2013年11月04日

「シェルター」(by 田口ランディ)、そして酒舛のこと


 「本」のこと。

 友人Mriちゃんが貸してくれていた『RURIKO』(林真理子著、角川文庫)を少し前に読み終えまして(Mriちゃん、ありがとう。これって何処まで実話なの!?っていう、実名で有名人がバンバン登場する物語でした。一気に読了。)、いま通勤電車で読んでいるのは田口ランディ著『ドリームタイム』(文春文庫)です。
ランディさんの本は殆ど読んでいる積もりでしたが、本作を手に取ったのは初めてでした。(知らないことを知らないだけで、実は知らないことは山ほどあるんですね。)

                       ドリームタイム.jpg                      

不思議で切ない、ちょっと怖かったりもする、そんな13篇の物語が収められた短編集です。

面白いです。もう少しで読了です。
その中の一篇、『シェルター』という物語が特に“気になる一作”でしたのでちょっとご紹介したいと思います。

 
  友人女性のマンションに集まってダラダラとお酒を飲んでいる数人の男女の様子で幕を開けます。座興に一人の女性が持ちだした「シェルター」という名のゲーム。
「ついに第三次世界大戦が勃発して世界中の核保有国が一斉に核のボタンを押そうかという大変な事態になる。地球は放射能汚染で壊滅状態になることが予想される中、秘密裏に組織されていた人類救済委員会とやらが世界各地に核シェルターを作っていたらしく、日本にも某地にそのシェルターが存在することが分かった。定員7名のシェルターに集まった10人の人間。さあ、この10人の中から人類の未来を託すための7人を選んで下さい」というもの。
■国会議員
■国会議員の妻(妊娠している)
■元暴走族のバーテンダー
■元アル中の社会科教師
■牧師
■少女(知的障害を持っている)  (※いずれの表記も文庫本収録のママで転載。)
■看護婦長(心臓が悪い)
■警官(銃を持っている)
■女子短大生
■中年女流作家       
「中年女流作家」というのが入っているのは、語り手となっている「私(主人公)」の職業が作家で、まさしくランディさん自身をモデルにした物語だからだと思います。そして早々に「中年女流作家」は「7人」からは除外されてしまいます。そこで彼女は、ならば現実とは違った結末の物語を書いてやろうとするのですが・・・。


「七人を選ぶってことは、三人を見殺しにするってことでしょう?」などという容赦ない台詞も出てきますが、7人を選ぶ際の各人の価値判断があぶり出されてきて、私ならどう選ぶか考えていたら7人を選抜すること自体が恐ろしくなってきました。
そもそも、誰かの価値判断が絶対的なものであるはずはなく、3人を見捨てて7人を救ったその先に未来があるとも思えず・・・。まあこの物語は単に選抜の是非を問う物語ではないのですけれど。

物語は「現実」と「女流作家が書く物語の世界」とが交錯してゆき、あっという間に(短編なのだから当然ですが)結末を迎えます。この結末にはランディさんの「祈り」というか「救済」が見えた気がします。しばしの余韻に浸った一篇でした。


「アルコール依存症傾向の中年女性(薄給の会社員)」とかだったら全員一致で真っ先に外されるでしょうね、きっと。・・・といういつもの自虐ネタの後は酒場レポートです。

拙ブログ・10月10日付記事の最後の方に書かせて頂いた「友人が始めた立呑みのお店」ですが、、、どうやら口コミで新規のお客様が来て下さったり、リピーターさんも出来ているとか。嬉しいことです。

店名も場所も露出OKとのことですので記させて頂きます。
阪神電車の杭瀬駅、杭瀬商店街入ってすぐの「酒舛(さけます)」さんです。
藍色の暖簾がイイ感じです。

                       酒舛 暖簾.jpg


「酒呑みが少ないお小遣いでも呑めるお店」をコンセプトにしている(泣ける)だけあって、アルコールやおつまみはどれもお安く、良心的に頑張って下さってるのが分かる“盛り”です。
店内には本棚もあって文庫本も並んでます。自由に読めるみたいですが、某作家さんの小説がシリーズのようにズラリと並んでいる隅っこに春樹さまの小説が二冊ほど申し訳なさそうに置かれているのには別の意味で泣けます。いえいえ、ご店主(友人)も春樹小説は結構読みこんでいる人ですからきっと他の春樹本は自宅に大事に取ってあるのだと推察(^^)。

地酒もあります。
名物は自家製の煮豚と煮玉子ですが、これは毎日あるとは限らないようです(あればお薦めです)。カウンターには缶詰やカワキモノ類も並べられてて駄菓子屋さんに来たみたいなワクワク感も。


酒舛 まんさくの花.jpg 酒舛 かわきもの.jpg 酒舛 黒牛.jpg

酒場にはいろんな人が集います。
程度は違えど皆“酔いびと”です。私も含めていろんな酔っ払いがいて、悲喜こもごもがあり、その人の人生が見える瞬間もあったり。で、この酒舛さんでもちょっとそういうのに出会ったりすると、ハラハラしつつも「酒場にドラマあり、やなぁ・・・」と思います。しみじみとしたドラマに出会いに、またお伺いしますね。
独りで大変でしょうけれど頑張って自分色のお店にしてください。酒舛さん、火曜定休です。






posted by ぺろんぱ at 19:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/79900062
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック