2008年01月06日

ある愛の風景

 新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 年末から引きずっていた風邪が少しマシになってきたのでやっと初映画鑑賞が叶いました。
5日(土)、梅田ガーデンシネマにて『ある愛の風景』(スサンネ・ビア監督)です。
咳がまだ出ていたので(そして一旦出始めると止まらなくなるので)、喉飴をいっぱい食べて、小林製薬の<のどぬ〜る濡れマスク>を携えて映画に臨みました。お蔭さまで上映中は咳地獄には陥らずに済みましたが、ヘヴィーな“人生の深淵”とも言うべき世界に陥ってしまいました。
見応えがありました、この作品。

story
デンマーク・アカデミー賞で最優秀主演女優賞を獲得し、ハリウッドでのリメイク企画も進行しているデンマーク映画。
生存が絶望的になった夫の戦死を告げられた家族と、別人のようになって奇跡の生還を果たした夫のドラマが展開する。監督は最新作
『アフター・ウェディング』も同時期に日本公開される女性監督スザンネ・ビア。
美しい妻サラ(コニー・ニールセン)と2人の娘を持つ国連軍のエリート兵士ミカエル(ウルリッヒ・トムセン)は、良き夫、良き父として幸せな日々を送っていたが、戦渦のアフガニスタンへの派遣が命じられる。一方、刑務所帰りの弟ヤニック(ニコライ・リー・コス)は兄とは対照的に定職もなく独身で家族から孤立していた。やがてサラの元にはミカエルの訃報(ふほう)が届き、嘆き悲しむサラや娘達の心の支えとなったヤニックは、初めて人から必要とされる事の幸せを噛みしめていた。その頃ミカエルは実は捕虜となって過酷な状況に直面していたのだが、国連軍に助けられ、突然帰国する……。(シネマトゥデイ及び映画チラシより)

               ある愛の.jpg
 
  女性らしい優しい眼差しも感じられるけれど、この監督の描き方は凄く力強いです。妥協しないとでも言えばいいのでしょうか、
これでもかこれでもかと傷口を広げてその深部を見極めようとするかのような、ある意味、優しさとは真逆の冷徹ささえ感じるほどです。
アフガンで捕虜となったミカエル・・・目を覆ってしまった「あの狂気のシーン」をよくあそこまで描ききったものだと思います。

撃墜したヘリの運命を立ち昇る黒雲の流れだけを静かに追って表現したり、舞台となる北欧の美しい景観の中に時折挿入されるアフガンの荒涼とした風光、其々に想いを抱える登場人物達の大写しにされた「目」の対比、無駄な台詞を排除して表情の変化で語らせる描き方、どれをとっても、緻密な計算のもとに感性にぐいぐい訴えかけてくる感がありました。

 この物語、皮肉な運命に翻弄されるサラが「自己に問われる愛のあり方に苦しむ」ということにスポットが当てられているようにも思えますが(そして勿論、演じるコニー・ニールセンのナチュラルな美しさも全開なのですが)、原題「Brothers」が示すとおり、二人の兄弟の運命と其々の愛の形に私は注目したいです。それと深部に見える反戦の訴え。
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兄ミカエルはエリート兵士であり、家族の誰からも必要とされていた存在。
一方の弟ヤニックは銀行に盗みに入り刑務所帰りの謂わば厄介者。
この二人の人生や愛の形がある時期を境に一転するわけですね。その両者の変化がサラへの愛の形の変化、或いはサラが二人に示す愛の変化となって巧みに描かれているのです。非情にやるせない・・・特にミカエルにとっては酷い事です。

一方、愛し愛され頼られる事によって人間としての気高さをも取り返したヤニックは、兄ミカエルにもその愛を惜しみなく注いでいる・・・彼の兄弟愛がなくては暴挙に及んだミカエルは更なる罪を重ねていたに違いありませんから。
ミカエルの暴挙を“身をもって”制したヤニックのあのシーン・・・・深く心を打たれました。
人生って不思議です、過酷です、惨いです、けれど何らかの救いがそこには在るわけですね。
                  ある愛の3.jpg                  
ミカエルが捕虜となったアフガンの地でしたことを断罪するつもりは毛頭ありませんし、そういう状況になったらどうしていたか今の私の安易な想像は許されないことと思います。しかし、起ってしまった以上、ミカエルはそれを一生背負い続けなければならないと思います。
サラがミカエルと共に生きるというならサラもまた背負わねばならないことだと思います。
そういう意味においての救い、つまりは「ミカエルに“心から笑える平穏な日々”が返ってくること」は、あってはならないことのようにも思えます。

しかし、どうでしょう・・・・ミカエルがした事と、戦地で敵兵を殺戮することと、どこにどう線引きをすればいいのでしょう?
突き詰めれば同じ事ではないでしょうか?戦争と言う名のもとに狂気をまとった人間になる、どちらも同じ「罪を背負わされし者」ではないのでしょうか。
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監督も劇中で興味深い台詞を言わせています。
アフガン派遣が決まり、意気高揚とするミカエルと壮行の宴を持つ家族。
銃を打ち合うことがいいことかと兄を揶揄するヤニックにミカエルの娘が「(パパは)悪い人を打つのよ」と。
すかさずヤニックはこう言います。「(悪者かどうか)見分けられるのか!」
そしてこんな台詞も。ミカエルを自慢の息子と誇るミカエルとヤニックの父親が「銀行強盗より立派なことさ」と。
でも結果はどうでしょう・・・何が正義で何が人の道に背くことになるのか・・・戦地に赴いて人を殺すことなく笑って帰って来れるというのか・・・。
其々の不条理な人生と愛の形を描きながら、静かな反戦の意図を感じました。


