シネリーブル神戸で『いとしきエブリデイ』(マイケル・ウィンターボトム監督)を観ました。
この監督さんの作品鑑賞は初めてでしたが、同監督の過去作で本作の夫婦役二人の役者さんもご出演の『ひかりのまち(1999年制作)』も是非観てみたいと思う今です。
story
ステファニー、ロバート、ショーン、カトリーナの兄妹は毎日学校に通い、母カレン(シャーリー・ヘンダーソン)は子どもたちを送り出した後、昼はスーパーで働き、夜はパブでも仕事をしている。他の家庭と違うのは父親イアン(ジョン・シム)が刑務所にいて、家にいないこと。会えるのは長い時間をかけてバスと電車を乗り継ぎ辿り着く刑務所でのわずかな面会時間だけだったが、それでも季節はめぐり、父親がいない時間が過ぎる中で子どもたちは成長していくのだった・・・。

※story、画像とも映画情報サイトより転載させて頂きました。
幼い兄弟たちと母親が暮らすイギリス東部にあるノーフォークという名の村。
この村の風景が本当に美しい。イギリス東部が舞台ということしか知らなかった私は「ここはいったいどこなのだろう」と溜め息交じりに思いながらスクリーンに見入っていました。
父がいる刑務所の房が時折映し出されるのですが、その殺伐さとは対照的に、ノーフォークの景色はあまりに美しくゆとりに満ちていて、吹く風が優しく麦の穂を揺らすように心をそっと撫でていってくれるのでした。
その恵み豊かな大地で、子どもたち4人は「日常」を繰り返しながら成長してゆきます。
父親の不在(しかも収監による不在)という特異な事情を抱えてはいるものの、子どもたちの日常はごく普通の家庭で繰り広げられるそれのように騒々しく且つ愛おしいものでした。学校へ行って歌を歌ったり、お弁当を食べたり、クラスに好きな子ができたり。やがてロバートは反抗期を迎え、ステファニーにはBFができます。
カメラは父親が出所するまでの「5年」を、実際に5年をかけて子どもたちの成長を追ってゆきます。
5年という歳月。
途中で大きな事件に発展するのではないかと不安に駆られるような出来事があり(結局は事なきを得るのですが)、母親カレンが本当は許容範囲を越えるまでに張りつめた精神状態であることや、しかしながら子どもたちが本能的にそんな母親の心を察知しているかのように大きく曲がることなく真っ直ぐに育っていることや、そんなこんなを感じさせられ「家族」の意味を考えさせられたシークエンスでした。
カレンの憂鬱と子どもながらのそれぞれの複雑な思いはありつつも、家族はまた日常へと返り、父親が出所を迎えるまでの日々が淡々と綴られてゆくのです。

子どもたち四人の表情がとても自然でまるでドキュメンタリーを観ているかのよう。
夫婦役の二人は俳優さんですが子どもたちは全くの素人で実際の兄妹だとか、どうりでみんな似ています。
刑務所へ面会に行った時の子どもたちの様子はあまりに自然で演出というものを感じさせません。あまりに自然なのでつい彼らに心を添わせてしまいます。
刑務所という特異な場所で迎える父親との再会が子どもたちをナーバスにするのか、ちょっとしたことで泣いてしまうショーンやカトリーナ。いたいけな子どもたちと、子育てをしながら働きづめに働いてギリギリのところで踏ん張っている妻であり母であるカレン。イアンという男、本当に罪な人間だと怒りも湧いてきます。
カレンにずっと想いを寄せている他の男性の存在も描かれ、いっそのことその男性と人生をやり直すことができればその方が幸せなのではないかとも思ってしまうのですが、やはり家族にとっては唯一無二の父であり夫であるのですね、イアンは。そこにもまた「家族」の意味を考えさせられた私です。
終盤のカレンの告白は、最悪の事態を招くのではないかと心臓が波打ちました。
あの告白行為の是非は別として、今度は夫イアンに科せられる試練を彼は乗り越えるべきだと思いますし、また、乗り越えてゆけるであろう未来を感じさせてくれるラストでした。
海辺を歩く家族を俯瞰で追い続ける演出は心を静かに打ち、永遠に続くような波音とカモメの鳴き声が優しく耳に響くのでした。

