BS録画していた『新しい人生のはじめかた』(ジョエル・ホプキンス監督 2008年制作・2010年2月日本公開)を観ました。
これもつい昨年の公開作品のように思えたのですが、もう既に3年半も前のことなのですね。あっという間に時は過ぎます。
遥か昔の『卒業』でのダスティン・ホフマンが、今度は正攻法で(でもやや強引だけど)想い人をさらってゆく物語??
story
ニューヨークのCM作曲家ハーヴェイ(ダスティン・ホフマン)は、離婚後別居していた娘(リアン・バラバン)の結婚式に出席するためロンドンに飛ぶ。だが何かと疎外感を味わい、仕事が気になる彼は披露宴を辞退して帰国しようとするが、飛行機に乗り遅れてしまう。やけ酒を飲みに入った空港のバーで、ハーヴェイは偶然ケイト(エマ・トンプソン)と出会い・・・。

※story、画像とも、映画情報サイトより転載させて頂きました。
※結末に触れる記述をしています。
こういう出会いと近付き方、何だか好いです。
互いが互いを全く異性として意識していないところから始まる出会い。何度も“そこでサヨナラ”となりそうなのに細い線でつながってゆく二人。
若い男女の恋物語に限らず、出会って直ぐにベッドインという流れが日本人にはどうしても理解し難いなかにあって、本作のもどかしさと純情さは好もしいです。演じる二人、ダスティン・ホフマンとエマ・トンプソンはそういうイメージに合致した俳優さんだな、と。
もう自分の人生はこんなものだと諦めてしまいがちな中高年にとって、優しく「明日」が香ります。
ハーヴェイは仕事もうまくゆかず、実の娘の結婚式では自分ではなく別れた妻の再婚相手が娘とバージンロードを歩くのだという。終始疎外感を味わう彼はぐっと涙を堪えます。
一方のケイトはと言えば、心の壁、想いの殻がとにかく厚く硬い。ハーヴェイの痛手はへヴィーながら自業自得といえる部分もありますが、ケイトの痛手はもっと“どうしようもない”もののように感じられて、ケイトの心の壁を崩すのは一筋縄ではいかないなと思った次第です、私。老いて孤独な母親に辛抱強く向き合い、日々の小さな安らぎの時間(カフェの片隅でワイングラスを傾けながら小説を読んだり)を大切に、安寧を守ることで傷つくことを回避しているケイト。痛いほど分かるなあ。

だからそんな彼女が「今からでも娘の披露宴に行くべき」とハーヴェイを力強く諭したのには少なからず驚きました。でも「ああ、彼女はきっと、本当はそんなふうに誰かに強く背中を押してもらいたかったのかなぁ・・・」って思いました。
思えばあの時が、ハーヴェイとケイトとが互いの殻に風穴を開けた瞬間でしたね。
何となく別れがたいという自分の気持ちに気付いてからのハーヴェイの行動は果敢でした。
追い続ける様子はやや強引な感じもしましたが、ラストのハーヴェイの言葉には別離を経験した中高年ならではの誠実さが伺えて、ここは一歩引いた穏やかさが光っていたかな。「絶対にうまくゆくよ」とは言わなかったハーヴェイは、代わりに「(うまくゆくよう)努力する」ことを「約束」したのですよね。それに応えるようにヒールを脱ぐケイトがチャーミングでした、とても。
ケイトが新しい人生を始めようとするのと同時に、ケイトの母親にも「違うあした」が訪れる予感・・・エンドロール中の挿入シーンをお見逃しなく。
深まる秋に、ちょっと心が豊かになる一作でした。

