2013年12月17日

アメイジング・グレイス (BS録画鑑賞)


  BS録画していた『アメイジング・グレイス』(マイケル・アプテッド監督、2006年制作、2011年3月日本公開)観ました。

これって、日本公開まで5年近くかかっているのですね、何故なのでしょう。
おお!って思ったのは、先日主演作を観たのが記憶に新しいベネディクト・カンバーバッチさんがご出演だったこと、、、知らなかった。しかし、本作で「ああ、私この人好きやったんや」と思い出した男優さんがいたことは更なるサプライズでした(後述します)。

story
名曲『アメイジング・グレイス』誕生に秘められた実話を映画化したドラマ。18世紀のイギリスを舞台に、恩師が作詞した『アメイジング・グレイス』を心の支えに、奴隷貿易廃止に尽力した政治家ウィリアム・ウィルバーフォースの人生を描く。
18世紀のイギリス。若くして政治家となったウィルバーフォース(ヨアン・グリフィズ)。彼は同じ志を持つ友人のピット(ベネディクト・カンバーバッチ)と共に、イギリスの収入の多くが奴隷貿易によるものであることに心を痛めていた。現状を打ち破るべく闘う2人だったが、想像以上の苦戦を強いられる。ウィルバーフォースを支えていたのは恩師ニュートンが作詞したアメイジング・グレイス』だった。ニュートンはかつて奴隷船の船長をしていた罪を悔いてこの詞を書いたのだった。ウィルバーフォースはこの曲を心の支えに、政治家として奴隷貿易廃止を懸命に訴え続けるのだったが・・・。

                      アメイジング.jpg

                          ※story、画像とも、映画情報サイトより転載させて頂きました。


  静かに、深い感慨に包まれる映画です。

奴隷貿易廃止運動に、まさに“人生を投じた”ウィルバーフォース。
度重なる挫折と病気との闘い、厚い厚い英国・奴隷貿易の歴史の壁。長い長い年月を掛けて廃止法案を成立させたウィルバーフォースを、留まる事なき攻撃で世を変えた暴力の英雄ナポレオンと比して「義と和の力で世を変えた英雄」と称えたフォックス卿(マイケル・ガンボン)の弁が胸を打ちます。

本作、反奴隷貿易を謳った作品ですが、実際に黒人たちが暴力で支配されている映像は皆無と言っていいほどです。(奴隷だった男性の胸にある焼印と、途中で少しだけ挿入される子どもたちのイメージ映像的な労働シーンのみ。)
もしそれらをもっと具体的に描いていたら本作はかなり違ったトーンの作品になったと思いますが、監督は敢えてそこを映像にしなかったのだと思われます。それはそれで、政治家ウィルバーフォースの「人間」に迫った作品としての一つの完成があったと感じます。

                        アメイジング 1.jpg

唯一、非常に心痛む(というより心潰れる)酷いシーンがいきなり冒頭に出てきます。奴隷貿易と直接には関係のない、一般商人が土砂降りの雨の中で弱った馬車馬を虐待するシーンです。
ウィルバーフォースは自らも死寸前の病状にありながら、豪雨の中、その虐待を止めに入ります。ウィルバーフォースは神を崇める人間として動物愛護の運動も行っていたことが映画の進行と共に分かるのですが、この冒頭のシーンはそんな彼の博愛の精神を物語るものだったと映画を観終わって納得できました。
この馬を救うシーンが、実は動物虐待のみならず人間への虐待をも阻止しようとするウィルバーフォースの精神を描く上でとても意味深いものだったと思います。ここは出来ればもう二度と観たくないほど心潰れるシーンですが、同時に非常に印象深い場面でもあったわけです。