そして、、、


さてさて、恒例の<大阪ヨーロッパ映画祭>の第20回がいよいよ開催となります。
会場は今年もホテル・エルセラーンで(映画作品上映)。会社の近くなので、社用で外出時にホテル外壁にこのプレートが掲げられたのを発見して思わずスマホで撮影しました。今年もそんな季節になったんやなぁ・・・しみじみ。
ヨーロッパ映画祭の季節は熱燗や焼酎お湯割りが恋しくなる季節、そして猫も丸くなる季節です。
詩的な表現!素敵です(*^_^*)
子供や夫に精一杯明るく接しているカレンの様子には張り詰めた何かがあって
平凡な風景の中にもかすかな緊張感を感じていました。
そういえば、カレンの夫に対する(潜在的な)不満が、
義母に向けられてるように感じられたシーンもありました。
子供達のお互いの対する親密さが感じられ、彼らに強く惹き付けられます。
兄弟達以外の子供達(学校に登場する)もみんな自然体で、
見ていてちっとも飽きないのです。
主役の二人は馴染みのある俳優さんでしたが、「ひかりのまち」にも
この二人が出演しているんですね?!
監督も今作と対になる作品だとインタビューで言ってたので、ぜひ見ようと思います。
ところで、急に寒くなりましたね。こう寒いと、丸まってヌクヌクしたいです。
ニャンの写真をみると余計そう思います(笑)
ゆるりさん、こんばんは。
ご覧になられたのですね、本作!
私はてっきりゆるりさんの次回レヴューは“あの御方の主演作”だとばっかり思っていたので嬉しいサプライズです。また同じ作品を(しかも同時期に)語れることを嬉しく思います。(*^_^*)
>詩的な表現
いえいえ、ノーフォークの村で麦の穂が風に揺れてる風景が映し出された時があったのでいいなぁ〜って思っていました。それで、自分の気持ちを表すのに使わせてもらっただけです。恐縮です。
>カレンの様子には張り詰めた何かがあって・・・かすかな緊張感を
そうですね。
緊張感、なるほどその言葉がピッタリですね。
カレンも、また長男のロバート君にしても、どこかしら緊張感をはらんだ場面がありましたよね。やっぱりある一定の年齢を超えると彼ら家族が抱える問題が単純でないことを身を以て知るわけなのでしょうか。
『ひかりのまち』、観てみたいですよね。
主役のお二人、私は馴染みが無かったのですが、特にカレン役の女性には注目してしまいました。独特の魅力を持つ女優さんです。
久々に登場させたウチ猫の画です。コメントして下さってありがとうございます、親バカです(涙)。
「猫の後をついていけば一番快適な居場所を見つけられる」っていう言葉がある通り、家の中で一番陽の当たる場所を知ってるんですね〜。
私は寒いのが苦手なので、ウチ猫の純毛100%を重宝せねば!!! と思っている今日この頃です。
今から貴レヴューにもお伺いさせて頂きますね。
ご無沙汰していますがすっかり冬になっちゃいましたね。
この作品観てないのですがラストの猫ちゃんの写真に反応して出てきてしまいました!
だってうちの子にそっくりなんですもん・・・
寝顔も丸まり方もそっくり!
今もわたしの横の炬燵布団の裾で丸まっています。
寒くなると猫って一緒に寝てくれるから幸せ〜です。
少しずつ認知症が進むのか,母の顔などは日によって忘れているうちの猫ですが
この冬はなんとか越せそうです。
ぺろんぱさんちの猫ちゃんも元気でね!
ご無沙汰いたしております。貴ブログにはちょこちょこお邪魔させて頂いておりました(^^)が、コメを残せず退散していた不甲斐ない私です、すみません。
本当、すっかり冬ですよね。寒がりの私、もうすぐ冬眠したい季節がやってきます。
ななさんちの猫ちゃん、「ななちゃん」ですよね。
仰る通りウチ猫はななちゃんにそっくりですよね(^^)。
随分以前になりますが貴ブログへ投稿させて頂いた拙コメで、「猫はワンちゃんに比べると認知症になりにくいそうです・・・(だから大丈夫なのでは?)」と書かせて頂いたことがあったのですが、、、今やはりななちゃんはその病を背負ってしまわれたのでしょうか・・・。ウチ猫も完治のない持病を抱えているので、ななさんの毎日も大変だと拝察します。
でも人間も猫も病は同じと思いますので書かせて頂きますが、認知症という病で、具体的な事象は忘れることがあっても「家族と楽しい思いをした、幸せな時間を過ごした」っていう感覚は残るそうですから、ななちゃんもきっとななママさんがいつも自分に愛情を注いでくれていることをちゃんと分かっていて「幸せだにゃぁ」と感じてくれていることと思います。そう信じます。
私たち人間にも、猫は(ワンちゃんもね)幸せな時間を与えてくれますよね。
寝顔を見ていると心がほんわりしてきますよね。
>ぺろんぱさんちの猫ちゃんも元気でね!
ありがとうございます!
ななさんちのななちゃんも元気でね!!(*^_^*)