劇中、アメリカ人とイギリス人の気質の違いに言及するシーンがありましたが、興味深かったです。イギリス人の閉鎖的な気質が柔らかく開放的なものに変わっていった一因が元プリンセス・ダイアナの死にあったという台詞には「なるほど、そういうものなのかぁ」という驚きも。
日本人はどうなのでしょう。イギリス人に負けず劣らず閉鎖的だとは思いますが。だからお酒の力を借りてちょっと心の閉じ紐を解くのかな。
某日の定例・女三人会の乾杯の画。Nちゃんチョイスのこの白ワイン、美味しかった、ありがとう。
三人とも、心を開放するひと時。 開放し過ぎて記憶まで飛んでイスタンブールでした。(・・・古い。)
自分もBS録画してたん、ひと月ほど前位観ました。
エマ・トンプソンてええ感じやなあと改めて思いました。
ー日々の小さな安らぎの時間ーものすごくわかります。
そういうささやかなことにーありがとうーと思っていけるかどうかが幸せの鍵ですよねっ!
ビイルネンさん、おひたしぶり大根です。
お越し下さり嬉しいです!ありがとうございます!
エマさんと言えば・・・昔の映画ですが『日の名残り』なんかも“もどかしさ”がいっぱいでしたね。
ええ感じでお歳を重ねていらっしゃる女優さんだと私も思います。
ささやかなひとときに「ありがとう」の思いを、これから私も常に抱いていたいと思います。
どんな時間も、その思いがあれば豊かなるものを運んで来てくれますよね。
ケイトのあの、もどかしい感じ良いですね。
怖いもん知らずの図々しい女性が多い(?)大阪に住んでいると、
こういう年を重ねて自分の殻から抜け出せない女性に愛おしさを感じます。
自分にないものを求めているのかもしれません(笑)
エマ・トンプソンはたまに、その上手さがちょっと鼻についてしまう時があるのですが(笑)、奥ゆかしい役(「日の名残り」なんかもそうですね)の時の彼女はすごく好きです。
この映画でも、良い味だしてはりました〜。
日本はイギリス以上に閉鎖的かもしれませんね。特に皇室の扱われ方とかを見ていると、
建前ばっかりという気がしないでもないです。
ゆるりさん、こんばんは。
私もBSでお初、でした。
>自分にないものを求めているのかも
いえいえ、いろんなことにご興味を持たれてチャレンジもされていらっしゃるゆるりさんですが、繊細な内面をお持ちだと拝察しております〜。レヴューを拝見してなんとなく。(*^_^*)
そっかぁ〜、エマさんはやっぱり“上手い”役者さんなのですね。
本作では、友人に仕組まれたデートで予期せぬ乱入者たちによって孤独を味わうことになる彼女がほんまに不憫で、でも愛おしくて、ちょっと泣きそうになってしまいました。
>建前ばっかりという気がしないでもない
そうですね。
閉鎖的な面に加え、どうしても付和雷同的な面も否めず、従来の流れを壊す(或いは独自の考えを示す)のって難しそうですよね。
だから、本作でダイアナさんの死によって「(イギリス人が)オープンになった」というケイトの考察には興味を感じました。もうちょっと台詞を肉付けをしてもらったらより一層理解も深まったかと思いつつ、劇中ではケイトのほんのひと言したけどね。
先日観に行った一作のレヴュー、なかなか綴れてません〜。明日こそ、と思っておりますが・・・(^^)。
貴記事を読んで観ました!
心に深い傷を抱えたおとなふたり。
大勢の中にいてもさびしくひとり静かに微笑んでる姿
に胸が締め付けられるようでした。
ダスティン・ホフマンはもう70歳を過ぎてるようですね、でも色気のある役者さんですね。
それとエマ・トンプソン、知的なおとなの女性でそしてかわいらしさを感じさせる役うまく演じてました。
トイレでひとり涙を堪えるシーンはこちらも泣きそうになりました。
日本人も閉鎖的な一面を持つ国民ですが、その表現のしかたを知らないまだまだ未成熟な国民気質って気もしますね、イギリス人は成熟していてのあえての閉鎖的気質って感じもしたりします。
エンドロール、幸せな気分になりました^^
Jupiさん、ようこそです。
拙レヴューを読んで観てくださったとのこと、とても嬉しいです。
私もケイトのあのデートでの一連のシーンには涙がにじんできました。本作のエマ・トンプソン、とても魅力的でしたね。
ダスティン・ホフマン、ずいぶん前に観た映画で「(身体の)シルエットが絵になる人だなぁ」って思ったことがありました。
Jupiさんの仰る“色気のある役者さん”というのも頷けます。まだまだ、ずっとこれからもご活躍いただきたいですね。
エンドロールの、その後の二組のカップルに会ってみたいものです〜。^^
>表現のしかたを知らないまだまだ未成熟な
「日本人らしい美徳」「らしさの魅力」はあると思うので、そこに「何か」が加われば最強!?になれるのかもしれませんね。