもいいなぁって思えますよ。(*^_^*) そして、『危険なプロット』をご覧意なられたのですね、楽しみに後刻お伺い致します。
私はメイキングはどうしようかと思いつつもついつい観てしまったワケですが、ゆるりさんの手前言うわけで無く、監督の本作への想いは強く伝わりましたがメイキングとしての醍醐味は少々足りなかった気がします。^^;
見つめ合うダンス、、、良くも悪くもシャイな日本人気質の私はやっぱり苦手です(って、やってみた事ないですけど)。メンタル要素、大ですよね。スポーツも、昔から団体競技は苦手で(迷惑かけられないというプレッシャーで)、個人競技の方が合ってました。あかんたれ、ですねぇ、私・・・。(しゅん太郎(T_T))