 最後になりましたが、前回鑑賞した同監督の『アフター・ウェディング』もそうでしたが、出演している俳優さんが皆なんて素晴らしいのでしょう。子供たちも含め、皆それぞれ印象深く残ります。
特に私としては不器用ながら兄、そしてサラを思い続けるヤニックを演じたニコライ・リー・コス、大ファンになりました。
今作、モーニングショーでしか上映されていないことが残念でなりません。


 さて、新年明けての初映画は以上の通りですが、<初宴>は実は風邪の熱と咳にまみれる中、既に執り行ないまして・・・。
どうしても延期したくなくて(とても楽しみにしていたので実行したくて)、えいや!で臨んだ宴です。
                 ボトル’s.jpg

拙宅に友人6人が集っての新年の宴でしたが、病態の人間は約一名のみ(私ですね^^;)ながら、6人でビールのあとでワイン・日本酒・焼酎取り混ぜ8本のボトルが空きました。
(好きなお酒を持ち込んで頂いての宴、皆さんありがとう(*^_^*))

今年も良き友人、良き映画、良きお酒に囲まれて過ごしたいのもです。
                あんと招き猫.jpg 今年もヨロシクです。
posted by ぺろんぱ at 11:08| Comment(8) | TrackBack(2) | 日記
この記事へのコメント
ぺろんぱさん、遅ればせながら新年おめでとうございます!
年末・年始は風邪で大変だったみたいですね。少しマシになられた様で、ヨカッタヨカッタ。(=^_^=)
ところで今年の初映画、素晴らしい作品をご覧になられましたね! コメントもいただき、ありがとうございました。
ぺろんぱさんの文章を読むと、観た時の気持ちがよみがえってきて、共感するところがいっぱいでした!ヾ(〃▽〃)ノ
今年もおじゃまするのを楽しみにしていますので、よろしくお願いいたします。
Posted by ゆるり at 2008年01月06日 16:57
ゆるりさん、こんばんは。
この映画、『アフター・・・』を観た後、観に行くかどうか自分の中では微妙な感じでしたが、ゆるりんさんのコメントに後押ししてもらったこともあって鑑賞が叶いました。ありがとうございました(*^_^*)。

こちらこそ今年もまたどうぞ宜しくお願い致しますね。
Posted by ぺろんぱ at 2008年01月06日 19:12
あけましておめでとうございます。
ぺろんぱさんと出会いまして、
もう1年ですね。
宴、おもしろそうですね。
空いた瓶から盛り上がりがわかります♪
どうぞ今年も深い映画レビューをお願いします!
Posted by ぢもと at 2008年01月06日 21:51
深そうですね。観たいけどモーニングはよう行かん!(キッパリ)
ぺろんぱさんのブログで行った気分になっとく軟弱な自分・・。(それでええんかいっ)

その代わり、でもないけど、昨日BSで録っててまだ観てなかった(何となく似たようなタイトル)”ある結婚の風景”ーベルイマンー観ました。これはこれで別の意味で深いっ!

似たようなタイトルといえば、これまた脚本がベルイマンでピレ・アウグスト監督の”愛の風景”てのも15年位前観に行ったこと思い出しました。主役のペルニラ・ウォルリエンていう実力派女優が撮影中に監督と結婚してアウグスト夫人になったらしいんですが、どうもこの配役が納得できず引っかかった作品なんです。ひょっとして、もしいま改めて観ると別の見方ができるか?(年とったもんねー一緒やったりして)

てなわけで、いつもながらの寄り道コメントお許しを!今年も宜しくお願い申し上げます!!

Posted by ビイルネン at 2008年01月06日 23:45
2枚目の紹介フォト・・すごいことになってますね。。

取り敢えず、衝撃でした(・ω・)
Posted by TiM3 at 2008年01月06日 23:53
ぢもとさん、明けましておめでとうございます。
ぢもとさんに初めてコメントをいただいてもう一年、ですか。早いものですね。
私はいつもぢもとさんのブログにお邪魔するたびに“はじける若さのオーラ”にたじろぎ、すごすごと引き下がってしまうことが多いですが、真っ直ぐな感じの貴ブログには“眩い魅力”がいっぱいです!

世代のギャップを感じさせてしまうような私の“勘違いコメント”もあったかと思いますが、今後とも見捨てずお付き合い下さいね。
Posted by ぺろんぱ at 2008年01月07日 19:55
ビイルネンさん、こんばんは。
10時10分からのモーニングショー(5日から改定により)には、私としても「仕事休みやねんけどなぁ・・・」の思いでした。

イングマール・べルイマン!
昨年惜しまれつつこの世を去った名監督ですよね。しかし名前だけで、私は(多分)その作品世界には触れてないような気がします。ペルニラ・ウォルリエンという女優さんも知らないです・・・早速このあとネットでチェックしてみます。
ふと今思ったのですが、これってビイルネンさんの「マニアッククイズ・映画編」として成立するのじゃないでしょうか!・・・おっとぅ、それは別のステージでの話でしたね、スミマセンです。

同じ作品も年を重ねてから観ると受け止め方がやっぱり違うと思います。自身、そう感じる作品も多いです。
そんなわけで今年もより多くのコメント期待してます!
Posted by ぺろんぱ at 2008年01月07日 20:06
TiM3さん、こんばんは。

そうなのです・・・2枚目のフォトはもうひたすら“ネタバレの世界”なので掲載を迷っていたのですが、かなりの重要ポイントなのでえいっ!と載せちゃいました。

今年こそは浜村純になるのは止めようと心に誓ったのに、相変わらずのネタ晴らしのブログで申し訳ないです・・・しゅん。

これに懲りられませず、またお越し下さい!
Posted by ぺろんぱ at 2008年01月07日 20:10
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