作品のトーンについて先述しましたが、本作は奴隷問題をテーマにしたものながら、清廉でどこか爽やかな印象さえ残すものでした。それは共に歩む友人ピット(ベネディクト・カンバーバッチ)との深い信頼と確かな友情がこの作品の底辺にあったからだと思います。
若くして首相となったピットの立場から一度は二人は袂を分かつ(ように見えた)のですが、やはり根底にある二人の信頼が揺らぐことはなかったのですね。
この二人の友情が18世紀後半の英国の凛とした美しい風景と相まって、とても清々しい印象をもたらせてくれました。
時としてユーモラスな空気も。
英国流の機知にとんだ会話やちょっと皮肉っぽいジョーク、上流階級の人間たちを品良く笑いのネタにした場面など、重いテーマに少し息をつかせてくれたところもありました。

                        アメイジング ルーファスさん.jpg

最終的に勝利を勝ち取った手法が正攻法ではなく敵を欺く作戦であったことも史実として非常に妙味深く、しかし考えてみれば、利権に裏打ちされた人間を「(反奴隷貿易制度に)YES」と言わせる方法としては、実はこれが最も正攻法であったと言えるのかもしれません。

数え切れぬ困難を乗り越えてやっと勝ち得た勝利のラストに、重なるアメイジング・グレイスの曲が感動的です。
バグパイプの音色が深く静かに心に沁み込むのでした。


  主演のヨアン・グリフィズは勿論いいのですが、ベテラン俳優と言われる方々も名脇役としてご出演です(マイケル・ガンボン然り、ニュートンを演じたアルバート・フィニー然り)。
私的には、(ベテラン俳優さんではありませんが)運動仲間のクラークソンを演じたルーファス・シーウェルが目を引きまして、「このひと何度か観たことがある!」と思ってネットで調べるとやはり何作品か出演作を観ていて、中でも『トリスタンとイゾルデ』は拙ブログ記事でベタ褒めしてました、私。ベタ褒めしてた割には今作では「観たことある!」っていう程度になってるあたり、何とも失礼な話ですよね(冷汗)。でもやっぱり本作でも“心魅かれた”わけですからルーファス・シーウェルさんの良さは同じなのでした〜。


                       まんぼう 地酒.jpg

  もう今年もカウントダウン状態。

人生の大先輩諸氏の某忘年会に呼んで頂いてすっかりご馳走になった画。 
この美酒、そのお店オリジナルの純米吟醸で、大変美味しゅうございました。ありがとうございました。ぴかぴか(新しい)






posted by ぺろんぱ at 21:04| Comment(6) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
こんばんは^^

私は昨年の春、wowowで放送された時に観ましたが
同じくラストのバグパイプの美しい音色がしみじみと心に残っています。

ルーファス・シーウェルは私も映画やドラマでちょくちょく見かけますが
あの濃いお顔立ちは目を惹きますよね(笑)

ちなみに地味な脇役が好きな私は
ウィリアムの従兄弟を演じたニコラス・ファレルがお気に入りです(笑)
Posted by ami at 2013年12月22日 22:21

amiさん、こんばんは。
そうですか、昨春WOWOWで放映されたのですね。WOWOW入っていないので憧れです。(*^_^*)

ニコラス・ファレル!
そうですね、ナチュラルな頭髪姿の(あの鬘を外した時の)ニコラスさんには確かにシブイ魅力が感じられました。ふむふむ、ちょっと御出演作を調べてみます。
どちらかといえば病的な??顔立ちが好みの私も、ルーファス・シーウェルさんのクッキリ目力には惹かれましたです。あ、、、ある意味、病的でしたね、本作での彼^^;。
自分的には、最後に亡くなった同志の墓にポケット瓶のお酒を流すところに泣けました。

Posted by ぺろんぱ at 2013年12月23日 18:59
こちらにもおじゃまします。

ルーファス・シーウェルや、ニコラス・ファレルなど、
みなさんシブいところにいきはりますね〜(笑)
私はもちろんベネディクト、と言いたいところですが、
公開時にはむしろアルバート・フィニーの演技に惹き付けられました。
それまでは、たとえ主役を演じてはってもそれほど注目しなかった俳優さんなのですが…。
近いところでは「スカイフォール」にも出てはりましたよね。
ここではあまりに存在感がなくて「気配を消してるのか?」
と思ったほどでしたが(笑)

