日本での初公開は04年の夏。気になりながらも見逃し、スターチャンネルでの放送を友人に録って貰ったものです。
ヒャンヴァスレンと言えば、私の今年初のスクリーン観賞作が同監督の『天空の草原のナンサ』でした。(3月28日ブログに関連記事)
「ナンサ」がドキュメンタリー色の濃い映画と言えるのに対し、『らくだの涙』はジャンルとしては完全なドキュメンタリーです。

モンゴル南部に暮らす遊牧民一家。
春を迎え、飼っているラクダの群れが出産の時期
となるが、一頭の母ラクダが大変な難産の末、白い
子ラクダを産む。
しかし母ラクダは難産の痛手からか育児拒否をし、
子ラクダを寄せ付けず乳さえも与えない。
子ラクダを心配する一家はモンゴルに伝わる馬頭琴を
使った音楽による治療で母ラクダを治そうとする
のだが・・・・・。
まず、モンゴルの大自然の壮大さと、文明というものからかけ離れ自分達の足で大地を踏ん張るモンゴルの人々の暮らし振りに、
カウンターパンチを見舞われたように“くらり”ときます。
生活の一つ一つに全く無駄がなく、動物達の命や与えられる自然の恵みに対する感謝の念が(言葉で表現されていなくても)溢れている感じです。
育児を拒否された子らくだを心配するのも、らくだが彼らの生活の糧であるからではなく、それ以前に「命の大切さ」が彼らの生活に染み込んでいるからだと思いました。
現代の社会でもネグレクト(育児放棄)は虐待の一つとして問題となっています。
この世に生を受けて一番にすがるものは自分を生んでくれた母の存在なのですね。その母親からの拒絶はどれほど哀しい事か・・・・更に放棄される事は「死」にも直結するのです。
大草原の中で、遠ざかる母を追って鳴き続ける子らくだが本当に哀れでなりません。
監督達は、その他の仲睦まじい親子らくだや贅沢こそないけれどしっかりとした確かさで見守られ育まれているモンゴル一家の子ども達と、母らくだに拒まれる子らくだを交互に映し出し、観る者を深い哀しみに誘います。
しかし、映画が悲壮感で覆われるようなトーンにならないのは、ドキュメンタリーという乾いたタッチと、モンゴルの人々の“自然をありのままに受け入れる生き様”のせいでしょうか。
音楽療法の成功を、観る者はきっと切望するはずです。
映画を観ていると、子らくだの「命の大切さ」を我が事のように感じるからです。
馬頭琴の音色、モンゴルの若き母親の癒しの歌声・・・・母らくだの目に涙が・・・・。
何らかの責苦の迷宮から救い出されて、慈愛を、母性を、取り戻したのだと思います。
観ている者も同時に慈愛に包まれる思いがしました。
馬頭琴の音色はらくだの鳴き声にもちょっと似ている・・・そんな気もしました。
本作、モンゴル民族の暮らしが微に入り細に入り丁寧に描かれている事に私はとても心惹かれました。
真実を綴るのがドキュメンタリーだと言われれば確かにそうですが、私は映画作りにおけるこの丁寧さがとても好きです。
エンディングに入る直前、モンゴル一家の幼き子ども二人のとっても微笑ましいシーンがありますよ!
さあ、ところで、劇中「らくだ乳酒を飲んでから食事にしよう!」という台詞があります。
らくだ乳酒!?
どんなんでしょう・・・・。
飲んで紹介したい気持ちは山々ですが、即モンゴルに旅にでも出ない限り私には入手困難と思われますので、同じく“自然の恩恵”を受けたと言えるお酒アイテムを二つ紹介してお茶を濁しておきます。(^_^;)

「時」という恵みを受けた古酒
龍力純米吟醸真古酒・龍力オールド1983年
23年もの!! 720ml 1万円也
5月21日のブログでご紹介の本田酒造鰍フアンテナ
ショップに再び立寄る機会があり、試飲。
古酒は余り得意でない私ですが、これはもう全く
雑味無く、厭味無く、華麗に?ひねた
古酒です。
素晴らしい!の一言でした。

「天日」という恵みを受けた干物
程よく炙ったうつぼの干物
こちらも以前(5月5日)ご紹介の立ち飲みBar・
刀屋さんで饗された一品。
マスター氏が四国をバイク・刀で
旅されて見つけてこられたウツボの干物。
マスター氏の炙り方が絶妙!です。
程よい歯応えと程よい油のノリと、
程よい香ばしさと。
日本酒と一緒に口に含むと河豚のひれ酒のような
趣が・・・。
味わいは濃いので、濃淳な日本酒で良し、はたまた
スッキリドライな日本酒で口中の油分をさらりと
切るのも良し・・・・です。
らくだ乳酒と羊チーズの取り合わせに匹敵する“妙”ですよ。
作品を作ったのは学生さんで話題になってましたので観にいきましたが、ドキュメンタリーとして素晴らしい作品で、自然な生っぽさが凄い印象的でした。と言うのも、出演しているモンゴルの村の方たちも、さほどカメラには意識せず、ラクダのお母さんの行動を中心に、村の人たちによって、どうにかしようと必死な姿は現代とダブりましたね。
映像を撮る人が純粋に現場へ馴染んだ作品ですね。私はこの作品凄い好きです。
そうですね、ドキュメンタリーはまずその現場に自分を馴染ませないと良いものが撮れないのかもしれませんね。
>どうにかしようと必死な姿・・・
本当に“純粋に”「どうにかしよう」って思ってる村の人達の姿に凄い温かさを感じました。