目力だけで顔が識別できてしまうルーファス・シーウェルさん(笑)とは
ある意味対極にある俳優さんという気もします。

青年政治家二人が素足で緑を駆け抜けるシーンは、
爽やかで目の保養になりますわ〜♪
Posted by ゆるり at 2013年12月24日 22:55

ゆるりさん、いらっしゃいませ〜、こちらにもようこそです。

ベネさん御出演作ということできっとゆるりさんはご覧になったはず、と、実は本作のレヴュー書いた後でゆるりさんのブログにお邪魔させて頂いたのでした。コメント投入したい気持ちは山々だったのですが、過去作へのコメントが続いてしまうようでちょっと遠慮してしまったんです。
でもこうしてコメ頂けるならあの時私も投稿して帰ってくるんでした・・・過去作へのコメも歓迎して下さると書いて頂いたのにね・・・反省です。

アルバート・フィニー!
ゆるりさん、興味深いご評価をしていらっしゃいましたね。確か「個性のないのが逆に長所・・・」ということを書いていらっしゃいましたよね。なるほどなぁと読ませて頂きましたよ。こういう御方を「名脇役」というのでしょうか。
本作ではかなりのキーパーソンでしたね。

>青年政治家二人が素足で緑を駆け抜けるシーン

そうなのですよね〜。
爽やかな青春物語っていう感じがしましたよ〜。
あのあと時が経ってベネさん(ピット)がああいう最期とは・・・若さと希望に輝いていたあの頃を思うと哀しいですね。

今度からは過去作でも果敢に投稿させて頂きます!


Posted by ぺろんぱ at 2013年12月25日 19:42
ぺろんぱさん、こんにちは!

ぺろんぱさんの記事を見ながら
映画を選ぶ参考にさせていただき、追っかけてますね私。
観ました、アメイジンググレイス。

まずはこの有名な曲のことを聴けば知ってる程度でどんな曲なのかその歴史はもちろん、歌詞の意味さえも関心を持ちませんでした。
それが後悔です。

知ったことでこの曲を聴く自分の気持ちが変わってきますし、また映画も観てその歴史とひとりの人間の生き様も知り、ますますこの名曲に対する感動が深くなった気がします。

カンバーバッチ、最近よく名前を聞いたり見たりするようになってから気になってます。
この映画でも彼が好きかも^^
坊ちゃま的雰囲気の人が好きだったのだろうかとあらたな自分を発見です^^

あとの記事、ゼログラビティもぜひ観たいと思っています!
今年もたくさんの記事を読ませていただき、自分だけでは気がつかなかった良い映画にもぺろんぱさんの記事から出会わせていただきました。
ありがとうございました!
来年もぜひたくさんの記事を書いてください!
楽しみにしています!

Posted by Jupi at 2013年12月29日 15:25

Jupiさん、こんばんは。

ご覧意なられたのですね!(*^_^*)
追っかけて?下さってるなんてメチャメチャ嬉しいです!(いえいえ、Jupiさんのお気遣いあるお言葉と思っていますよ、ありがとうございます!)

私もこの曲の背景など全く知りませんでした。新しいことを知るたび、生きてる限り幾つになっても勉強だなぁって思いましたよ。(^^)

「あらたな自分を発見です^^」も素晴らしいことですよね! カンバーバッチさんのように品良く、知的でソフトなイメージの御方がお好きなのですね(*^_^*)。この映画では爽やかな印象を残す二人(ピットとウィルバーフォース)の友情が素敵でした。

ゼログラビティもご覧下さい、貴レヴューを楽しみにしております。くどいようですが、なるべく大画面を持ってる劇場で、3Dでご覧くださいね。(^^)

私の方こそ、この一年本当にありがとうございました。言葉を大切にされているJupiさんの数々の記事に襟を正す思いでした。
Jupiさんも是非たくさんの記事を書いて下さいね。 来年もどうぞ宜しくお願い致します。
Posted by ぺろんぱ at 2013年12月30日 19:15
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